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昨日の夜から空間魔術の作成をしているがなかなか一筋縄ではいかない。
すぐにできるとは思っていないのでゆっくりと考えていく。幸いなことに10階層ごとに転移できる宝玉があるらしいから、それのために今日はストーンゴーレムを倒しに行く。
「入場お願いします。」
「神谷賢さんですね。頑張ってください。」
魔力視を用いて、スライムとは戦わずに通り過ぎていく。ストーンゴーレムまでの地図はもうできているからサクサク進む。ゴブリンとも戦いながら調整をしていく。対ストーンゴーレムのために、魔術は風属性のを多く使っていく。風弾、風槍、風刃、どれも使い勝手がいい。風弾は昨日も使っていたが少し改良して貫通力よりも威力をあげて衝撃力をあげてる。風槍は風弾よりも貫通力重視にしている。風刃は風の刃で貫通ではなく飛ぶ斬撃をイメージして作った。
どれも考え通りの効果が出ていることを確認してストーンゴーレムに挑戦する。
10層に到着して扉の前に立つ。大きい扉を前にもう一度気合を入れて気持ちを整える。扉を押すと大きな空間が広がり目の前には自分よりも大きい、目測で3mほどのストーンゴーレムがいる。今までは自分よりも小さい魔物だけだったが、自分よりも大きいストーンゴーレムを前にプレッシャーを感じるが呼吸を整え中に入る。
ストーンゴーレムは動き始める。前情報通りゆっくりと動く。しかし、大きいからこそゆっくりだがしっかりと距離は詰めてくる。
賢は無意識に刀の柄を握り直し、同時に魔力を巡らせる。身体強化は控えめに、魔力膜は常時展開。
『魔力膜、正常展開を確認。衝撃耐性は通常比で約1.6倍です』
「了解。まずは距離を保って削る」
賢が後退すると同時に、ストーンゴーレムが腕を振り上げた。
岩の拳が空を裂き、床を叩く。
――轟音。
床が砕け、破片が跳ね上がる。
(直撃したら、魔力膜でも無事じゃ済まないな)
賢は即座に判断し、反撃に移る。
「――風弾」
圧縮された風の塊が直線的に放たれ、ゴーレムの胴体に命中した。
鈍い音が響き、表面の岩がわずかに欠ける。
「……通らなくはない」
『はい。ただし、ダメージ効率は低めです。表層の岩を削るに留まっています』
「想定内だ。なら――」
次に展開したのは、風刃。
横方向に回転する薄い刃が、ゴーレムの膝関節付近を狙う。
ガリ、と岩を削る音。
だが、致命的な損傷には至らない。
『関節部の損耗、約3%。ただし再生反応を確認』
「自己修復もあるか……厄介だな」
ゴーレムが一歩、また一歩と迫る。
一撃一撃が遅い代わりに、圧が重い。
賢は距離を取りつつ、魔術を切り替える。
「次は貫通力重視――風槍」
一本の鋭い風の槍が生成され、一直線に射出される。狙いは肩口。風槍は岩の装甲を貫き、内部にまで到達した。ゴーレムの動きが、ほんの一瞬だけ鈍る。
「……内部構造にダメージは入ってる」
『はい。内部の魔力循環に乱れを確認。継続的な貫通攻撃が有効と推定します』
「ただし、連発は魔力消費が重いな」
賢は即座に判断を切り替えた。削る場所を分散させない。
(一点集中。脚だ)
狙いを定め、風刃と風弾を脚部に集中させる。岩の破片が散り、床に転がる。
その瞬間、ゴーレムが腕を振り下ろした。
「――っ!」
回避が間に合わない。賢は即座に魔力膜を強化し、横転する。
直後、衝撃が身体を打った。魔力膜が軋み、視界が一瞬揺れる。
『衝撃吸収成功。ただし魔力膜耐久が約35%低下しています』
「……ギリギリだな」
だが、その代償として、ゴーレムの動きが明確に鈍った。
脚部の岩が崩れ、片膝をつく。賢は魔力を集中させる。
「――風槍、最大圧縮」
今度は一本ではない。三本の風槍を扇状に展開し、脚部の亀裂へ叩き込む。
