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XIII-9暗黒の島

□□□


 「全く、君のおかげで獲物が逃げちゃったじゃないか。大した力もないくせに、よくも邪魔してくれたね」

「へっ。オレァ人の邪魔すんのが趣味なんでね。今後、気を付けろよ?」


 俺が混乱の最中に駆けつけると、その中心で2人の男が睨み合っていた。1人は白い肌に俺と同じ絳い瞳を持つ男。もう1人は――


「レーシェルミルド!!」


背後でラズロが仲間に指示を飛ばす。絳目の男と対峙していた彼が、ゆっくりとこちらを振り返った。

「おやおやこれは……。お久し振りでございますね、ディムロス様?」

「レーシェルミルド……貴様、今自分が何をしているのかわかっているのか!?」

セリナ達の話を聞いて気になり、彼を監視させていたが……まさか本当に…。

「ええ、充分に把握していますよ」

「エウノミアルの座を失う事になるぞ」

何故だ。何故、彼はこのような事を……。

「まさか。僕は何も失いません」

「何を―――」

何を言っているんだ。人々を導き、人々の生活を守る職に就いている人物が―――

「いえ、簡単な事です。刻印が消えても隠し通せばいい。次のエウノミアルが現れたとしても、消せばいい」

「正気か」

「いたって正常ですよ?が、強いて言うのならば、そうですね……僕にこんな感情を芽生えさせたのは―――」

周囲で松明が踊る。戦闘の声が遠い。俺と彼だけが取り残されたかのように……

「お前だ」

「…………」

「お前が……お前さえいなければ、僕は頂点に立つ事ができた。孤児だった僕が!盗みを犯してまで僕に勉強させてくれた義兄を犠牲に、やっとエウノミアルになれたかと思ったら何だ。僕より年下の奴が僕より先にその座を勝ち取り、何の苦労もしないでのうのうと暮らしているじゃないか。卑怯な手を使って!!」

「卑怯な……?」

「聖なる石」

「どこで……それを……」

「いろんな文献を読んだんだ。そうしたら石の事が書かれていた。お前がそれを持っていることもな!僕はお前よりも優れている!剣術も磨いた!がむしゃらに勉強した!人々の幸せを願って、いつかお前を抜いてやろうと精一杯やったんだ。しかし、その努力はムダだった。いくら勉強しても、いくら腕を上げても、聖なる石を持つお前に勝つ事はできるはずがない!手が届きそうになると、お前はすぐに先に行ってしまう」

「……っ私は………私たちは…………」

「お前にはわからないだろう!何年も屈辱を受けてきた僕の気持ちなど、わかりはしないだろ!自分が住む島でありながらも、聞こえてくる名声は、全て貴様なのだ!僕を称える声は数える程しかない!」

「私は……」

ほとんど仕事で“力”は使っていない。しかし、今言ったとしても、彼に届く事はないだろう。

「お前が許せない!正当な方法で勝つ事のできない自分が憎い!!」

高い金属音が鳴り響く。俺の目の前に、たくましい背中があった。

「おいおいおい!何ボーっとしてんだよ!それでも俺達の血ィ引いてんのか!?」

「お前は……?」

俺と同じ絳目を持つ男だ。

「オルコンだ。お前、リーズの一族だろ?こいつ、どうするんだ?」

「同族……?」

「モグラ君?僕の邪魔をしないでくれないかな。そんなに死にたいのかい?」

聞いた事のない冷たい声が、オルコンを押し返す。

「誰がモグラだ?この根暗長髪!さっき邪魔すんのが趣味だって言っただろうが!てめぇこそビビってんじゃねぇのか!?」

子供の喧嘩じゃないか、これでは……。

「悪いけど、君と話している暇はないんだ。さっさと―――」

「待て」

「何だよリーズ」

「ディムロスだ。彼は、私に任せてくれ。雑魚では不満だろうが、手を貸してくれないだろうか」

「ちっ、しゃーねぇな」

オルコンが大剣を担いで離れる。目の前で私の知らない顔が、面を上げる。

「貴方は……」

「僕は、お前を殺してエウノミアルの頂点に立つ」

「……本気、なんだな……」

どんな怪我よりも、酷い痛みを感じた。

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