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XIII-11暗黒の島

赤面の回。

恥ずかしい……が、こういう要素は必要ですよね?

□□□


「ディムロス!?」


 わたしがそこに到着した時、2人は膠着(こうちゃく)状態にあった。

 下から救い上げられたレーミルの剣は、ディムロスの体に食い込む寸前で止められている。

凍りついたわたしの耳に、2人の会話が届いた。


「もう止めるんだ。傷に障る」

「逃げる気か!?お前はそうして何度も僕を辱めているんだ!止めを刺せ!」

「断る!貴方はまだ必要なんだ、道を外してしまったとはいえ、あなたもエウノミアルだろう?貴方を必要としている人々がいることを忘れないで下さい」

「僕、を?」

「今回貴方についてきた人は何人いますか?決して金に吊られて来た者ばかりではないでしょう。それ以上に、貴方を慕ってついてきてくれる人々はいるんです。その人達のためにも、今は退いて下さい。私も、あなたを失う事はとても苦しい」

 レーミルの腕が、ゆっくりと落ちた。

 しばらく2人は見つめ合い、同時にそらした。





「ディムロス……」


「セリナ?」


 うなだれて動かないレーミルを、どこかに隠れていたカデナが連れて行った。とても優しそうな、慈愛の深い表情だった。


「セリナ……」

「ディムロス……どうしてここに?」

「レーシェルミルドを追って来たんだ。君達が危険だと知って……」

もう少し近寄ったわたしは、何か言おうとして奥歯をかみ締めながら黙ってしまった。

どうしてだろう。もっと、いっぱい話したい事があるのに……。

「セリナ、ここは危ない。早く行け。あの光りを昇って行けば、精霊の所へ行けるんだろう?」

「うん……。最後の、ワグナー・ケイがそろう」

「そう、か……」

視線が自然と下がる。もう少しで元の世界に帰れるのに……それなのに……。


「ディムロス」


「ん?」


「……会いたかった」


「…………」


「もう1度だけでもいいから、会いたかった」


「……あぁ」


「止め具の包み、見たよ」


「そうか」


「うれしかった」


「ありがとう」


「………」


「………行ってほしくない」


「行きたくないよ」


「ずっと、この世界にいてくれ」


「ここにいたい」


「ずっと、一緒にいてほしい」


「離れたくないよ」


「愛してる」


「………ぅん」


 顔を上げる事ができない。

 かわりに1歩近付き、豆だらけの手を握りしめた。


「―――っ。行って、ほしくないんだ。君を……もう、大切な人を失いたくない。俺は……世界が滅びてもいい。君といられるのなら、世界が消えるその瞬間まで君といられるのなら、何もいらない。ずっと、一緒にいてくれ」


「いたいよ、ずっと。ディムロスと一緒にいたい。けど―――この世界を壊したくないの。わたし、ここの人達が大好きだから」


「セリナ……」


「生きて、ディムロス。わたし、頑張るから。ここを消させたりさせないから。生きて、幸せになって」


「君がいなければ意味がない」


「大丈夫だよ」


「どこにも行くな」


「大丈夫」


「俺を……忘れないでくれ」


「忘れないよ。そのせいで結婚できなかったりして」


顔を上げ、わざと軽口を叩いた。ディムロスも、クスリと笑ってくれる。いつものように、わたしの頭をくしゃくしゃ撫でて―――


「!?」



な、なに?何が………?



 気付くと、ものすごく近くにある絳い瞳と目が合って―――

「な、に……」

「頑固な君の事だ。俺がどう口説いても行くんだろう?」

「く、くど……!?」

「俺も、忘れないから」

「ディムロス……」

「行け」

「……ん」

頷いて踵を返し、走り出す。

「――――ディムロス!」

その途中で振り返り、



「大好き!――さようなら!!」



叫んだわたしは、1度も振り返る事なく階段を駆け上がった。











「……さようなら……」




 ディムロスは傷口を押さえながら光りへと向かう彼女の背中を見送った。





 いつまでも。光りの階段が消えゆくまで……。 



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