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サクラ 回想

私は今何をしているんだろう。ドリトス村に来て、村長さんの家でお世話になってて・・・そうだ、お花の世話もしないと・・。


あれ?違った。明日から期末テストだ。全然勉強していない。友達の雪菜ちゃんにノートのコピーを頼もう。やきそばパンで手を打ってくれるはずだ。


剣道部はどうだったっけ、朝練にもいって、そうだ先に塚本くんに道場の鍵を開けてもらわないと・・・。


頭の中がふわふわする。いい気持ち。もうこのまま何も考えたくない。目の前に誰かがいる・・・。だれ?あっ・・・。


おじいちゃんだ!おじいちゃんが目の前にいる!!おじいちゃんの部屋だここ。畳の6畳間に机に、剣道の賞状が天井近くに並べられている。懐かしい・・。


あ・・寝てたみたいだけど、おじいちゃんも私に気がついたみたいだ。なにか言っている。


《 桜か?桜なのか。一体どこにいるんだ。急にいなくなってみんな心配して探しているんだぞ!神隠しだとかマスコミは騒いでおったが、なんだか元気そうで良かった 》


《 うん。おじいちゃん。私、元気だよ。異世界に聖女だって言われて召喚されちゃって、もう大変な目にあったけど、今は大切な人も沢山できて幸せに暮しているよ 》


《 聖女?召喚?なんだ、最近の若者の言葉はわからん。元気ならよかった。いつ帰ってくるんだ? 》


《 それが行くのはできても帰るのはできないんだって。なのでもう帰れないの。でも、私絶対この世界で幸せになるから、安心して 》


《 わかった。帰れないならしょうがない。だが、倉島流剣道だけは絶やすんじゃないぞ。そちらの世界でも続けていくんだぞ 》


《 うん分かった。おじいちゃん・・・なんか姿が遠く・・・な・・・て・・・ 》



そこで目が覚めた。私はドリトス村の村長の家のベットの上にいた。そうだ・・昼間ブレント君に会って、悲しみが減って幸せが増える飴を貰って・・・するとなんだか変な気分になって寝ちゃったんだよね。・・・どう考えても、なんか変な飴だよね。


ふと窓の外に目をやると、外で村人が集まってなにか深刻な話でもしているようだった。そこに、村長さんのハンスさんがいるのも見えた。


何の気なしに、カーデガンを羽織って外に向かった。村長さんに声をかけようとした瞬間、彼らが私の名を口にしたのを聞いた。


サクラ・・・と。


そんな馬鹿な!この村の人やブレント君でさえ、私の本当の名前は知らないはず・・・サクラという名前を知っているということは・・・私が聖女だって事も知っているに違いないってことだよね!


踵をかえして誰にも気づかれないように、再び村長さんの家の自分のベットに戻った。考えろ。考えろ。


私はクリスタルを外して、誰かから伝心魔法が入るのを待ったが、だれもかけてこない。まあ深夜だし、そんなこともあるよね。そう思って次は夜空を眺めてみる。図書館でこちらの天体の位置について読んだ知識を思い出した。この世界では二つの月の角度と距離で、経度がわかるらしい。


月を見てみると、王城で見ていた月と角度が随分違うことに気がついた。王城では[ こ ]の形だった月が、今は [ い ]になっていた!!!


こりゃえらいこっちゃ!!詳しいことは分からないけど、かなり遠くに来ていることは確かだった。そりゃ伝心魔法使えないよ!国内電話じゃなくて国際電話じゃない!


・・・ということはこの飴も、ものすごく怪しい。これ麻薬系の代物じゃないのかな?学校で警察の人が来て説明会があったときに聞いた症状にそっくり。いい気持ちになって脱力感があって眠くなる。


いや、麻薬はいい気持ちになって興奮するんだっけ。じゃこの薬は交感神経じゃなくて、副交感神経を高める系の薬なの?よく分からないけど、なにか入っているのは間違いなさそう。


やばい・・・異世界で麻薬中毒なんてしゃれにならない。しかも聖女って事がばれているとしたら、十中八九私の能力目当てじゃないの!!でもまてよ。この能力ってば、私の意志のみが発生条件だ。誰かが利用できるようなものではない・・・ってことはやっぱりこれ麻薬だぁーーーー。


どうしよう。月の位置を見る限り、アメリカと日本くらい離れていそうだ。時間を止めちゃったら誰にもウェースプ王国までの道を聞けないし、方向音痴の私は絶対に迷子になる自信がある。しかも大陸すら違って、船に乗らないといけないかもしれない。時を止める事しかできない私じゃ脱出は不可能だ!!


よし、ここは様子を見て、誰かが助けに来てくれるのを待とう。とにかく今は自力で逃げる時じゃない。だって私こんな山奥にいるんだよ?!一生、時が止まったまま森でさまようなんて事になりかねないのよ!?


あー本当にこの能力って、殺しか盗みにしか役にたたない。テレポーテーションとかサイコキネシスとかのほうが、よっぽど良かった。


私はその日、怒りに震えながら眠りについた。

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