岩が砕け、脚が完全に崩落した。ゴーレムはバランスを失い、前のめりに倒れる。
『転倒を確認。中枢部が露出しています』
「なら――」
賢は距離を詰めた。魔力を刀に沿わせ、刃を強化する。剣道で鍛えた踏み込み。迷いのない一太刀。刀は、砕けた岩の隙間から内部の魔核を正確に捉えた。
――砕ける音。
次の瞬間、ストーンゴーレムの身体が停止し、崩れ落ちる。巨大な岩の塊は、やがて光となって消滅した。
『討伐完了を確認。ストーンゴーレム撃破です。』
賢は大きく息を吐き、刀を鞘に戻す。
「……楽勝じゃないな。だが、勝てない相手でもない。」
『魔術と戦術の組み合わせが有効でした。特に一点集中による構造破壊は、高耐久個体への有効な戦法と判断します。』
「データとしても悪くない。……これで十階層突破だな」
床に残された魔石と、ストーンゴーレムのドロップアイテムの魔鉄を手に入れる。思っているも重い。次の階層に降りていくと転移の宝玉がある。
転移の宝玉に手を付けると使い方が頭に入ってくる。転移の宝玉がある階層に望むと転移することができる。しっかりと入り口にある宝玉に触っているので、このまま1階層に戻ることができる。
今回は、時間はかなり早いがいったん地上に戻り、もう一度迷宮に入っていく。先ほどと違って、ゆっくりと階層を下っていく。ほかの人間にだけ会わないように遠間和知などもしながら進んでいく。
「2週目のストーンゴーレム戦に行きましょうか。」
『今回は何か戦い方はありますか?』
「いや、さっきので効率的な戦いは分かったからサクっと終わらせる。」
『わかりました。』
ストーンゴーレムがいる空間に入っていく。先ほどと同じようにゆっくりと近づいてくる。そこでいいことを思い浮かんだので試してみる。
「MI、風槍を5連で起動できるか。」
『可能です。5つ起動しますか?』
「それならもっと早いな。」
賢の周りに5つの魔術ができていった。風槍はストーンゴーレムに向かっていき4つはしっかりと目標通りに当たったが、1つだけかすって後ろに飛んで行ってしまう。
「さすがにいきなり5つは無茶だったか。」
『私の方でも調整しますか?』
「てかMI、お前は魔術を使えないのか。」
『使えるか、という質問には使える。というのが適切なのですが、何をどのようになどは支持が必要です。』
MIは思っている以上に高性能だったようだ。これでいちいち魔術のための意識を割かなくてもよくなるのは便利だ。
風槍4発でストーンゴーレムの足は1本を確実に破壊しきっているから再構築している間は全く近づいてこない。
「MI、風刃を4連起動、とどめを刺して。」
『風刃4連で起動、胴体を切断します。』
MIは言ったとおりに4連の風刃を同じ向きで胴体にあてることで、ストーンゴーレムは真っ二つに分かれて動かなくなる。
「今度のドロップも同じく魔石と魔鉄か。」
『本日はもう一周しますか?』
「いや、今日は終わりだ。」
次の階層に移動して、転移の宝玉に触れて1階層に移動する。
換金所に行く。
「これの換金をお願いします。」
「やはりストーンゴーレムと戦ったのね。」
「昨日と同じ方なのですね。」
「そうよ。たまたまだけどね。それよりもどうだったストーンゴーレムは?強かった?」
「そうですね。2回戦いましたが1回目についてはさすがに危ない場面もありましたが、戦い方が決まれば戦いやすかったです。」
「2回も戦ったのね。それよりも魔鉄はドロップしなかったの?よっぽどじゃなないかぎりドロップするらしいけど。」
「魔鉄は自分で使い道が決まっているので、売りません。魔石だけお願いします。」
「わかりました。ストーンゴーレムの魔石2つで5000円よ。」
「ずいぶん値段が跳ね上がるんですね。」
