7話「遺伝子」
ヨンクニ地方に1000万匹のポッキーが渡ったその頃、カントウ地方・サイタマシティでは、人々がある“音”に怯えていた。
それは、500万匹のポッキーがビルをよじ登り、道路を駆け巡り野を越え山を越え行く轟音だった。
そのポッキーの大群は、「サイタマ古墳群」へ向かって進んでいた。初代ポッキーが、突如叫んだ。
「赤い帽子を被っているポッキー、彼は人間だったころ、“俳優”だった"んだ!」
「人間だった頃...?」
「僕たちポッキーには人間の頃の記憶など無いはず...」
思いもよらぬ言葉に、ポッキーたちは戸惑いと驚きに包まれる。
自分たちポッキーは、人間時代の記憶がある事をまだ知らなかったのだ。
初代ポッキーはまた叫んだ。
「メガネをかけたポッキーだが、彼は“元・科学者”だった。そして、遺伝子を分析する力を持っている。分析には、俳優ポッキーと、ヨンクニ地方に潜伏している1匹『A』の力を借りた。その結果……2匹の体から、人間とネズミ両方の遺伝子が発見されたんだ!さらに、“特技”までもが遺伝情報として受け継がれていることが判明した!」
“A”と呼ばれるポッキーの特技は格闘術であり、彼がかつて人間の格闘家だったことも分かった。
500万匹のポッキーは驚きに満ちた顔でリーダーを見つめていた。しかし、初代ポッキーはさらに衝撃的な事実を口にした。
「俳優ポッキーは、演技の中でも“孤独感”を表現することができる!それはつまり……彼は自分の感情でネズミウイルスを放出することができるということなんだ!」
それはまさに、“ネズミウイルスを操るポッキー”の誕生を意味していた。
その時
銃声が鳴り響いた。
銃弾が1匹のポッキーの頭部に
当たりそのポッキーは命を落とした。
100人もの人間が、密かにポッキーたちを尾行していたのだ。
初代ポッキーは、味方の1匹が今し方人間によって犠牲になったことに胸を痛める一方で、
「俳優ポッキーの力を試す機会が来た」と、内心では期待していた。
俳優ポッキーは、すぐに“孤独感”を表現する演技に入った。
何もない空間で、誰にも見られずに一人泣いている
そんなイメージを心に描くと、彼の体からネズミウイルスが放出された。
銃を構えていた人間たちは、瞬く間にポッキーへと姿を変えていく。
500万匹のポッキーたちは、その光景を見て確信した。
「本当にネズミウイルスを自在に操れるポッキーが現れたんだ……!」
そして同時に、こう強く誓った。
「ネズミウィルスを操れる俳優ポッキー。
そしてポッキーの遺伝子情報を解き明かすことのできるポッキーの進化の鍵ともいえる科学者ポッキー。この二匹は
我々ポッキー達の要だ…!
命をかけてでも守り抜こう!」