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【シリーズ】 13代目の破壊神

不吉な夢

作者: 千路文也

 私の友人にそれはそれは屈強な戦士がいた。彼は襲いかかる敵を火の粉のように薙ぎ払い、瞬く間にして滅殺する剣の達人だ。長らく彼の右に出る者はいないと語られていたが、ついにその伝説も終焉を迎えてしまった。


 愛読してる新聞に彼の記事が載っていた。私はてっきりまた彼が獣でも倒して手柄を立てたのかと思った。しかし、そこに書かれているのは彼が死んだという信じられない記事だった。



 そこには『パラパラと雪が降る夜道を歩いている途中、急に何者かに背後から襲われて命を落とした』と書かれている。彼ほどの腕があれば後ろに立つ者の気配は察知できるはず、それなのにしてやられたという事は、彼を殺したのは魔法使いという事になる。


 私も同じく剣士として生きていたので魔法については詳しくしらないが、気配を消す魔法が実在すると、何かの書物で見たような覚えがあった。


 私はしばらくの間、友人の死を信じられなかった。現実から目を背き、墓参りにすら行ったことが無い。受け止めるのが怖かった。だが、今の私はそれ以上に友人に顔も見せられないのかという己の弱さに呆れている。


 これじゃいけない、そう思った私は意を決して彼の墓に訪れた。今日はあの日の晩のように雪が降り積もっていて、何故だか懐かしく感じる。月日で言えばまだ10日も経っていないというのに。


 そして彼の墓の近くまで進んで行くと、彼の墓に奇妙な格好をした女がいた。マントとフードで姿を隠して、なにやら両手を動かしている。何をやっているのかと目をこらしてよーく見てみると、なんと彼の墓が掘り返されていた。遺骨を取り出して、口を鯉のようにパクパクと動かしている。どうやら呪文を唱えているらしい。


「私の友人に何をするか」


 そう思い、剣を腰から抜こうとした時にはもう遅かった。遺骨は見る見る内に姿を変えて、肉体が形成されていく。全てが終わった頃には、それはまさしく私の友人が全裸で仁王立ちしていた。


「死者を蘇らしたのか」


 そう呟くと、彼らが私の存在に気が付いたようで一斉に振り返ってきた。そして私の友人がドシンドシンと偉丈夫の体を揺らして近づいてくる。


 唖然としている私を嘲笑うかのように、彼は私から剣を奪い取ると、次の瞬間にはリンゴを真っ二つにした時の音がした。紛れもなくリンゴとは私の事だ。


 

 そして、私はベッドの上で目が覚めた。



 全てが夢だと悟るにはそう遅くなかった。ホッと胸を撫で下ろした私はベッドから降りて台所へ向かった。喉がカラカラで水を飲もうと思ったのだ。


 水を手に取り、グビグビと音を鳴らして喉に叩き込む。これで安心して寝れる。テーブルに視線を合わし、真っ二つに割れたリンゴを見るまで、私は確実にそう思っていた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] これって続き物ですよねっ! こういう話好きです。
2014/10/13 17:40 退会済み
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