「そうねゴブリンやスライムの魔石はたくさん売られるから余っているのに、使い道がちょっとした電池くらいにしかならないのよ。」
「そうなんですね。これからはそれも考えておきます。」
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家に帰ると、体に溜まっていた緊張が一気に抜けた。
装備を外し、簡単にシャワーを浴びてから自室に戻る。机の上には、空間魔術の構想を書きかけたノートが広がったままだった。
椅子に腰を下ろし、深く息を吐く。
「……さて」
今日一日の戦闘が、頭の中で自然と再生されていく。
まずは一戦目のストーンゴーレム戦。
そして、二戦目――効率化を意識した戦闘。
「MI、今日の戦闘を整理しよう」
『了解しました。どこから振り返りますか?』
「まずは一戦目だな」
賢は、最初のストーンゴーレム戦を思い返す。
距離を取り、風弾・風刃・風槍を切り替えながら削っていった戦闘。致命打を避けつつ、相手の構造を分析し、一点集中で崩していった流れ。
「一戦目は……正直、余裕はなかった」
『はい。魔力膜の耐久低下、回避不能な攻撃など、複数のリスクが確認されています』
「でも、あの戦いがなかったら、二戦目のやり方は思いつかなかった」
ストーンゴーレムは、確かに強敵だった。
だが、動きは遅く、行動も単純。
耐久力が高い分、構造を理解して崩せば勝ち筋は見える。
「魔術単体じゃなくて、戦術として組み立てたのがよかったな」
『特に、脚部への一点集中と内部構造への貫通攻撃は有効でした』
「ただし、問題も多い」
賢は指を折りながら整理する。
「まず、魔力消費。風槍の連続使用は、想像以上に重い」
『はい。現状では、長期戦になるほど不利になります』
「それに、回避ミス。一戦目で一発もらったのは、完全に判断の遅れだ」
『魔力膜がなければ、戦闘不能になっていた可能性があります』
「つまり、まだ“安全圏”で戦えていない」
賢は、二戦目の戦闘を思い返す。
MIに魔術の起動を任せ、複数の風槍・風刃を同時に展開した戦い。
「あれは……正直、かなり楽だったな」
『はい。魔術制御を分担したことで、賢の判断負荷が大きく軽減されています』
「今までは、
・魔術の構築
・発動タイミング
・位置取り
全部を一人でやってた」
それが、MIに一部を任せることで、
賢は「判断」と「戦術」に集中できるようになった。
「……これ、ソロ探索としてはかなり大きいな」
『その通りです。賢と私の役割分担が明確になりつつあります』
「ただし、課題もある」
賢はノートを引き寄せ、ペンを取る。
「多重起動は、まだ精度が足りない。風槍五連は、さすがに無茶だった」
『命中率は約80%でした。調整の余地があります』
「それと、魔術に頼りすぎるのも危険だ」
二戦目は、確かに圧倒できた。
だが、それは相手がストーンゴーレムだったからだ。
「もし、動きの速い敵や、魔術耐性を持つ相手だったら――
あの戦い方は通じない」
『近接戦闘との併用精度を維持する必要があります』
「結局、全部が“切り替え”だな」
魔術だけ。
剣だけ。
どちらかに偏れば、必ず隙が生まれる。
「だから、次は――」
賢はノートの余白に、ひとつ大きく書き込む。
「空間だ」
『空間魔術ですね』
「荷物の問題。
回避の自由度。
位置取りの幅。
全部、空間を扱えれば解決に近づく」
今日の戦闘で、確信に変わったことがある。
自分はもう、単なる探索者の枠には収まらない。
「MI、明日からは――」
『空間と魔力の関係性の分析ですね』
「ああ。今日の反省は十分だ」
賢はペンを置き、背もたれに体を預ける。
「ストーンゴーレムは、越えた。次は、その先だ」
静かな部屋の中で、次の目標がはっきりと形を持ち始めていた。




