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ON THE BORDERLINE 4 地球崩壊50時間27分3秒前


 七機。

 エイリアンの機体が発見され、同時にその周辺での重力偏差と時間偏差が確認されたのは七地点。


「場所は、チリ、カムチャッカ半島、日本、イエローストーン、インドネシア、ニュージーランド沖、そして君達のいるハワイだ」

「ちょっとまって、教授?それって、妙な偏りがない?そこ全部、…――いま重力偏差?つまり、いま重力に異常が起きてる?」

「その通りだよ、アレックス君」

 無言でアレックスが何事かを考え始める。

「七箇所、…――共通点、なにか、…」

「おい」

「なんだね?」

その横で、表情を変えずに本多がくちにする。

「もしかして、婚約者がどうのという話をしてこいつに危機感を抱かせたのはこの為か?」

「勿論だよ。きみたちの時間が遅くなっている――この言い方は随分といい加減だがね、を間に、あらたにかれのお兄さんから婚約の情報があがってきてね?それなら、此方で計算などをしている間にも利用する方法があるとかれのお兄さんに提案されたのでね」

「…―――こいつの兄というと、あれか、…」

実にいやそうに目を眇める本多が見えているように教授が笑む。

「そういうものでもないよ?かれは実に有能だからね?」

「…有能だからといって、実の弟を――それも溺愛しているときく弟に対しての仕打ちがこれか、…。まあ、愛はともかくとして、とんでもない仕打ちをするのは此処にもいるが」

「誰の話だね?さて、動き出すかね?」

「天才として期待されるのも大変だな」

本多があきれながら視線を急に動きを止めて目を見開いたアレックスに向ける。

「アレックス君?ひらめいたかね?」

「エット?ひらめくっていうか?…――教授、環太平洋帯、――――火の帯、或いは火山群、そして、プレート・テクニクス、…。プレートの動く、尤もそれらが激しく活動している場所、…―――」

「…――――」

無言でかるく本多が眉を寄せる。つぶやいているようにつづけているアレックスの言葉は、殆どうわごとのようだが。

「そこに、重力偏差、…つまりは、火山や地震活動の多い、地球の動きが活発な箇所に、重力の異常」

 ―――…時間が、と。

 アレックスがつぶやく。

「…ウラシマ効果と呼ばれる、タイムマシン――重力によって時間が曲げられてしまって、―――世界に流れる時間が異なる、…――時間がゆがむ、それは」

「アレックス」

本多がしずかに呼ぶが。

アレックス・ローズの思考はいま「その結果」を予測する為に。

「まったく」

警杖をもちいて。

本多がアレックスの前にかるく黒杖を振り、それを弾く。

それが銃弾であり、本多が防がなくては露出した頭部を狙った弾により死んでいたろうことさえ眼中になく。

「面倒なことを」

本多が呟き、アレックスを横抱きにしてともに地に転がる。

かれらが直前までいた空間を薙ぎ払うように円を描いて奔る光。

ホログラムのように空中に浮き上がる銀光に輝く、遮光器土偶似のエイリアン。

 否、―――。

 これは、エイリアン、なのか?

 そして、それが何であろうとも。

「…ええと、なにが、――そう、時間偏差が約9時間として、…―――」

何やら複雑な計算をつぶやきつづけている宙をみて動かないアレックスをみて本多が嘆息する。

「これのお守りか」

 あきれていいながら。

 警杖を、黒杖を振り、黒く細い杖の全長を払い出す。

 本多がしずかに微笑む。


 宙に浮いた銀光―――。

 

 立体に透けてみえるホログラム。

 或いは、それは。

 遮光器土偶をおもわせる立体映像は、その腕にひらいた開口部に踊る丸い光を集めるようにして。

 本多とアレックス、二人に向けて。

 収束された光が放たれようとしていた、――――――。





 

 そして、その刻から経過して。

 9時間57分54秒後。―――


 地球崩壊50時間27分3秒前。



 すでに古典的といっていい機体。

 F-15DJの前部操縦席に本多がいた。

 操縦桿を握る本多の操る機体の後部座席に乗るのは、アレックス。

 かれらが一路目指すのは、日本。

 仮称E7号が発見された海域。

 西ノ島。


 海底火山が噴火して、いまも拡大を続けている島へと。

 空中給油機を伴い、F-15DJイーグルは空を飛び続けている。

 空は果てしなく蒼い。



 



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