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ダンジョンリフォーマー  作者: アスムン
箱とダンジョン
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無職からのダンジョンリフォーマー

第一部無職からのリフォーマー

 昔々、この世界を襲った未曾有の危機があった。それを救ったのが勇者といわれている。消滅しかけたこの世界を自らの命を使って救ったのがその勇者だ。

「っていう立派な方もいるのよ。あんたもさっさと働きにでな!」

「そんな子どもに読ませるような昔話されても困るわー」

 家のベットでゆったりしていると母さんがいきなり来て、何時もの昔話を聞かされる。この安全安心なご時世に勇者が居たとか信じる奴の方が少ないんだけどな。

「うちはその勇者の仲間だったっていう家系なのよ! それなのにあんたは一日中食っちゃねくっちゃね、家畜以下だよ!」

「仕方ないだろ。試験全部落ちたんだからさ。一応仕事は探してるだろ」

 学校を卒業したものの、就職ができず無職だ。親は宿屋をしていてそこを継げといわれているが、親と一緒に働きたくないと就職口を探している。まぁうまくいってないんだけどさ。

「ユウキ! あたしはねぇ。勇者様に申し訳が……」

 母さんがこうなると長い。俺の家系、グレイス家は勇者の仲間だった一人の家系らしい。しかし、その勇者が本当に居たのかも怪しい今では、そんな称号何の役にも立たない。というより、勇者の昔話を知っている人の方が少ない状態だ。

「母さん、わかった。探すから」

 そういって母さんを制止して立ち上がろうとした時、コンコンと家のドアをノックする音が聞こえた。

「お客さんかしら? 話は後で続けるわよ!」

 逃げれねぇのか、落胆する俺を背に母さんは家の入り口に向かっていく。

「はぁ……」

 やっぱ継いだ方がいいのかなぁ……でもやっぱりちゃんと別のとこで働きたいっていう考えも俺にはあるし……

「ユウキ・グレイスだな」

「へ?」

 考えことをしたままベッドで寝ていたから気付かなかったが、いきなり俺に話しかけて来たのは、城の兵士だった。

「そうですけど……」

「王がお前を呼んでいる。家宝の鍵をもって出頭しろ。こなかったらわかってるだろうな?」

「は、はい……」

 ものすごい、眼光で睨んだ兵士はそれだけいうと俺に背を向けさっていった。

「あんた、なにしたの?」

「何もしてないよ……」

 兵士が来るなんてただ事ではない。だけど、俺の記憶には一切心当たりはなかった。どうなっているんだ? 疑問と困惑が頭を駆け巡る。

「取りあえずすぐいきな! はいこれ!」

「これは?」

 母さんが差し出したのは、鍵。古めかしい金色をした鍵だった。

「たぶんこれが、あの兵士の言っていた家宝の鍵よ」

「これが……俺初めて知ったよ」

「そりゃね、私が何時も持ってたから」

「そうなんだ……」

 なんとなくその鍵が凄く大事なもののように見えて、俺は強く握り締めた。

「それじゃ母さん」

「いってきなさい」

 母さんも何か心配そうに俺を見送ってくれた。今この現状は俺にとって未知な事だからだ。だけど、行かなければ死ぬのなら城に行くしか選択はなかった。

「だけどなぁ……」

 城門前について思う。これ一般人は勝手に入ってはだめだろ。取りあえず受付に聞く。

「あのぉ、王様に呼ばれてきたユウキ・グレイスですけど」

「聞いている、何かそれを証明するものはないか」

「証明……」

 学校の卒業証書とかああいうのは持ってないな。どうする? 大体自分を証明するものって普通に一般人は持ってないだろ。

「証明するものがなければ通せない」

「いや、まって! ええーと、この鍵でどうだ!?」

 これしか今持っているものはないし、だめもとで兵士に鍵を見せる。

「そ、それは! グレイス家の家宝の鍵! 失礼しました! 通ってください」

「は、はぁ……」

 兵士が突然俺に敬語で対応してきた事に驚きつつも、初めて場内に入る。王様への謁見の間の前までは、その兵士が案内してくれた。

「では、私はこれで」

「ありがとうございます」

 お礼を言う俺に会釈だけをして、兵士は去って行った。

「さてと……」

 ここからが本番だ。一般人の俺が王様の謁見の間へと進むのだ。少しの粗相で首をはねられてしまうかも知れないという恐怖。でも、このまま帰っても殺される恐怖。デッドオアデッドか、究極の選択だな。

