2話「友達」
ポッキーは、今ピピニーランドにいた。
かつて子供に侮辱され、怒りと孤独の中でその子供を自分と同じ姿へと変えてしまった。そんなポッキーだったが、今はその孤独感も消えつつあった。
各国の政府は緊急声明を出し、ポッキーを捕らえるために多くの人々がピピニーランドへ向かっていた。
その頃、ピピニーランドでは、ポッキーと“もう一人のポッキー”(元人間の子供)が、赤い風船を渡しあい、食べ物を一緒に食べ、ジェットコースターに乗って楽しんでいた。
ふたりは、まぎれもなく“友達”になっていた。
観覧車に乗ったポッキーは、窓に映る2匹のネズミの姿を見つめながら思った。
もう、ここに孤独はない。
むしろ「この姿でよかった」と、自分の存在を誇らしく感じていた。
しかしそのとき、元人間の子供だったポッキーが、外に大勢の人間たちが集まっていることに気づき、ポッキーへ伝えた。
するとポッキーは記憶が蘇り、険しい表情でこうつぶやいた。
「アイツら……僕らの邪魔をしに来たのか?」
やがて観覧車が一周し終えたとき、ポッキーは過去の出来事を思い出しながら叫んだ。
「なにしに来た!人間ども!これ以上近づいたら、僕とあの子でポッキーしちゃうぞ!」
人間たちは、ポッキーが“増えている”ことに気づき、衝撃を受けた。
その瞬間、ひとりの人間がポッキーに銃口を向け、引き金を引いた。
ポッキーはすぐに察知して、弾丸を瞬時にかわした。だが、弾の先には元人間の子供だったポッキーがいた。
元人間の子供だったポッキーは何も気づかぬまま、撃たれて命を落とした。
ポッキーは、怒りと憎しみに包まれた。
その姿は、禍々しく変貌を遂げていた。
そして、震える声でこう呟いた。
「もう……忘れない。この憎しみと怒りを……人間なんかいらない。決定だ。全員ポッキーしちゃうぞ!!」
その瞬間、ポッキーの放ったウイルスが周囲に広がり、そこにいた人間たちは次々と“ポッキー”へと変えられていった。
ポッキーは、ひとつの真理にたどりついた。
「孤独感が芽生えるとウイルスを放出し、そのウイルスの作用でポッキーに変えることができる」と。
そして誓った。
この怒りと憎しみの中で、全世界の人間をポッキーに変えていくと。
日が昇り、321匹のポッキーたちが集結した。
そして、ポッキーはこう宣言した。
「まずは日本の人間からだ!
さあ、320匹のポッキーよ。人間たちを、僕たちの“ユートピア”に招待してあげよう!」
2040年3月21日トーキョーシティ
今ここでは、人類1,400万人とポッキー&ネズミ人321匹による全面戦争が勃発していた