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サクラ 負けずに頑張る

朝早く目が覚めてから、私は自分に気合を入れる為、自室から続くテラスに出てラジオ体操をした。大分、暖かくなってきたとはいえ、朝の空気はまだまだ冷たい。気合を入れるには十分だ!!


ついでに暖炉についていた火掻き棒を使って、素振りをする。少し汗をかいたけど爽快な気持ちになった。


よし!!私まだ大丈夫!!


そのまま朝食を終え、淑女教育に精をだす。せっかく無料で学ばせてくれるというのだ。覚えておいて損はない。地理や歴史には特に全力を尽くして望んだ。これから一人で生きていくためには必要不可欠だと思ったからだ。


大体、人に頼って生きていこうとした私が間違っていた。おじいちゃんが言っていたように、人は与えられた札で人生を勝負しなければいけない。あったと思っていた札が、実は無かっただけの話だ。札が無くなったと嘆くより、今ある札で勝負だ!!


私の突然の頑張りに、教師達は驚いてルーク補佐官様に相談したらしく、私に急に会いたいといってきた。時間が勿体無いので、3時のお茶の時間にマナーの勉強をしながら会う事にした。


丸いティーテーブルに私と、マナーのスザンナ先生。そしてルーク補佐官様が席に座って紅茶を飲んでいた。テーブルの真ん中には、色とりどりのお茶菓子が並んでいる。


「セシリア様。私はセシリア様は少し淑女教育にお疲れではないのかと思っていましたが、どうなんでしょうか?」


私は優雅にティーカップの縁を持ち、口に運ぶ。するとすかさずスザンナ先生が、私の掴んだ指の形にダメだしをする。


くそぉ。もっと優雅にっていうことなのね!!


「ルーク補佐官様。私はこの淑女教育をとても楽しんでおります。お気を使って頂いて申し訳ありませんが、このままの速度で進めていただいて結構です。むしろもっと早くてもいいくらいです」


語尾におほほと付けたいくらいの気持ちで話す。どうだ!アイシス様の真似さえすれば、お茶会など恐れるに足らないわ・・・。早く淑女教育を終わらせて、かねてからの私の念願。田舎でのんびり子沢山きゃっほーーい計画を遂行するのだ。


私はおいしそうなイチゴの乗ったプチケーキを手に取り、一気に口に運ぶ。


「・・・そうセシリア様がおっしゃるのでしたら、そのように手配します」


さすが有能な第一王子付き補佐官様。理解が早いわ。スザンナ先生のダメだしがはいる。はいはい。大口を開けて食べるのはお行儀が悪いです・・・。


「ところでルーク補佐官様。アルフリード王子は、その・・クリスティーナ様といつからお付き合いをなさってるのでしょうか?」


一番聞きたかった事をこの機会にとばかりに尋ねる。ルーク補佐官様は少し私に遠慮した様子で、話し始めた。彼もアルフリード王子の急な変化に戸惑っているようだった。


「10日ほど前からでしょうか。すぐに仲睦まじくなられて、今では一時も離れるのが惜しいとばかりに、殿下が時間を作ってはお会いになっていらっしゃいます。クリスティーナ嬢は本当にすばらしいご令嬢なんです」


私はなんでもない振りを装いながら、紅茶から立ち上る湯気を眺めながら答えた。


「そう・・・」


「ですがセシリア様。これだけは言っておきたいのですが、殿下はすぐに心変わりをするような恋多き方ではございません。恐らく、真実の愛に目覚められたのではないかと思います。それに・・こういっては何ですがセシリア様は、ユーリス公爵の婚約者でいらっしゃいますので・・・」


みなまで聞かずとも分かった。ルーク補佐官様にとって、セシリアはユーリス公爵の婚約者である。それでもアルフリード殿下が自分のものにしたいというならば、万難を排してどんな犠牲を払ってでもセシリアを王太子妃にするつもりだった。


しかしアルフリード殿下が、その求愛になびかないセシリアを諦めて他の令嬢を愛するならば、そちらのほうが随分いいに決まっている。しかも宰相の血縁だ。血統としては十分すぎるくらいの良縁だ。


私は静かにゆっくりと息を吸うと、ルーク補佐官に言った。


「大丈夫ですわ。心配なさらないでください。私はむしろ応援しています。クリスティーナ様ならきっと良い伴侶になりますわ」


今がマナーの時間でよかった。芝居がかった話し方であるからこそ、本心でない言葉もすらすらと出てくる。


私は、安堵の表情を浮かべたルーク補佐官様を眼の端で確認して、自分の本心は胸の奥にそっとしまっておいた。

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