レンブレント国王
全て計画は順調に進んでいる。
ウェースプ王国を手に入れようと、クリスティーナにあの老獪なリュースイ宰相を転換魔術にかけさせた。クリスティーナを自分の姪だと思い込んだあの宰相は、聖女のことをクリスティーナに漏らした。
聖女の能力について知るうちに、とんでもない能力だということに驚きを隠せなかった。聖女を手に入れた者が、世界を支配できると考えて間違いないと確信した俺は、クリスティーナに命じて、ウェースプ王国の重要人物全てを転換の魔法にかけた。
貴重な転換の魔法を扱うクリスティーナを失ってしまうのは、多少痛いが聖女が手に入るなら安いものだ。
3種の宝飾を手に入れられない俺の取れる手段は一つしかなかった。聖女自らが俺の手に落ちてくるように仕向けることだ。時を止められでもしたら、すぐに終わりだ。S級魔力を持つ者を脅して、その命と引き換えに俺は子供の姿になった。
そうブレントは俺が魔力で子供になった姿だ。
聖女は簡単に騙されてくれた。アルフリードはクリスティーナに陥落されて、聖女は自分から城をでるといいだした。全てが予定通りだった。
城下町を出た後、寄り合い馬車に乗って聖女が眠った隙をみて、馬車ごと転移魔法でギルセナ王国まで移動した。何人かの術者が魔力切れで死んだようだが、聖女さえ手に入れば術者など必要もない。
聖女はウェースプ王国内のドリトス村にいると思っていた様だが、それは全くの見当違いだ。
ドリトス村は俺がこの時の為に作った村だからだ。村人も花畑も即席で作ったお粗末なものだ。聖女は喜んで俺を全面的に信頼したようだ。その時を見計らって、あの飴を渡した。
あの飴は、食べると悲しみが減って、幸せが増える等といった御伽噺のような代物ではない。
あれは中毒性のある薬で、聖女のような魔力の無いものを永遠に従わせるのには、一番いい方法だ。3日も待たずに、聖女は飴を欲しがるようになった。たとえ何を引き換えにしても・・・。
聖女との婚姻はもう各国に通達してある。我が城でも盛大な結婚式の準備が着々と進んでいる。
この結婚が滞りなく済んだら、クリスティーナにはもう用はない。ウェースプ王国など興味もない。次の俺の目標は世界を手に入れることだ。まあその前に3種の宝飾は手に入れる必要があるが、それは聖女さえいれば簡単に終わるだろう。
聖女はいま俺の前で眠っている。飴の力で判断能力も鈍ってきているようで、自分が王城にいることすら理解できていない。
さあ、今回のS級術者の準備ができたようだ。この少年の不自由な体から、やっとおさらばできる。本来のレンブレント王に戻るのだ。2ヶ月も少年になっていたのだ。自分の体が懐かしくなってきた。
聖女よ。もうお前は悲しいと思うことすらないだろう・・・全てお前が望んだとおりに・・・。