1/3
プロローグ -戦死者の記憶-
<プロローグ>
――――いつのまに眼を開けていたのだろう?
視界に映る木々をぼんやりと眺める
――――俺は寝っ転がってるのか?
自分の身体の感覚がほとんどない
後頭部、背中、二の腕、ふくらはぎが
地面の冷たさを微かに感じさせる程度
――――これは、声?
鼓膜に響くいろいろな音に気がついたのは
大分時間が経ってからだ
罵声、金属のぶつかり合う音、銃声、悲鳴
何人もの声が耳に届く
――――とりあえず、立たないと
そう思って力を入れても身体は動かない
何度か身体を動かそうとしているうちに気づいてしまった
鼻につく錆のような独特な臭い
――――血が、流れてるのか?
そう思うと急に身体が重く感じた
それに、少し寒い
そして思い出してしまった
自分の腹部が切り裂かれたこと
自分の体中に鉛の粒が入っていることに