桜花編 2
war timeには二種類のサーバーが存在する。
一つはチームに所属している生徒が精神導入するもの、もう一つはチームに所属していない生徒用のものだ。
今俺がいるのは無所属者用だ。
このサーバーでは生徒の中から無作為に5人選びチームを作られる。そして作られたチームからさらに無作為に2チーム選ばれ戦闘が始まる、というような仕組みになっている。
そしてwar timeには作戦会議の時間が設けられる。
前者のサーバーにはどちらかのチームが勝利に王手をかけたときに、後者ではそれに加え最初の1R目終了時に。
無機質な黒の中、視界右下に映る『NowLoading』の文字。
そんな暗黒が一瞬にして切り替わり、煤けた白色の壁が目に映る。
どうやら1R目があっさり取られ会議室に移ったようだ。
ゆっくりと回りを見回すと今回のチームメイト達がそれぞれ重い表情をして押し黙っていた。
そんな空気のなか全身タイツが沈黙を破った。
「み、みなさん!こうしていても時間がもったいないですし何か話しましょう!えと、自己紹介!自己紹介しましょう!僕は『クロス』って言います!武装はこの銃と刀です!」
黒タイツ改めクロスがそう声を出しながらどこからか奇妙な形状の銃と刀の柄を取り出し机の上に置いた。
その武装に大男が興味を示す。
「…ただの銃と刀ではないのだろう?」
その問いを聞きクロスははたから見てもすごく嬉しそうに口を開いた。
「この銃はですね、撃ったあとにタイムラグが発生するかわりに着弾点が爆発するんですっ!そしてこっちの刀は刀身が伸縮自在なんですよ!」
そうこれまでとは打って変わって饒舌に解説していった。
その様子に大男が若干戸惑いながら「ほぅ…」と唸った。
「では、次は我が名乗ろう。我は『オーガ』という。戦闘スタイルは見ての通り超近接格闘家だ」
と、ごっつい声で自己紹介をするオーガ。
しかしこの場の全員がある疑問を持っていた。
そしてソレをショートヘアが代弁する。
「アンタってセーラー服着てるけどそれには理由があんの?」
至極真っ当な疑問にオーガが答える。
「我は女だからだ」
「「「は?」」」
全員の声がハモった。
それほどまでに今の発言は驚きを隠せないものだった。
「よく勘違いされる。慣れたとはいえ多少傷つくがな」
「えっと…なんか、ごめんなさい」
「大丈夫だ、気にしていない」
その言葉にホッとしたように胸をなでおろすショートヘア。
どや顔で反撃を受け負けてしまい、それを引きずっていたのか暗い表情をしていた彼女は今のやりとりで暗い表情が払拭され、元の明るい顔に戻っていた。
「次は私ね。私は『エレクトロ』、大体の人は略して『エレ』って呼ぶわ。攻撃方法は電撃よ、補足しとくと結構細かく操作できるわ」
そう言うとエレは自らの周囲に青白いスパークを発生させた。
「電気…ね。最初のアレはそれを集束させて撃ちだしたものなのか?」
気になって聞いてみると予想外の返事が返ってきた。
「んーどうなんだろう?私自身でもよくわかんないわ」
なんてアバウトな攻撃法なのだろう。
「とある電撃使いの技を見て見様見真似でやってみただけだから」
そう言って恥ずかしそうにはにかむ。
そこでこれまで一言もしゃべらなかった金ピカが重々しく口を開いた。
「我は『ギル』。武装は『王の財宝』だ。この武装はある条件に引っ掛かった生徒の武装をその場に召喚し自らの武装として使用することができるものだ。」
淡々と暗い表情で自己紹介を終わらせたギルにクロスが食い付いた。
「そ、それって簡単に言えば何種類もの武装を持ってるってことですよね!?」
「ああ、そうだ」
面倒くさそうにギルが答えると、
「すごいじゃないですか!それにギルさんはその武装をこれまで使いこなしてきたんですよね!?」
と身を乗り出しながら質問した。
「まぁ…そういうことになるな…」
その答えを聞いた瞬間、クロスが目を輝かせながらギルを称賛した。
「ギルさんがいれば百人力ですよ!ぜぇったいこの勝負勝てますよ!」
クロスに絶賛され、ギルはまんざらでもないのか、
「ふ、ふふふ。そうだ!我がいれば敵を蹴散らすことなど容易いわ!先程は慢心しておっただけだ!」
と、ついさっきまでの海底に重り付きで沈められているような暗い表情はどこにいったのか。高笑いをしながら宣言した。
最後になってしまったがまあ一応俺も自己紹介をしておく。
「あーっと、俺は『ヤシャ』。武装はこのヨーヨーみたいなの。あとスケボー型の騎乗兵装を使ってる」
しかしクロスとギルは二人して騒ぎ合っているので真面目に聞いてくれたのは残りのオーガとエレだけだった。
まぁ目立った装備でもないしいっか。
そこで視界上部に『残り時間:30秒』と表示される。
以外と時間がかかってしまったらしい。肝心の作戦についてはノータッチになってしまった。
「えっと作戦については話せませんでしたけどどうしましょう?」
クロスが焦ったように他の面々に問いかける。
「仕方ない…その場に合わせ臨機応変に立ち回るしかないだろう」
とオーガが意見すると、エレが次いで口を開いた。
「ケースバイケースってことね、よしみんな次は勝つわよっ」
その言葉に全員が力強く頷くと同時に視界が暗転する。
さてと、次は勝たせてもらいましょうかね!