疑念
感想頂きましたレフェル様。ならびにこのお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。
セレストの街まで歩いている間、ボクはトモエさんを見ていた。重心をぶらさない歩き方といい、常に周囲への警戒を怠らない態度といい只者じゃないと思う。
「? どうしたの? リス?」
「いえ。トモエさんってすごく強そうでわざわざこんなところまで来なくても故郷でも引く手あまただったんじゃないかなって思ってただけですよ。」
ボクの言葉にトモエさんは困ったように頬を掻いてから答えた。
「そうだね。帝様から御庭番の頭にならないかと打診されたこともあったね。」
トモエさんの話だとミカドはジャポンの王様をさす敬称で、オニワバンというのは、暗殺や破壊工作、情報収集などの行動する工作員の事らしい。つまり、トモエさんは国王直々の申し出を蹴ってまでこちらに来たわけだ。わざわざこんなところまで来る理由ってなんだろう? まさか、聖騎士様? だとしたらトモエさんの目的はボクを騙してスターチスやマチルダさんを倒す事かな? だとしたら、気をつけないと。そう思っていたら、獣のうめき声が聞こえ、オーガが襲いかかる。
「やれやれ、今夜はオーガの肉が晩御飯かな?」
トモエさんの言葉に右手からパンと音がなった瞬間、オーガの腰から線が走り上下に別れる。抜刀したトモエさんの剣が速すぎて斬りつけた瞬間が見えなかったんだ。
「さて、私はオーガを解体するから待ってて。」
そう言いながら、トモエさんは手際良くオーガを解体していく。ボクはトモエさんの一振りを見てどうやったら勝てるかと想像する。
・正面からぶつかる。まず無理。鞘から剣を抜いて斬りつけ鞘に納める。この動作が見えなかったんだ。正面から堂々と闘っても倒されるのがオチ。
・背後からブスリと刺す。多分、難しい。移動中も決して警戒を怠る事がない人物にどうやったらスキをつけると?
・毒物を食べさせる? 無理。ボクは毒物を持ってないし、仮にどこかから調達してきたとしてもそれを食べてくれるかはわからないし。
・スターチスと合流後聖騎士様か確認して3対1で戦う。これしかないかな?いくら強くても攻撃と防御を同時には出来ない。だからこそ攻撃する瞬間が最大のチャンスなわけだし。となると、やっぱりスターチスやマチルダさんと合流するのを待つしかないかな?
そう思いながら、焼けたオーガ肉を頬張った。以外に柔らかくて美味しかった。




