王は絶えず怯える
王暗殺未遂事件があってから二日後、カドリア達は城に着いた。気は進まないが、王への謁見を願い出る。すると近衛兵から、武器を渡すように要求された。カドリアの美しい顔が一瞬怒りに燃える。
「私はカドリアだぞ。王はそれをお分かりになっていないのではないか?もう一度尋ねてこい」
近衛兵は、すぐに引き返していったがやはり同じく武器を渡すように要求してきた。カドリアは怒りを感じたが、今にも跪きそうな感じで申し訳なさそうに、「王命ですので」と言う言葉を繰り返す近衛兵を憐れに思い、腰から剣を外すとそれを渡した。近衛兵は安堵の表情でその剣を恭しく掲げて持ち去った。
謁見の間に入ると王はベットで横になっていた。
「王様、カドリアです。御病気ですか?」
ベッドへと進もうとするカドリアを近衛兵が止める。
「王子、その線より中に入られてはいけません。」
カドリアは驚いて止まり、声の主を見つめた。
「どういうことだ?」
「何人たりとも、王の許可なく線の内側に入った者は殺せとのご命令です。」
「なに?」
確かにベットの四方にロープが張り巡らされている。
「私でもか?」
近衛兵は言いづらそうにしながら、
「例外は無いとおっしゃられました。」
「そうか・・・、王様はお休みのようだ。また日を改めて参るとしよう」
カドリアはそう答えると、謁見の間を後にした。そしてすぐに、タイガとルーガ、フェンダ、ローエル、ユリアナを自分の部屋に呼び寄せる。5人はすぐに集まった。
「適当に座ってくれ」
その言葉が終わらなうちにユリアナが猛然とダッシュする。
「カドリア君の隣ゲット♡へぇ~これがカドリア君のお部屋かぁ~。素敵ね!」
ユリアナがはしゃいでいる。
それぞれが席に着くとカドリアは話し始めた。
「今、王様に会ってきた。いや、正確には見てきたと言う方が正しいかな。」
「で、どのようなご様子でしたか?」
ローエルが聞き返す。その相槌にカドリアは首を振りながら、
「最悪」
と両手をテーブルについて嘆いた。
その顔をユリアナがしげしげと見ているので、占っているのだと思ったフェンダが
「女、何が見える?」と尋ねると、
「嘆いてる顔も素敵だわぁ~」という答えが返ってきた。
(女め~、いつか殺す)
フェンダはまたもや心で誓った。
「我が主よ。どう最悪なのかお聞かせ願いませんか?」
「そう、それを聞かせてから今後どのようにするかを諮るために皆を呼んだ。王は心の病気になっている。そのせいで正しい判断が降せるとは到底思えない。今敵が攻めて来たらどうにもならないよ。」
そう言うとカドリアは先ほどの謁見の間で起こったことを細かく話して聞かせた。
「なるほど、それは困りましたね?」
ローエルが呟く。
「簡単なことだ。我が王を殺してこよう。」
(息子の前でそれ言っちゃうんだ。やっぱスゲーなこの人・・・)
ローエルは心の中で汗をかいた。
「我が主よ。王が死んだら主は悲しみますか?」
「悲しくはないが・・・、父殺しという汚名が残るのが辛いなぁ~」
(わあーっ、こっちも凄い。)
ローエルはまたしても心の中で冷や汗をかいた。
「では、我が主が殺したと思われないように殺りますか?」
「うん、それしかないかな?」
(まずい。このままではカドリア様に父殺しの悪名をきせてしまう。)
ローエルは必死で考えて一つのアイデアが浮かんだ。
「カドリア様、王位を譲らせましょう。」
「ローエル、それは私も考えたが・・・、王の様子は正気ではない。おそらく話にもならないよ」
「いえ、私に策があります。どうかルーガと二人でやらせてください。もしも、私の策が失敗したときには、改めて先ほどの事を実行すれば良いではございませんか」
「貴様、それほど言うのであれば、しくじったら打ち首覚悟であろうなぁ?」
突然フェンダが目を剥き強い言葉を掛けてくる。
「いえ、そんな気はさらさら無いですけど・・・?」
「貴様はそんなだからあの女にさえも馬鹿にされるのだ。」
ユリアナがその言葉に反応する。
「カドリア君、聞いた?このユリアナ様をあの女だって~、私はもうじき王妃になるのよ。未来の王妃に向かってあの女なんていったら・・・、死罪よ、打つ首よー。ちょっとイカレ変態、聞いているの?謝りなさいよ。」
この瞬間、フェンダはイカレ金髪からイカレ変態に昇格した。
怒りまくるユリアナに対してフェンダは、気配を消して完全無視を決め込んだ。その様子を見ていたカドリアは、陽気な笑い声を上げると、
「本当に君たちは面白いな。さっき人を殺す話をしていたとは思えないよ。よし、決めた。まずはローエルに任せよう。」
ローエルが跪き深々と頭を下げる。
「でも、そんなに長くは待てないよ。」
「7日いただきとうございます。」
「うん、7日ね。ローエル期待しているよ。頑張ってね!」
話しは決まった。みんなはそれぞれの任務に戻っていったがユリアナだけが後から戻ってきて、カドリアの前にひょっこり現れた。
「あの~カドリア君・・・、今晩お暇?」
「えっ、ユリアナかい?びっくりしたよ。何?僕と夕飯食べたいの?」
カドリアが無邪気に笑う。
「う~~~ん、夕飯もなんだけど~~~~~、その後もご一緒したいなぁ~なんて♡」
ユリアナが顔を赤らめ、くねくねしながら話している。
「うん、今日は空いてるよ。7時においで、御馳走を用意させるから」
そういうとにこにことしてユリアナを見つめてくる。
((≧∇≦)反則的な可愛さ~~~。今ここで食べちゃいたい♡)
「きゃー、奇跡ね。戻ってきて良かったわ。じゃあ、7時に伺うわ。忘れないでね。7時よ!」
そういうとユリアナは手を振りながら部屋を後にする。それに対してカドリアも笑顔で小さく手を振り返した。