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アルの想い 前編

明日はサクラが・・いやセシリアが王城に来る日だ。この日のために数日殆ど寝ずに仕事を片付けた。そのお陰で、明日は丸一日セシリアと一緒に居られる。


セシリアが王城に到着したとの連絡が入った。オレは他の者には気づかれないように早足でセシリアの元に向かう。表向きはダイクレール公爵家の大事な婚約者だ。王子の立場としてはあまり親密な様子を見せるわけにはいかなかったが、将来オレの嫁にする布石として、周りにさりげなく周知させておくのは悪い案ではない。


久しぶりに見た・・とはいっても、クラマの格好では2日前にも会っていたが、セシリアの格好では1ヶ月ぶりだ。彼女は私が贈った青いシルクのドレスを身にまとっていた。とてもよく似合っている。


有能なるルーク補佐官が、今日は一日南棟を立ち入り禁止にしてくれた。誰にも邪魔をされないで彼女と一緒に居られる。やっと二人きりになれたというのに、彼女のオレを見る目が固い。どうやら緊張しているようだ。


セシリアが王城に淑女教育に来るのは、これで3回目になるが、前回の2回とも数日で終わったのと、前回のときはまだイワノフ町の襲撃の後始末で政務が溜まっていたため、二人きりで会話をしたのは合わせても、ほんの1時間程度だった。


今日は充分に二人きりの時間を取れたが、彼女はあまりアルフリード王子であるオレには、まだ慣れていないみたいだ。なんとかリュースイの姪の話をだして緊張をほぐそうとしたら、セシリアがユイカの話をしてきた。


オレはあの聖女を良く思ってはいない・・・。というか女全般を嫌悪しているといってもいいだろう。曖昧に返事を濁していると、こともあろうに、彼女はオレがああいう女が好みなのではないかと聞いてきた。


あまりにムカついたので、罰だといってキスをしてやった。本当に怒っていたわけではなかったが、ユーリスと違ってたまにしか彼女に会えないオレのことを、もっと気にして欲しかったからだ。


案の定、顔を赤くして照れている彼女は最高に可愛かった。


セシリアが訓練場に帰る日が来た。オレは朝からイライラしているというのに、彼女は晴れ晴れとした顔をしている。


そんなに早くユーリスに会いたいのかと、絶望的な気持ちになる。ルークが何とか言って慰めてくれたが、一度沈んだオレの心はそんなに簡単に浮上したりしない。


そんな時に宰相の姪のクリスティーナ嬢が、王城に到着したらしい。会ってみると驚いた事に、黒い髪に黒い眼で、背格好もセシリアにそっくりの娘だった。だけどセシリアとは全然違う。オレは特に彼女の姿かたちに惚れたわけではないからだ。


実際、少年のクラマの姿のときから惹かれていた。あの時は自分が男が好きなのだと思ってかなり思い悩んだ。


いくらクリスティーナ嬢がセシリアに似ていたとしても、関係ない。むしろ女であるというだけでオレにとっては嫌いな生き物だと認定されている。


ちらりと、セシリアがオレの様子を伺う気配があった。おそらくオレがクリスティーナ嬢を気に入ったのではないかと心配しているんだろう。


嫉妬された事に気分を良くしたオレは、セシリアにこっそりとオレは女は大嫌いだといってやった。

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