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サクラ死にかける

額に誰かの手が触れている。気持ちいい、触れている部分からなにか気持ちの良い感覚が全身に広がっていくのを感じる。


そっと目を覚ますと、私の額に手を置いているアイシス様の顔が目に飛び込んできた。アイシス様は私が目を覚ましたのが分かると、満面の笑みになり叫んだ。


「セシリア!!良かった目が覚めたのね!」


なんでも私は高熱を出して気絶して、3日3晩意識を失ったまま死の淵を彷徨ったと言うのだ。まあ命の危険があったのは最初の晩だけで、アイシス様の必死の医療魔術のお陰で助かったらしい。


服もずたぼろのウェディングドレスから、寝巻きの薄手のワンピースに替わっていた。


「栄養失調で体が衰弱している上に、高熱が出たから一時はもうだめかと思ったのよ。アルフリード王子が伝心魔法で貴方が倒れたって大慌てで知らせてきたから、すぐに転移魔法で王城に飛んだの。ユーリス様なんか蒼白になって、寝ずに馬を飛ばして7時間かけて王城まできたらしいわ」


「そ・・・そんなに危険な状態だったんですか?私・・・。それでアイシス様が3日間ずっと私の看病をしてくれていたとか・・・」


「まさか。1日3回、デルカから注入された栄養を魔力で体に浸透させに来ただけよ。この貸しは大きいですわよ」


「デ・・・デルカってなんですか?」


私はぎょっとして聞いてみた。自分の体を見て見ると腕のあたりに針が刺してあり、点滴の要領で何かの液体が血管に送り込まれているのは間違いなさそうだったが、その先についているものがあまりにも異様だったからだ。


液体の入ったパック・・・ではなくて、黒いもじゃもじゃした毛の生えたサッカーボール大の丸い物体で、しかもその物体には二つの目があった。そこから出てくる液体が管を通して私の体内に注ぎ込まれている。


「ああ、この黒い毛玉ですわよ。貴方みたいな状態になった人に使えば、簡単に栄養を補給させられる優れた魔植物なの」


アイシス様はあっけらかんという。アイシス様の説明では、デルカは魔獣の森に生える魔植物で、とても高価なものらしい。はじめはサッカーボール大だが、使うと3センチくらいの大きさになるそうだ。そうなったらまた魔獣の森に植えに行くらしい。


目が見えるのはただの擬態で、捕食されるのを防ぐ目的だといっていたが、その目が動いたり瞬きしたりするのを私は見逃さなかった。


ひょえーーー気持ち悪いーー!!


だけど私が急に倒れて血相を変えて心配したアルが、本来王族のみ使用が許されるデルカを惜しげもなく私に使ったのだと聞いて、今すぐにでも点滴の針を抜きたい衝動に駆られながらも、我慢した。


でもデルカの効果なのか体のだるさがかなり改善されているのに気づく。これなら動くのも可能そうだ。ここ2週間と3日。寝てばかりいるので筋肉もなまっているに違いない。できればテラスで1時間ほど素振りをしたいところだ。


「あの・・・私ベットから出て着替えたいんですけど、先にお風呂をいただいていいですか?」


アイシス様が私の方を含みのある表情で見る。私・・・変な事いったのかな?


「貴方、死にかけたって言ったわよね」


はい、聞きました。


「アルフリード王子やユーリス様、他の方々も尋常ではないくらいに心配したのよ」


ああ、確かにアルやユーリの反応は予想できる。すごく心配したんだろうなぁ。


「その方達が貴方が目が覚めるのをどれだけ心待ちしていたかも分かってるんでしょうね」


う・・・だからお風呂に入って着替えてからお礼に伺おうと・・・。


「皆さんこの扉の向こうで、寝ずに貴方の目が覚めるのを待っていらっしゃるわよ」


えーーーーー!!!この扉の向こうって、2メートルも離れてない!そこに皆、勢ぞろいって事!?


「ちょっとアイシス様どういった事なので・・・」


私が言い切るよりも前にアイシス様がその扉を開けると、真っ先にアルとユーリが飛び込んできた。目の下に隈が見える。心配かけちゃったんだなぁ・・・と罪悪感に駆られる暇も無く、上半身だけを起こしてベットに座っている私の左手をユーリが握る。


「良かった!!神様!本当にどうなるのかと思って心配しました」


そして右手を私の足元の方から回ってベットの上に体を置いたアルが握る。


「突然倒れて、息が小さくなっていった時は肝を冷やした!もう二度とこんな事はしないでくれ!」


いや・・・やりたくてやったわけでは・・・まあ林檎はやっぱり食べておくべきだった。


相変わらずのお二人の態度に安心しつつ、その背後を見るとアイシス様にキアヌス様、ヘル騎士様にクラウス様、マリス騎士の顔が覗いている。あ、その奥にルーク補佐官様の顔も見えた。ギルセナ王国から無事帰ってきたんだね。良かった!


異世界に来てたくさん大切な人ができた。その人たちから愛情をいっぱい貰って、私はなんて幸せ者なんだろう。私は幸せを噛み締めて、改めて皆の方に向き直るといった。


「ありがとう。みんな!!みんな大好きだよ!!!」

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