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お試しTRPG風リプレイ(オリジナル)

作者: ちー

なのさんの枠で始まったテーブルトークRPGのお試し結果を、せっかくなので小説化しました。


ファンタジーベースのはずだけど、お試しゆるゆる設定なので電話とかヘリコプターとか出てきちゃいます。


どう纏めるか悩んだ結果、あの人に登場してもらうか、てなって踊り子のパトロン役に名無しでちょろっとw


もちちさんとあたしが目立っちゃってるのはとにかくダイスの引きが悪かったからで、対するなのさんは100面ダイスでいきなり100を出す豪運を見せたからですー。オグさんも笛吹くの成功してたし。


そんな感じの内容ですー。

 歌と踊りで様々な効果の付与を得意とするなのは、自身がリーダーを務める冒険者パーティと共に山荘を目指していた。

 休養目的だけれど、郊外にあるため道中は何があるか分からない。いつも通り前衛に剣士でエルフのもちちと格闘家で魔族のちー、後衛でバフデバフを担当する笛吹きの龍人のオグとなの、という編成で移動してきた。

 隣を歩いているオグが笛をプラプラさせながら


「パトロンの山荘まであとどれ位?」


 と聞いてきた。

 退屈そうなのは魔物どころか野生動物すら出てこない安全な道中だからか。なのは内心で(血の気の多い事ね)と呟いてから答える。


「この坂を登りきったとこに橋があるから、それを渡ればすぐよ」


「結局何も出て来なかったけど、たまにはこういうのも良いねぇ」


「ええ、そうね」


 それを聞いていたちーが隣りに目を走らせ、もちちも同じくちーに視線を寄越した。

 ちーが、すっと身体を寄せるともちちが小声で話しかけてきた。


「あんなこと言ってますわよ」


「またフラグよね、絶対」


 ちーも小声で返した。


「橋って単語が出たから、きっと先日の雨の影響で流されて無くなってるのですわ」


 もちちの言葉を受けて市販の折り畳み地図を開いたちーは、少し眺めて現在地を見つけると指差した。


「いまこの道だから橋はここね。一応川沿いの道もあるし川上にももう1本橋あるから、無くなってたとしてもなんとかなるんじゃない?」


「分からないですわ」


 もちちの目線に厳しいものが混じっているのを見て、翼はそれもそうかと思い直す。


「あ、上流の橋も流されてるかも、て事よね。なるほど」


 感心してもちちを見ると、ふいっと目を逸らされた。


「地図を読めないのは淑女のたしなみですの」


「女子には多いんだし素直に苦手って言えばいいのに」


 もちちはぶんっ!と勢いよくちーを見て、カッと眼を見開く。


「わかんないって言ったじゃない!!」


 もちち得意のガンギマリを浴びせられたちーは、苦笑いしながらそう言えばそうねと思い出して。


「あはは、言ってた言ってた、ごめんごめん」


 そんなやり取りを眺めながらオグが言葉を漏らす。


「平和だねぇ」


「そうね」


 なのは短く応えて見上げた。

 連日の雨とはうってかわって快晴の空が、なのたちの旅を優しく見守っているようであった。




 一行は橋まで来た。

 幸いにも流されてはいなかったけれど、橋桁は傾き、橋の1部が大きく欠けて欄干しか残っておらず、ギシギシと不気味な音を立てている。


「回収ですわ」


「ね」


 もちちとちーの軽口を聞きながら、なのはどうするべきか考えていた。

 川沿いの道を上流へ行けば橋がかかっているのは聞いた。だけどかなりの遠回りだし、渡った先の道はこの対岸の道と繋がっていない。おそらくけもの道くらいはあるだろうけれど、要は山の中を強引に戻って来なければならないのだ。


