旅立ち
感想頂きましたレフェル様。ならびにこのお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。
スタスタ。
スタスタ。
ピタッ。
ピタッ。
クルッ。
サッ。
彼が歩けば、ボクが後を追いかけ、止まれば立ち止まり、振り返れば隠れる。まだ森の中なので隠れる場所には困らない。
そんな鬼ごっこがしばらく続いてから、彼はボクの方に視線を向ける。
「いつまで人の後をついて回るつもり?」
さっきもバレバレだったので余り驚かないで彼の前に出る。
「君に聞きたいんだ。7年前にボクの故郷を潰した魔剣士は誰なのか?」
ボクは彼が敵だとは思っていない。敵であるはずの聖騎士様の遺体を野晒しは可哀想という理由で埋葬した事もあるし、彼があんな格好をしているのか、その理由に気づいたからだ。偽装というのもあるけど、ボク達を巻き込まないようにするためだ。
聖騎士様に見つかったら100パーセント戦いになる。魔剣士がそこにいると思ったら普通は近寄らない。
そうやってボク達を遠ざけて聖騎士様との闘いに巻き込まないようにしている人物がボクの故郷を潰した人物とはどうしても思えないのだ。
でも、他の魔剣士達は別。彼についていけば敵に出会えるハズだし、もしかしたら彼が知っているかもしれない。
「7年前か。悪い。俺は知ら無いし、仮に知ってても言わないよ?」
「魔剣の被害者を出したくないから?」
ボクの問いに彼は首を縦に振る。
「それもあるけど、仲間を売れないよ。」「そっか、じゃ決まりだね。」
ボクの言葉に彼は首を傾げていた。
「君の側についていく事だよ。」
「な! 何でそうなるの!」
ボクの決定事項に何故か彼は酷く驚いていた。
「だって、ボクは敵を探して決着つけたい。でも、君は仲間を売りたくない。だったら、ついていくしかないじゃないか。」
「いやいや、待った! 連れてけないよ! 」
「あ。お金の事なら心配しないで。傭兵稼業で稼いでるし、山賊を狩って稼いでいるから君の分の宿や食費なんかも一応出せるし。」
「そういう問題じゃなくてね…。」
「じゃ、ノープロブレムだよね?」
ここで一気にたたみかけようとしたら彼はボクに背を向け駆け出した。
「待ってよ!!」
叫びながら彼を追いかける。だけど、なかなか距離が縮まらない。
「待ってよ!!」
「待てと言われて待つ奴いるか!」
ボクの言葉に律儀に返しながら逃げる彼。その追いかけっこがしばらく続いて、彼が虹色に輝く魔剣を抜いた。彼はその7色の魔剣を振り上げて、
「ハァッ!!!!」
なんとその1振りで大地を斬り裂いて深い崖を作り上げてしまった。
「ついてくるな。さっきも見た通り魔剣士達と聖騎士達の闘いは人知を超えた闘いになる。
なんの力も持た無いものが来たところでいい迷惑だ。魔剣士の事は忘れて元の生活に戻れ。故郷の人達も君が末永く幸せである事を祈っているだろう。」
ボクは彼の言葉に背を向けて、
「ふざけるな!
ボクは敵を討つって決めたんだ! 今更止められるか!」
助走をつけて跳ぶ。それでも、距離が足りず向こう側に届く僅か手前で崖に落下しそうになったところを彼が掴み引き上げる。
「まったく。無茶をする。俺が引き上げなかった命が無かったぞ?」
「でも、引き上げてくれたよね?」
ボクの言葉に彼は深々と溜め息を吐いた。
「どうせ来るなと言ってもついて来る気だろ?」
「うん。そうだよ。」
迷いなく答えるボクに彼は深々と溜め息を吐いた。
「なら、一緒にいて無茶させないようにするしかないな。」
彼の言葉にボクは笑みを浮かべる。
「当然! 君はボクの敵をしる為の道標なんだ! 絶対に放さないからね!」
そう言いながら、彼に駆け寄ろうとした所でマントの留め具が外れボクは再び、おっぱいを晒してしまう羽目になった。耳まで真っ赤になったボクがする事は、
「キャアア!!」
悲鳴を上げながら全力ビンタする事だった。