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XIII-8暗黒の島


 聞き覚えのある声がした。こんな所にいるはずのない声。





「……レーミル」



そう、テンペレットで私たちのケイを狙ってきたあの男。しかも、周りに凶暴そうな男達を連れていた。

「覚えていてくれてうれしいよ」

「あの爆発はあなたの仕業?」

「君達が隠れたりするからいけないんだよ。言っておくけれど、僕も好きでこんな事をしている訳じゃあないんだ。君達が素直に聖なる石を渡してくれれば、それですむ事なんだよ」

あくまで表情は穏やかに、内面は激しく攻撃してくる。

「何だァ?あいつらは」

早くも慣れたのか、オルコンは目を細めながらも相手を認識したようだ。

「私たちが集めたケイを奪おうとしてる奴。かなりしつこいね」

「いったい、どのようにしてここが……?」

ナギが不安そうにわたしの服の裾を掴んでいる。脅えた視線だ。

「簡単だよ。ウィズダムに見張りを置いておけばいい。君達を見失ったのはキーリス辺りだったからね。高い確率でそこへ行くことが考えられる。そして、君達が乗った小舟を追け、愉快な僕の友人達を呼んだ。―――ね?簡単だろう?」

「ずいぶんと物々しい“愉快な友人”だな、おい」

「本当はリビールも呼びたかったんだけど……敗者が来るべきところではないしね。―――され、そろそろ本題に入ろうか。いい加減、僕に石を渡してくれないかなぁ」

リビールって……ウィズダムで襲ってきたアイツだよね?アイツもレーミルの手下だったってこと?

「嫌だって言ってるでしょ?いい加減、諦めてくれないかなぁ」

「―――残念。交渉決裂だね」

 どこが交渉なんだか。

 レーミルは大袈裟な動作で左手を真っ直ぐ天に向ける。すると、2人の手下が誰かを引きずってきた。

「シアさん!?」

ナギが口元を押さえて悲痛な叫び声を上げた。わたしも、傷だらけの体に息を呑む。

「彼を殺してほしいのなら、僕の頼みを断りたまえ」

「卑怯者!」

「何とでも言うがいいさ。“目的のためには手段を選ぶな”昔から行われてきた行為だ。―――さあ、どうする?」

ぐっと、奥歯をかみ締める。ケイを渡す訳にはいかない。かと言って、シアさんの命を貰ってしまう訳にはいかない。

 わたしは強く目を瞑って手を―――


「待てよ」


ポケットに延びた腕を止められた。オルコンがしっかりとレーミルを睨みつけて不適な笑みを浮かべている。もう陽は顔を隠そうとしている。彼らの好む闇が訪れようとしている。

「話はよくわかんねーけど、お前らにとっちゃアイツは悪者なんだな?」

「そう、だけど……」

「なら、アイツの言いなりになることはない」

「おやおや。新しい騎士ができたようだね。けれども、止めさせるような事をしたら、彼女達の友人を殺す事になるよ?」

レーミルは腰の剣を鞘走りさせ、シアさんの喉元に突きつけた。

「やめて!!――オルコン、気持ちはうれしいけど……」

「そんなんでいいのか!?嬢ちゃんには嬢ちゃんのやるべき事があんだろ!?なら、助けた命を存分に使いやがれ!」

「オルコンさん、何を―――」

『道がきた。早く昇れ』

ハーディスが姿を見せずに急かす。振り返ると、すっかり暗くなった空に浮かぶ月から、光りでできた階段が地上へ降りていた。

「行かなきゃなんねーんだろ?行けよ。後は俺らに任せな」

いつの間にか、武器を持っていた地下住人達が集まっていた。

「……ありがと、皆。まだ慣れてないんだから、無理しないでね!」

「わかってるよ。嬢ちゃんよりは無理できないさ」

明るい月明かりに照らされて、武器を手にした人々に背を向けた。

「ハーディス」

階段を上りながら、虚空に声をかけた。

『何だ』

答えは意外と近くから返ってきた。姿は見えない。

「これ、どこに続いているの?」

『ウーラノス』

「そこに、光りの精霊さんが?」

『行けばわかる。これはくれてやる』

と、突然目の前にケイが現れて、落ちるそれを慌てて受け止めた。

「……………」

「……?どうしたの?」

掌でケイの感触を確かめながら、頭の中でいろんな考えが目まぐるしく回転する。

「セリナ?」




「先に行ってて」




「ええ!?」

「助けなきゃ。このまま、任せる訳にはいかないよ。まだ地上に慣れてないのに……」

「でもセリナ、私たちに何ができるの?殺されてしまったら?捕まってしまったら?それこそ彼らに申し訳ないわ」

「それでも……行かなきゃ!」



先に行ってて、と再び言い置いて階段を駆け下りた。



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