アルフリードとユーリスの和解
部屋の中にいたユーリスと互いに目が合うと、その背後に騎士服を着た別の2人が立っているのが見えた。ユーリスは未だに、オレを睨んでいる目の力を緩めようとはしなかった。
「アルフリード王子。先程、聖女ユイカがクリスティーナを捕まえたようですね。もう正常に戻られた判断していいのでしょうか?サクラのことを思い出したと・・・」
ユーリスは怒りを隠そうともせずに、語気を強めて話した。
「・・・ああ、完全に思い出した。オレはサクラに・・・サクラに会って謝らなければいけない。彼女をひどく傷つけた・・・」
最後に見たサクラのあの傷ついた顔を思い出して、胸の痛みが強さを増す。ユーリスが確信を持った口調で答える。
「サクラに会うのは無理ですよ。アルフリード王子」
「どういうことだ?ユーリス」
私は意外な答えに驚きを隠せなかった。聖女の能力を持っているとはいえ、身よりもない少女が、王国の追跡から逃れられるとは思わなかったからだ。
「彼女は今、ギルセナ王国にいるようです。現在アイシスが詳細な場所を特定しようとしていますが、おそらくレンブレント国王の手の内かと・・・」
「・・・何・・だと?」
ギルセナ王国!!
なんてことだクリスティーナの策略とサクラの失踪は繋がっていたのか!?
あまりの事態に動揺するオレにかまわず、ユーリスが畳み掛けるように叫ぶ。
「貴方がサクラをそこまで追い込んだんだ!彼女が何もかも捨ててもいいと思うまでに、サクラを傷つけたのです。私はこの件に関して殿下を許すつもりはありません。サクラがウェースプ王国に戻ってきても、もう王城に来させたりはしません。これからは私が生涯彼女を守ります」
この絞り出すようなユーリスの言葉は、今までサクラにしてきた仕打ちを全部思い出した自分自身に深く突き刺さった。
「すまない、ユーリス。オレは何の言い訳もするつもりはない。ただもう一度サクラに会いたい。この気持ちは譲れない」
ユーリスは一瞬、憤怒の表情を見せたが、次の瞬間それを落ち着かせこういった。
「アルフリード王子。もう一度殴らせて貰ってもいいですか?これで私の気持ちは収めましょう。サクラの為にもここで私達が仲たがいをしている暇はありません」
この考えにオレはすぐに同意した。サクラがあの独裁王と呼ばれる悪名高きレイブレント王の元にいる。一刻も早く助けに向かわなければと、はやる気持ちを抑えるのに必死だった。
サクラ、今何をしている、何を考えている。早くお前に会って今までの事を謝りたい。そうして伝えたい。オレが唯一愛しているのはお前だと・・・。
ユーリスは何の遠慮もなしに、王子であるオレの腹を思い切り殴りつけた。




