戦いの序幕
「陛下。大聖堂の建設状況なのですが、後8年程かかります。」
とある国のその玉座の間にその報告が響いた。
「予定よりも遅れている。完成を急がせろ。」
「しかし、陛下。先日の崩落事故で作業員がなくなっております。この状況で規定の期日内に完成させるのは無理だと思います。」
「私が命じる。建設は予定通りに進めよ。」
神話の時代より受け継がれる7つの聖剣の1つエクスカリバーを継承する若き王はその言葉を口にする。
「し、しかし、先程申し上げた通り、人手不足で建設まで時間がかかるのは仕方ないかと。」
「ならぬ! カデドラルを規定の日時までに完成させよ! これは私ではなく、教皇からの指示である!」
王はそう声を上げながら立ち上がる。その右手には1振りの長大な剣が握られていた。持ち主の身長よりも長く、そして幅広い刀身は虹色に輝いている。この剣こそが聖剣エクスカリバー。神により作られた聖剣の1振りである。男は聖剣の出現に恐怖した。聖剣から発する神々しいまでのオーラ。それに触れるだけで弱い不死の魔物は存在そのものが消滅しかねないほどに強力なのだ。
そして、彼は1度だけ聖剣が振るわれたのを目の当たりにしている。1振り。たったの1振りだけで何百もの侵略者達が無惨な屍の山へと変えたのだ。その光景を見て恐怖するなと言うのは難しいだろう。
「とはいえ、」
そう言って王は玉座に座り直した。その右手にあったはずの聖剣も姿がない。その事に男は安堵していた。
「貴様が言った通り人手不足では仕方なかろう。
おい。国中から労働者を集めてこい。」
王は大臣に命じてから男を下がらせる。
また、ある国では、
4人の男達は闇夜を見上げていた。彼等がいる場所は星詠みの丘。教皇が星の動きを視て、未来を予見する神聖なる場所。故にその場所は教皇とその補佐しか来ることが許されず、訪れるなら問答無用で死罪が適用される。
「…教皇。やはり、赫き星の輝きが年々増してる模様。」
「そして、あの星は闘いを象徴している。」
「つまりは聖戦が起きるのも近い。」
「その旨を聖騎士達に伝えよ。」
その指示を出した時、戦いを告げる赫き星が一瞬強く瞬いた。
また、魔の者達が住まう大地、魔界の地にて、背中に夜の闇よりも暗き12翼の堕天使が目の前の7振りの武器を見ていた。
「おお。」
堕天使ルシファーは目の前の光景に涙した。自身がある目的の為だけに作り上げた武器。それが眩い光を放っているのだ。真の武器は自身が認めたものしか仕えない。その武器達が光輝く事は1つしかない。
「目覚めたのか。7人の魔剣士達が。
共に戦い、神達を退かせよう。」
その呟きは魔界の地に溶け消えた。