「めんどくさいわね」


「りょかーい」


 まだ肝心な事は何も言ってないのにちーが反応して、


「あたしが殴ってみて大丈夫なら渡れるでしょ」


 言ってみたかった掛け声あんのよねーとか言いながら首と肩を回して土手から橋の側面に回り込むと、すうっと息を吸って力を溜め、


「あたしのじゃねぇし!!」


 なんとも無責任な掛け声と共に橋の骨材こつざいを殴りつけた。


 ごおん、と鈍い音が鳴っただけで橋はビクともしない。


 ちーは土手から上がって


「まあ、たぶん大丈夫じゃない?」


 これまた無責任な事を言う。


「ん? どしたのみんな」


 ちーが首を傾げ、お前は殴りたかっただけだろうと念を込めていたなの達は互いに顔を見合わせて肩をすくめると、


「渡ろっか」


「ですわ~」


「ちーちゃんの攻撃に耐えたしね」


 何かを諦めた顔で橋を渡ろうとしたのだけれど、欄干しか残っていない部分はジャンプするか欄干を渡るかしないといけないのだ。一抹の不安がよぎって橋の手前で足が止まる。

 そこでもちちが橋の下を覗き込み「あ!」と叫んで指差す。


「あそこに丸太が引っかかってますわ! 取ってきますわね!」


 欠けた所に渡そうと考えたらしい。もちちはアーマーを着けずに素早さと身のこなしで闘うスタイルだ。念の為、剣を外してなのに預けると、ひらりひらりと土手を降りて、とぷん、と飛び込むと丸太に取り付いた。


「え? なんで飛び込んだのよもちち」


 なのがそう言うと同時に丸太が動き出して。


「あ。流された」


 ちーが呑気な声をあげた。


「ちょ!? 追うわよ!!」


「お、おう!」


「あ、まってー!」


 なのが走り出して、はっと我に返ったオグとちーも慌てて後を追った。




 増水していても川の勾配は変わらないのだから、流れる速さも普段と変わらない。むしろ雨が上がって減りつつある今は少しだけ緩やかになっていて小走りに並走できる程度だ。そのため、丸太に掴まるもちちに追いついたのはすぐだった。


「ぱいせん!!」


 こちらに気付いたもちちが叫ぶ。


「流されましたわ!!」


「見りゃ分かるわよ!!」


 なのが至極当然なことを叫び返した。


「呑気だねぇ。とりあえず大きな魚を呼び寄せるから、もちちに掴まるよう伝えて」


 オグがそう言って立ち止まり、笛を吹き始めた。


「もちち!! オグさんが掴まれる魚を呼ぶから!!」


「任せろですわ!!」


「あたしは念の為、と」


 やりとりを聞きながら、ちーはストレージから衝撃で膨らむ浮き輪とロープを取り出すと、遠くに投げるため重しの石を括りつけて、再びなのを追った。


 ハラハラしながら見守るなのの視界に大きな背ビレが映った。オグが呼び寄せた魚だろう。あれなら。


「もちち!! さかな!! もうすぐ目の前に来るから掴まって!!」


「見えましたわ!!……もう少し!!――今ですわ!! とうっ!!」


 ちーが追いついて一緒に見守るなか、もちちが魚に飛びついた。


「ぎゃあ!!滑りますわあ!!」


 掴まえたのは一瞬、もちちは手を滑らせて離れてしまった。魚は律儀にも岸の傍まで泳いでから姿を消した。

 その間に丸太がもちちから遠ざかる。


「ああ! もちち!!」


「こんなこともあろうかと!! そぉい!!」


 ちーが用意していた浮き輪を投げた。目標はもちちより少し下流だ。

 掴まるところが無くなって困っていたもちちの顔がぱぁっと明るくなって、飛んでくる浮き輪の方に両手が伸ばされる。


「ちーちゃん! 愛してますゴッ――!」


 浮き輪の岩が頭に直撃し、ぷかりと浮かぶもちち。


 そのまま静かに流されていく。


「もちちーーーー!!!!」


 なのが叫んだところでオグが駆けつけた。


「なになに!? 俺が居ない間に何が起きたの!?」


「お魚滑って逃したから重し付けた浮き輪投げたら直撃した!」


「了解! ちーちゃんはもちちから目を離さないで! なのさん!パトロンの人を動かせない!?」


「はっ! 分かった!電話してみる!!」


 何処からか取り出したスマホをタップするなのをチラリと見たちーは、失敗したときの為に次の手を何か用意しておかないとと思いながら、もちちを見失わないよう並走を続けた。





