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(……そういえば、最近確認していないな)
ダンジョンを潜るたびに身体の動きが変わっているのはわかる。魔術の精度が上がっているのも、刀の扱いが馴染んでいくのも実感できる。だからステータスカードを確認する必要を感じなかった。
「……今確認する。少し待ってくれ」
賢はステータスカードを取り出し、魔力を通した。
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名前:神谷 賢 年齢:18
レベル:67
スキル:
(ユニーク)Magical Intelligence Lv:-
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賢は数字を確認し、カードをポケットに戻した。
「67だ」
沈黙があった。
陽菜の目が点になった。凛は表情を変えなかったが、目が大きくなっていた。
「え……ちょっと待ってください、私も確認していいですか」
陽菜がステータスカードを取り出した。凛も同じように取り出す。二人が同時に確認した。
陽菜が少し固まった。
「……私、52」
凛が短く言った。
「私は54」
また沈黙があった。今度は少し長い。
「私たち、Cランクで二人パーティーで動いてて……」陽菜がぽつりと言った。「神谷くん、Dランクのソロで私たちより高い」
「……しかも10以上」凛が続けた。「探索者登録してどのくらい?」
「四週間ほどだ」
凛が目を細めた。何かを計算している目だ。
「探索者登録して四週間、ソロで67。……異常だ」
「そうかもしれない」
賢は特に感慨なく答えた。二人が揃って微妙な顔をした。
少し離れたところで、我妻が黙ってそのやり取りを聞いていた。
ポケットに手を突っ込んだまま、何も言わない。賢のカードを見ようともしない。
「我妻さん、見ないんですか?」
陽菜が問いかけた。我妻は少し間を置いてから答えた。
「別にいいよ。数字見てもわかることは変わらないから」
(……この男は、数字に興味がない)
賢はその一言を静かに処理した。
Sランク探索者。この世界の頂点に近い人間が、レベルという数字を気にしない。
我妻は天井を仰いだ。
「強い人間ってさ、みんな数字に執着しなくなるんだよね。数字を追ってる間は、まだ数字に縛られてる。でも本当に上に行った連中は、そもそも気にしなくなる。自分が何をできるかで世界を測るから」
独り言のような口調だった。賢に向けているのか、空に向けているのかわからない。
「君、Fランクのときからそういう感覚してたよね。あのときから気になってたんだよね」
「……数字より、できることの方が重要だ」
「そう、それ」
我妻は天井から視線を外した。賢を見る目が、眠たげではなくなっていた。
「人外って呼ばれてる連中——Sランクのさらに上にいる探索者たち——みんなそういう感覚してる。君、そこに向かってる」
陽菜が息を呑んだ。凛は動かない。
賢は特に何かを感じなかった。それが事実の確認として耳に入ったが、嬉しいとも困惑するとも思わなかった。
(向かっている、か。……今はまだ、積み上げる途中だ)
賢が何も答えずにいると、我妻がポケットから手を出し、一歩近づいてきた。
「じゃあ、前と同じことをもう一回やってもいい?」
賢の脳裏に、あの記憶が蘇った。




