占い師
「良く当たる占い師か。会ってみますか?」
ローエルがフェンダに尋ねる。
「何故?」
「いえ、良く当たるのでしたら、カドリア様の今後を占ってもらおうかなと思いまして」
「なるほど、それはいい。もしも、おかしなことをいったら我がぶち殺してしまおう」
(何でそういう思考になるんだ。余計なことを提案してしまった・・・)
フェンダは揚々とローエルは鬱々として占い師の元へ向かった。情報では町外れの森の入り口の奥まったところに一軒ぽつんと家があるそうだ。その情報を元に向かうとそれらしい家があった。
「こんにちは。どなたかいらっしゃいますか?」
ローエルが中に声を掛けると直ぐに女が現れた。
「は~い。御予約の方?」
女は赤い面積の少ない服(というか下着?)を着ている。年は20代であろう。ブロンズの長髪の美しい女性だ。とにかく裸のような恰好をしている。まだ若いローエルには刺激が強すぎる。ローエルは顔を赤らめて下を向いたまま話せなくなってしまった。仕方なくフェンダが、
「女、お前が占い師か?」
そう言われた女の態度があきらかに硬化した。
「違う。出てって」
「女、占え」にべもない。
「嫌だよ」こちらもにべもない。
フェンダはローエルを振り向くと、
「貴様に言われて来てみればこのざまだ。占い師何て者は話術によるペテンだ。無知な者に罠を仕掛けその罠に落ちた者の心を惑わす。全く無駄な時間を費やされた。ローエル、間違った時はどのようにするんだ?」
ローエルは内心納得できないものを感じたが、ここで反論すると面倒くさいことになりそうなので、
「すみませんでした」
と深々と頭を下げた。
「そのような軽い謝罪ではなぁ~」
(またあれやるのか。しかも奇麗な人の前で、嫌だなぁ)
ローエルが膝を屈めようとした時に、
「ちょっと待ちなさい。そこまで言われちゃ、このユリアナの女が廃る。おい、そこのイカレ金髪」
ユリアナと名乗った女がフェンダを指さす。
「イカレ金髪とは我の事か?」
「あんた以外誰が居るのよ。特別に占ってあげるわ。そうしたら謝って即刻出て行きなさい。」
フェンダは表情には出さないが内心すばらしく怒っていた。
「我が納得すればな。できなければその首もらい受けるぞ」
「上等よ」
「女、我はどうすればいい」
「黙って聞いてくれればいいわ」
「何?」
「黙ってって言ってるでしょう」
ユリアナがヒステリックに叫ぶ。不承不承フェンダは口を閉ざした。
「あんたは求道者ね。王都に道を示すものが居るわ。長く青い髪の・・・・、うわぁ~凄く奇麗な子ね。あれ、男の子よね?」
ローエルは思わず叫んだ。
「カドリア様!」
それを聞いたユリアナは、
「あんた達、この子に会っているのね。ねえ、教えて。この子、男よね?」
「男です」
ローエルが答える。
「男の子。やったー。惚れたわ。完全にひとめ惚れよ。あのカドリア君を連れてきて頂戴。そうしたらいくらでも占ってあげるわ」
フェンダが驚いた顔をして、はしゃぐユリアナを凝視している。
「ユリアナさん、何故分かったんですか?」
ローエルが真っ当な事を聞いた。
「ふふふっ、カドリア君を連れて来たら教えてあげるわ。さあさあ、予約のお客が来るから帰った帰った。」
そういうユリアナに二人は押し出されてしまった。
仕方なく引き返す二人は道中話し合った。
「フェンダ様、どう思われます?」
「我にもわからぬ。我が求道者であることは知られていてもおかしくはない。しかし、カドリア様との関係まで知られているのは、解せぬ」
「フェンダ様が声を掛けた求道者から話を聞いた、とかはあり得ませんかね?」
「それはあり得なくはないが・・・、しかし、髪の色やお姿までもというのは・・・。あれはまるで見ていたかのような言い方ではなかったか?」
「そうなのですよね?でもそんな事ってありえない」
ローエルが呟きながら首を小さく左右に振る。
「いや、あり得るのだ。カドリア様は「天命が見えた」とおっしゃったではないか。あの女には、何かが見えているのだ。そう考えなければ辻褄が合わん」
「だとしたら、他の者にユリアナさんを奪われたら」
「大変なことになる。大至急、カドリア様をお連れするしかあるまい。ローエル、貴様が急ぎカドリア様をお連れして来い」
「フェンダ様は?」
「我は、女を見張る。もしも、怪しい奴が現れ女に手を出すようであれば叩き殺す。」
「承知いたしました。早速出発いたします」
ローエルは急いでカドリアが居る王都を目指し馬を走らせた。