【プロローグ】
この世界は、どこか壊れている。
それが露呈したのは、いつの頃だったか。
時空を割ってこの世界にやってくる侵略者・インベーダー。
彼らの目的は地球の植民地化である。
彼らは自身の武器をカードに封じ、それらを解放することで地球を制圧しようとした。
これに対し人類側はあらゆる最新兵器による抵抗を試みたが、全て無意味な結果となった。
通常兵器ではインベーダーに傷1つとして与えることはできなかったのだ。
しかし、神は決して人を見捨てなかった。
一人の科学者が、インベーダーが使うカードを入手した。
それを研究し、科学者は六種類のカードを創り出すことに成功した。
1つは、インベーダーを倒すための武器――ウェポンカード。
1つは、自分の身を守る鎧――アームドカード。
1つは、杖属性の武器によって発動される魔法の力――スペルカード。
1つは、捨て札となることで効力を発揮する引き金――ブレイクトリガー。
1つは、逆転の可能性を秘めた大いなる希望――クラッシュカード。
そして1つは、人間をインベーダーと同じ存在に書き換える、使用者の分身――アバターカード。
アバターカードを使う人間は“アバターユーザー”と呼ばれ、インベーダーと戦い、この世界を守る義務を課せられる。
科学者は言った。
これはゲームだ、と。
私はこのゲームを『アバターズ・レギオン』と名付ける、と。
このアバターズ・レギオンの勝者こそが、世界の主導権を握る、と。
◆◆◆◆◆
【六道ラグナさまへ】
【この度、度重なる厳正な審査の結果、貴殿はアバターユーザーとしての十分な適性があることが判明しましたので、ここに通知します。適性者である貴殿にはアバターユーザーとして戦うことが義務付けられる。そこに拒否権は一切存在しない。インベーダーと戦い、人類の勝利の礎となるのだ。我々の未来のために】
今日、私の元に赤紙が届いた。
家族は泣いた。決して嬉し泣きではない。
インベーダーとの戦いは生半可なモノじゃない。常に死と隣合わせだ。
命の保障はできない。
つまり、私はいつだって死ねる存在になった、ということだ。
私は、通知書と共に届けられた小箱を開ける。
中に入れられていたのはブレスレットとアバターカード。
アバターカードには、まだアバターが表示されていない。
これから軍事機関に向かい、そこで私のアバターが決定するんだ。
そして、アバターカードをブレスレットに装填することで、私の肉体はアバターに変換され、インベーダーと戦う兵器となる。
ブレスレットには、既に50枚のデッキが内部に収納されている。ただし、全て白紙。
このデッキのカードも、私のアバターが決定した瞬間に、初めてカードとして誕生する。
私はブレスレットを左手首に填める。
もう、後戻りはできない。
私は戦わなければならない。
人類の勝利のために。
たとえ、私自身が、この戦いに何の意義も見出せなかったとしても、だ。
それでも、戦わなきゃいけないんだ。