魔剣と聖剣の争い
このお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。
森の中に金属の衝突が響き渡る。1つは神によって生み出され神によって祝福された神聖なる聖剣。もう1つは堕天使が生み出し邪な剣たる魔剣。伝説級の2つの武器がぶつかりあっている。だけど、コレが本当に剣同士の衝突なわけなの? 聖剣か魔剣が振るわれる度に地面が切り裂かれ、大木が薙はらわれる。人知を超えた戦いに身震いする。
「コレが魔剣と聖剣の争い。」
まるで台風と暴風がぶつかり合っているみたいだ。
その人知を超えた2人の争いを征したのは魔剣士だった。上段から振り下ろされる1撃を半歩横にずれてかわし、がら空きの体に1振りを聖騎士様目掛けて真横に振り抜いた。
上半身と下半身と両腕が切断面から、ずれて崩れ落ちる。そして、聖騎士様の手から聖剣が抜け落ちる。
彼はその聖剣に向けて魔剣を振り下ろそうとしたところで、7色の輝きと共に聖剣をその場を飛び去った。
「逃げられたか…。」
忌々しそうに呟いてから聖騎士様に視線を向けた。
「逃げられたって?」
「聖剣は持ち主が死ぬと、次の主を求め移動す…る…。」
言いながらボクを見ようとした彼は何故か硬直していた。下を見てその理由を理解した。最初の聖剣の1撃を彼が防いでくれたけど、その余波でボクの衣服まで吹き飛ばされ上半身裸になっていた。1メイル(約1メートル)程の大きなおっぱいまでさらけ出されていた。どうも寒いなと思ったら、それが原因だったのか。ってそうじゃない!!
「キャァァ!!!!」
ボクはそのお山を片手で隠し、空いた手で彼の顔面にグーで殴りつけるのだった。
「…ごめんなさい。」
彼の予備のマントで上半身を隠しながら謝罪する。
「いや、ワザとじゃないのに、その、見てすまなかった。」
彼はボクに頭を下げてから懐から針と糸を取り出した。何する気だろう? 首を傾げたら、聖騎士様の遺体を綺麗に縫い合わせて埋葬する。
「なんでわざわざそんな事を? 聖騎士様は君達にとって敵でしょ?」
「聖騎士も戦いたくて戦ったわけでも、死にたくて殺されたわけでもないのに、殺されて晒し者にされるのは可哀想だ。」
そう答えて魔剣に視線を向ける。
「魔剣ルシファーよ。戻れ。」
彼がそう命じると魔剣から剥がれ落ちた金属が巻き戻るように戻り、錆び付いた大剣になった。あの姿は、魔剣の偽装でもあると同時に魔剣の力を封じる鞘の役割もあったのか。その証拠にさっきまで魔剣から感じる禍々しいオーラが偽装した瞬間から感じられない。
「俺はもう行くけど、君はこの事は忘れた方がいいよ?」
彼はそう言い放ち、その場を去る。
SIDE 教皇
「…教皇。聖剣レヴァティンの主が何者に討ち取られた模様。」
教皇の間に重い沈黙が訪れる。
「知っている。それで、レヴァティンの新しい主は?」
「既に決まってここに来てます。」
その答えに満足そうに頷いた。
「よろしい。連れてきなさい。」
私の命令に補佐役が退室してしばらくして補佐役と共に1人の男が入室する。
「はじめまして。教皇。私はレヴァティンの新しい主に選ばれた者です。」
その男は私を見るなり頭をたれる。
「期待してます。前任者の分も頑張ってください。」
「お任せください。私は前任者のような無様な失態はおかしません。」
その頼もしい答えに笑みを浮かべる。