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第七章 憑依型の強みと個体差(後編)


■観客タイプでの強み

 ここまで、憑依型の中でも私が分類した役者タイプに特化した内容ばかりでしたので、ここでは番外編として、観客タイプでの技術的なことに触れたいと思います。


 とは言っても、役者タイプの私が観客タイプのことを語れるのか?と疑問に思うでしょうが、実は観客タイプの憑依型で執筆することもあります。要は、両方いけるクチです。


 まず、観客タイプの特性のおさらいですが、三人称視点でその場の空気を共有しながら、全体を見渡すことができる。俯瞰型と呼ぶ人もいるのが憑依型観客タイプになるかと思います。

 具体的には、役者タイプがキャラの内面の認知を体験するのに対して、観客タイプはキャラたちの外面の情報から心理を描写する。そして場面全体を観察できるので、配置やシーン全体を自然に展開させやすい。

 プロット設計型も俯瞰した視点を多用しますが、あれは作者のプロット都合で展開させるのに対して、観客タイプはキャラたちが勝手に動いて展開させているのを、口出しせずに観察していることになります。


 ここで、私が両方いけるクチの話に戻りますが、どうして使い分けるのかと言いますと、役者タイプでキャラの内面から描写すると、キャラの熱量がそのまま表れます。逆に観客タイプだと、そういった熱量も客観視したものになるので、シーンとしての温度を抑えることが出来ます。もっと具体的に言うと、重すぎるシーンを一定の温度に調整しやすいのです。

 例えば、殺戮のシーン。凄惨な状況を淡々と描写することで、重くなりすぎないように調整可能という事です。

 これが、憑依型観客タイプでの強みだと考えています。


 ※観客タイプで書いた実例がありますので、興味がありましたらご参照ください。

 https://ncode.syosetu.com/n6895lr/4/



■観客タイプでの工夫

 観客タイプで執筆する際、私がやっているのは、三人称視点の観察者に憑依すること。

 登場人物ではなく、物語の外の存在に憑依していることになります。もう少し具体的に述べると、よくテレビドラマ(NHKの朝ドラ)などでナレーションが入りますが、あのナレーションの人に憑依しているというのが近い感覚です。


 そして、兎に角、観察者としての感情を持たない。場面で何が起きていようと、見えている物を冷静に描写する。当然、その情報は取捨選択しながら描写していきますが、大盛り上がりの展開だろうと、ショッキングな展開だろうと、感情を乗せずに淡々と描写する。

 なぜ感情を殺して描写するかと言いますと、現実の営みで考えた時、観察者は存在しない存在です。要はリアリティを重視した場合、観察者の感情はノイズになります。


 そしてもう1つ押さえておきたいのが、現実で他人の感情や心理を読み取る時って、表情や言葉、仕草などから感情を推察します。観客タイプの描写でも、それと同じことをするだけで充分なんです。


 ここで、毎度おなじみの実例。


 観客タイプでの心理描写

・「・・・」

 Aは言葉を詰まらせ、Bから顔を背けた。

 これで、AがBに対して気まずい心理状態だと解かるかと思います。


 ちなみにプロット設計型だと

・「僕Aは、Bに対して気まずい思いをしている。」

 と、読者が読解する余地(自由な解釈)をなくすように説明する。何度も述べてきましたが、これは心理描写ではなく心理説明になります。


 もう少しだけ掘り下げると、上の実例では「・・・」と無言の描写を入れたことで、気まずさを演出しています。

 顔を背けた仕草だけの描写だと、気まずいのか呆れているのか悲しいのか分かりづらくなります。逆にセリフだけでも同じく分かりづらくなります。セリフと仕草を組み合わせることで、簡潔な文章でも心理描写が出来ているのです。

 そして、この方法で、多種多様な描写が可能になります。


・「ぷっ」

 Aは噴き出し、Bから顔を背けた。


・「・・・」Zzz

 Aは呼びかけられても返事がない。


・「・・・」キッ

 Aは無言のままBを睨みつけた。


 これらはどれも感情の説明はしていません。でも、笑っていることも、寝ていることも、怒っていることも描写できており、読んだだけで、その場面を現実に置き換えて簡単にイメージできますよね。

 セリフと仕草を組み合わせただけで、なにも難しいことなんてしていません。描写することも読解することも簡単なんです。

 つまり、説明に頼ること自体、読者の読解を信じていない行為であり、作家としての未熟さを露呈する愚行だと思います。


 




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