「だけど、少しでも生き残れるなら……いくしかない!」

 覚悟を決めて、謁見の間への扉に手をかけてゆっくり開いていく、そこに広がる謁見の間は広く、豪華で、およそ俺の様な一般時では見る事は不可能な場所だった。

「お主がユウキ・グレイスか」

「はい」

 王様だよ。顔は知っていたが、まさか本当にみる事になるとは思いもしなかった。俺の緊張がとけないまま、王様は続けた。

「勇者の昔話は聞いているか?」

「へ? はい、母から聞きました」

 あんな、子どもを諭す為にあるような昔話がどうしたのだろうか?

「あれは実話なのだ」

「はい?」

「驚くのも無理もない。あの話は実話で勇者は実在したのだ」

「はぁ……」

 これは悪い冗談か? あの昔話が実話っていうのを一国の王が言っている。あれか壮大ないたずらなのか

「唯一違うのは勇者はあの時の災厄を倒したのではない、封じたのだ」

「封じた……」

 昔話の終わりはこうだった。勇者は世界を滅ぼす大きな災厄を前に命を燃やし尽くし、一緒に消滅していった。そして世界は救われた。

「そう、倒す事はかなわなかった勇者は、それを封じる事にした。自らの命を使って」

「はぁ……もしそれが本当だしたら、何故俺にそれを?」

「グレイス家は、勇者の仲間の末裔だ」

「それも母から聞いてますが」

「単刀直入に言うと、その災厄が復活する予兆見られている」

「え!?」

 つまり世界が滅ぶっていうことか? いきなりすぎるよそんな話し……

「あれを持ってこい」

「は!」

 王様が兵士に命令すると兵士は大急ぎで、謁見の間に宝箱を持ってきた。

「これは、しらす箱。その名の通り災厄の復活をしらす箱だ」

 そういわれた箱はただの宝箱のように見えた。取りあえず、触ってみようとした瞬間

「気易く触らないでよね!」

「うわ! 喋った!」

 いきなり宝箱の蓋が開閉し、喋り出したのだ。

「しらす箱が意思を持ち。喋り出す時災厄の復活は近いという事になるらしい」

「そういう事、私は勇者が作った。警報装置みたいなものね」

「つまり、俺たち人類はもう終わりなんですか?」

「災厄は闇を糧とする、光の存在が強ければ力は弱まり復活はしないだろう」

「防ぐ方法があると?」

「これから一年後に勇者が現れる。そして、魔王と戦うために旅に出るのだ」

「そう。今までも災厄が復活する前に勇者が魔王を倒す旅にでていたのよ」

「はぁ……」

 そういわれても、勇者の伝説が本当だっていうのも信じがたいのに、今まで何人も勇者が居たなんて。

「勇者は光の存在。勇者の力が強ければ災厄は封印される」

「つまり、その勇者が強くなればいいんですね」

「その為におぬしにはダンジョンを造ってほしい」

「ダンジョン?」

「ようは、勇者が成長する為の迷宮だ」

「なんでそれを俺が?」

「グレイス家は代々それをしてきたのだ。お前には悪いが今回試験に全て落ちたのはこちらから圧力をかけていたからだ」

「俺をダンジョン作成に向かわすためにですか?」

「そうだ」

 なんていうことだ。俺の無職の理由が国を挙げて計画だったなんて……

「行かないと言ったら、どうなります?」

「この世界を滅びに向かわすという事で死罪だな」

「拒否権はないってことですか……」

 失敗したら。世界が滅んで死ぬ。このまま嫌だからって拒否ったら罪をかぶされて死ぬ。生き残る道は成功させるしかないってことか。

「わかりました。やりましょう」

「ありがとう、このしらす箱をもっていくがいい。ダンジョン造りの助けになるだろう」