「オグさん! 連絡取れたわ!ヘリで向かってるって!!」


 なのの報告を聞いてちーがホッとする。オグも安心した表情を見せた。


「じゃあすぐ来るかな。一応沈まない様に支えられる生き物を呼んでおくよ」


 オグが再び立ち止まり、笛を吹き始めた。さっきより強く荒々しい音色が川を渡っていく。だが反応は無い。大きな生物だと少し時間がかかるのだろうか。


 やきもきするなのとちーの耳にバタバタとヘリコプターのローター音が聞こえてきた。


「うそ、早っ! 良かったぁ、これで助けられる」


「ねえ、なのさん」


「どうしたの? ちーちゃん」 


「あれ、なんだと思う?」


 ちーが指差した川面かわもに目を向けたなのは、走りながらもビクッと跳ねた。


「いや、まさか。でも」


「だよね? あれってさー」


「うん。ワニ、よね」


 2人はゆっくり近づくワニと、それよりは早いけれど少し遠いヘリを見比べながら、流されるもちちに並走を続けた。





 バタバタうるさい風に顔をなぶられて迷惑そうに目を開けたもちちは、どうしてヘリコプターがいるのかしら?と考え、


「ああ、流されていたのでしたわね」


 ふと冷静になった。

 風の精霊に属するエルフは人種より軽く、重しとなる剣は預けたから簡単には沈まないはずだ。その安心感が「流されましたわ」の呑気なセリフとなっている。


「かといって溺れない訳ではないし何か掴まる物が欲しいところですわね。って、なんだか足がくすぐったいですわ」


 頭を持ち上げて視線を送ると、大きなワニが居た。人間や魔族なら驚くかもしれないけれど。


「あら、オグさんのお使いなのですわね。お疲れ様、ありがとうですわ~」


 もちちにはワニの背中で踊る風の精霊が見えている。彼女たちがワニのことを教えてくれたのだ。

 もちちに呼応してワニが大きく口を開けてバクン!と閉じた。


「あら、ご挨拶ありがとうですわ。んじゃ少しだけお世話になっても宜しくて?」


 ワニがバクンと返事をして、つい、と寄ってきた。背中に乗せてくれるらしい。と、そのとき。


「もちち!危ない!!」


 なのの叫び声が聞こえてそちらを見ると、ちーが土手を駆け下りてくる所だった。


「もちちさん!!今行くから!!」


「え? ちーちゃん、あなた」


 呆気にとられていたら、ちーが川に飛び込んで、


「あぶぅっ――」


 最初のひとかきで沈んだ。


「ほらぁ!! あなた泳げないって言ってたじゃない!!――ワニさん! あの子をお願いしても宜しくて!?」


 ワニは目をパチンとまばたきして、すっと消えた。

 待つこと10秒、もちちの目の前にちーが浮かんできた。もちちが後ろから抱えて支える。


「ぶはぁ!! はふっ! あれ、もちちさん――あいたっ! なんで!?」


 ちーの頭にもちちのゲンコツが落ちた。


「泳げないくせに危ないことしたバツですわ」


「今なら行ける気がして。ごめん」


「お気持ちは、ありがとうですの」


「え。えへへー」


「山荘に着いたら説教ですわ」


「うえええ」


 そこに、パラリと縄ハシゴが降りてきた。

 ちーが端を掴んで揺れを抑える。


「これ下を抑えてないと登りにくいの。あたしは慣れてるからもちちさん先に登って」


「そういう事でしたら、お先に失礼しますわね」


 慣れてる、の意味を知っていたもちちは素直に従って縄ハシゴを登っていき、ようやく救助が成功した。





「はっはっは! 元気だねぇ君ら!! いいぞぉ!!」


 なのとオグの元に着陸したヘリコプターから降りてきた長身の男は上機嫌に笑っていた。


「急にごめんね? 助かったわ、ありがとう」


「なのの頼みだからな。お――俺が小言を言ってもいいんだが、まあ分かってるだろうし、君らで反省会するといいさ」


