表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/57

ヘル騎士様 対 アイシス様

山へピクニックに行ってからというもの、アルとは全然会えなかった。なんだか政務が忙しいらしい。何かあったのかと心配になったが、騎士様達の様子を見ていると、王国に危機が迫っているとかではなさそうだ。


最後に王城に行ってからまだ2週間しか経っていないのに、もう次の大規模魔獣襲撃が報告されたらしく、ユーリにまた出征命令が出たらしい。またあの淑女教育かと思うと、溜息が出る。


私はといえば、騎士様屋内訓練場の仕事が終わって一息ついているところに、ユーリから伝心魔法が入ってきて、たった今その情報を知ったところだ。


ヘル騎士様が心配そうに私に尋ねる。


「ユーリス隊長に、今度はキューリュ領コノミス森への出征命令が出たらしいね。今回も世話係として着いて行くんだろう?」


私が王城でセシリアになって淑女教育に励んでいる時、クラマはユーリス隊長の世話係として戦闘についていっているという事になっている。私は訓練に使用した的や、魔獣をかたどった人形をせっせと荷台に乗せて、倉庫に片付けながら返事をする。


「そうですねぇ。でもユーリス様はお強いですから。魔獣くらいなら100匹でも倒せそうです」


この言葉に嘘は無かった。あの伝説の武器、聖魔鑓を持ったセイアレス大神官を相手に、無傷で勝つほどの腕前だ。大魔獣でも出現しない限り大丈夫だろう。それに万が一、そんな事態にでもなれば、私に連絡が来て時間を止めればすぐに済むことだ。ユーリが死んだりする確率はゼロに等しい。


「そうだね。ユーリス隊長はかなりの腕前だ。訓練場で全力を出して戦っている時を見たことがない」


ヘル騎士様が感心したようにいう。


「クラマ、こんなところに居たの。探したわよ」


そんなことを話していると、そこに女王様が現れた。おおっと、そうかあ。私、明日までにはアイシス様のお屋敷に行かなきゃいけないから、その打ち合わせだね。待てよ?アイシス様とヘル騎士様とは初対面では?


女王様と、寡黙でクールな騎士様。相性はどうなんだろう。私は興味津々でいるのを、なるべく表に出さないようにしながらお二人を紹介する。


「ヘル騎士様。こちらが騎士団医療班のアイシス様で、僕の女王様です。それでアイシス様。こちらが新しく今回騎士に昇格されましたへル騎士様で、この間マリス騎士様の愛の告白から僕を助けてくれた方です」


「新しい騎士様ねぇ・・・」


アイシス様が何故かうろんな顔でヘル騎士様を上から下まで眺めると、こうおっしゃった。


「ふーーん、貴方そうなのね・・。よろしくヘル騎士様。困ったことがあったら、わたくしの所にいらっしゃい。お役に立てるはずよ。勿論見返りは頂くけれどもね」


そういってウインクをする。うわ―!!美人のウインク破壊力半端無い!!周りにいらっしゃるボイル騎士様やギルア騎士様がぼーっと見惚れていらっしゃる・・・!


・・・でも、あれ?その中でヘル騎士様だけは、アイシス様のセクシーウインクに落ちていないようだ。それどころか、なにか真剣な表情で顔を見詰め合っているっていうか・・・に・・・睨み合っている!!?


そう思ったとたん、ヘル騎士様が急にそのクールなお顔に微笑を浮かべながらいった。


「そうですね。その時は是非よろしくお願いします。アイシス」


うほっ!ヘル騎士様。アイシス様を呼び捨てにしましたね!!


基本騎士の方が最上位なので、医療班の高位の者にでも呼び捨ては普通なんですけど・・・。


でもアイシス様だけは別格って言うか・・・医療班に女性が少ないといった理由もあるけど、一番の理由はその体から発せられる女王様の貫禄といいますか・・・。この騎士訓練場でアイシス様を呼び捨てにしているのはもう、ユーリくらいなのです!そのアイシス様を・・・。


これは波乱の予感です・・・。


アイシス様は予想に反して、ヘル騎士様を一瞥するとにっこりと魔性の笑みをお浮かべになり、無言で私を引きずって退却していった。



ちょっ・・・私まだ・・片づけがーーーー!!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