「あんたは、いきなり体に触れようとしてくる変態だけど仕方ないわ助けてあげる」 

 なんかいきなり好戦的だなこの箱は。

「はいはい。よろしく」

「何よその、やる気の無い感じ!」

「箱なんだから体とかないだろ」

「箱自体が体よ!」

「わかったよ……」

 このままだと、ただの水かけ論になると踏んだ俺は、早めに会話を切り上げ、しらす箱を背負う。

「そうやって背負ってけばいいのよ」

「重い……」

「重くないわよ!」

 変に女性的なんだよなぁこの箱。

「では頼むぞ、ユウキよ」

「はいわかりました。王様」

 こうして、俺と箱のダンジョン造りの旅が始まったのだった。とはいうものの、まずは親に事情を説明しないと、俺はしらす箱を背負ったまま家に帰り。母さんに全てを話した。

「そういうこと……」

「だから母さん俺旅に出るよ」

「わかりました。グレイス家に指名なら仕方ないわね」

「うん」

「しらすさんも、家の子をよろしくお願いします」

「っへ! しらすって私の事?」

「お前以外誰が居るんだよ?」

「へー……しらすか、私の名前しらすかぁ……」

 何だか呆けたような声出してどうしたんだ? まぁこいつは基本喋るだけの箱だからなぁ。あんまり気にしなくてもいいか。

「それじゃ母さん行ってくる」

「わかったわ。いってらっしゃい」

 見送る母を背に俺は家を後にして、町を出て門を出て……

「どこにいけばいいんだ……」

 よく考えたらここから、何も聞いていない。使命と稼働とか格好いい事言ったけどなにを始めていいのか一切わかんないじゃないか!

「あんた。馬鹿ね」

「なんだと!」

「王から何も聞かず、親にもグレイスの事何も聞かずそのまま準備もなしに旅に出るなんて馬鹿以外なにものでもないでしょ?」

「っぐ……」

 言い返せない……俺が持ってるのはある程度の金と、今着ている服そしてしらすだけだ。

「だったら、しらすお前はどこにいけばいいのかわかってるのかよ!」

「しらす……私のことよね?」

「あ、あぁ」

「しらす……いいわぁ……」

「お……おい、どうした?」

「っは!」

 俺が尋ねると今まで呆けていたしらすが、突然気付いたような声をだす。正直表情もなにもないから、声だけで判断するしかないのだが。

「いやー、初めて名前もらったから嬉しくて」

「そうなのか?」

「そうよ。あんたもずっと名前無かったら嫌でしょ?」

「んー」

 名前が無いって事があまり、想像がつかないな……

「っま、あんた達人間にはわからないわよね」

「まぁ名前が無い人何て普通いないからなぁ」

「はぁ。あんたに言ったあたしが馬鹿だったわ。繊細さの欠片もないあんたにはこの気持ちはわからないわね」

「だからいちいち苛立たせないでほしいんだが」

「事実を言ってるだけでしょ?」

 こいつは……どうせ殴っても箱だから意味ないし。俺の苛立つはただただ募るのみだよまったく。

「それで、どこいくかってことだったわよね」

「あぁ、うん。そうだな」

「そう遠くないわよ。コムルの村って知ってる?」

「あぁ、王都から歩いても一日かからないところだな」

「あそこで勇者が選ばれるわよ」

「わかるのか!」

「まぁ、そういう為に作られたからね私」

 そういえば言っていた。勇者に作られたって、災厄が復活する為に警報装置だとも言っていた。

「そこに向かえばいいんだな」

「当面はそこね。村に着いてから説明するわ」

「わかった」

 こうして俺はコムル村に向かう事にした。


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