 なのと言葉を交わすパトロンの男。なかなかのイケボである。


「いま、おや「しっ! ちーちゃん、あの姿の時にその名前は言っちゃダメですわ!」


「えー。自分で言いかけたやん」


「それでもですの。あの方はぱいせんのパトロン、謎の足長おじさんですわ」


「だれだー? おじさんて言ったのは」


 間延びした声で身体を傾けてなのの後ろを覗き込む男。


「空耳ですわぁ!」


 即答するもちちは、ちーの後ろにくっついている。そして、ちーはなのの後ろにくっついている。


「はっはっ、まあいいさ。あ、そうそう、なの。困ってるだろうから、ちーにこれを渡してくれるかい?」


「え、なにこの紙袋」


「パンツだ」


「え? あ、うん。え?」


「パンツだよ。さっきワニにかじられて下だけスッポンポンだろう?」


「あたしの聞き間違いならごめんだけど、パンツよね? ズボンじゃなくて下着の方の」


「お――俺にズボンのイメージなんてあったか?」


「ないわね」


「……なの。そこは少し考えてから答えるべきだ」


「え、なんで?」


「そっか、済まなかった。なんでもない」


 男が何かを察して話を切ろうとしたのだが。


「発動したとおも」


「しましたわね」


 ちー、もちちが別の何かを察して。


「説明責任だね」


 ちーに気を利かせて背中を向けていたオグが答えを言った。

 なのが首を傾げている。


「ん? ん?」


 男は、ゆっくりと体の向きを変えながら。


「みんな頑張るんだぞ。そして食え! いい冒険は良い筋肉からだ!」


 びっ!と2本の指を突き出して、踵を返した。


「あ! 走った!」


「逃げましたわ!!」


「くっ! いま振り向くわけには!」


 何か合図でもしてあったのか、男が飛び乗ると同時にフワリと浮いたヘリコプターは、強烈な風を巻き起こすと、常識外れな猛スピードで離脱していった。


 なのはくるりと向きを変えて、くっついていたちーともちちを見下ろすと。


「ねえ、なんで?」


「答える。答えるから、ズボン履かせて」


「恥じらうちーちゃん……よきですわ」


「なのさん、俺からもお願い。ちーちゃんが身支度を整えてくれないと振り向けないんだわ」


 オグの懇願を聞いてため息をついたなのは、ちーに紙袋を差し出した。


「仕方ないわね。それじゃ――」


「あ、パンツは自前のあるので。それはなのさんどぞ」


 なのは紙袋を覗き込む。


「遠慮しなくていいのよ? ちゃんと4枚あるから」


「まって!! ここに男がいるんどけど!?」


「他所でも見た事あるのですけど、パンツ渡せればいいみたいですから性別は関係ないですわ」


「要らない! 俺要らないからね?」


 もちちが電話をタップする。


「もしもしオグさんの奥様ですか? もちちさんと言いますわ。ですわ、ですわ。ええ、お土産を待ってて下さいまし。――楽しみに待ってるそうですのでお持ち帰り下さいまし」


「あ、全部持ってく?」


「いいから先に進もうよ! つか俺が交渉するならヘリで送って貰ったのにーーー!!!」


 オグの叫びが川面に吸い込まれるのを聞きながら、残る3人は「ああ」と手をポン、と打っていた。


ーーFINーー

はい!お疲れ様ですー。お付き合いありがとうございました。


あたしのテキストだとこんなんだけど、実際はお腹抱えて笑いました。


とりあえず、このメンバーだと先に進めないのが分かったのでオグさんがマスター修行して下さるそうですー。


テーブルトークRPGめちゃくちゃ楽しいです。オススメ。

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