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第68話「それはもう二度と戻らない日々への後悔の叫び」

ロジェが擬態した大悪魔アモンと夢世界の冥界で取引が行われ、

進むも地獄。退くも地獄という状況で、パピヨン王とマルスリーヌ王女は、

出された『5つの条件』を吞まざるをえなかった。


一度交わした約束は絶対に厳守しなければならない。

破った代償は、地獄のナイトメア復活と一夜ごとに1か月の寿命の削減である。


その結果、ふたりの王族たる身分放棄と政務からの引退、

所有財産の国庫への返還は、翌朝唐突に発表された。


更にパピヨン王とマルスリーヌ王女は、約束通り、

世界中に向けて、犯した己の罪を懺悔し、発信した。


国政をおもちゃにし、人心を惑わした事を深く詫びたのだ。


中でも、心の底から謝罪したのが、

勇者ラウル・シャリエへの扱いと死の顛末である。


地方で暮らしていた平民の子ラウルが創世神からの啓示を受け、勇者として覚醒。

王都へ召喚されたが、マルスリーヌ王女の魔道具と魅惑的な工作により洗脳された。


ラウルを惚れさせ、虜にし、婚約者としてしばりつけ、

何でも言う事を聞く人形、使い勝手の良い道具として……


広大な城の掃除を厨房からトイレ、下水まで全部ひとりでやらせ、

数多居るペットの餌やりに散歩、小屋の掃除。

大荷物の買い物をさせたり、遠くの街まで手紙や荷物も運搬もさせた。


勇者を単なる使用人としてこき使っただけではない。

当然、血のにじむような鬼訓練で、徹底的に鍛えた上、

援護の部隊なしで、魔境へ魔王軍を倒せと、出撃させたのだ。


そして見事に数百万の魔王軍を倒したラウルであったが、

何故か、勇者としての能力を喪失。

するとパピヨン王とマルスリーヌ王女は、

こんな奴は用無しとして婚約破棄した上で追放、『お払い箱』にしたのである。


更に更に非道な事に、パピヨン王とマルスリーヌ王女は、

凡人となったラウルの暗殺も画策。

直接手は下さなかったものの、オーガキングに襲われて喰われたという不慮の大事故で、ラウルは亡くなってしまった……心の底から後悔していると涙ながらに話した。


勇者ラウル・シャリエへの扱いと死の顛末に関しては、内容を記載した書面も発表。


世界中への発信という事で、侍従長の手配により、これらの件を報せる魔法鳩便が各所へ飛ばされ、自国は勿論、世界中の人々を驚かせる。


特にロジェの一件は、まさに! 受けた恩を仇で返す! 後足で砂をかける!

という言葉がぴったり!

否、マルスリーヌ王女はそれ以上の『外道』であると、

隠された真実を知らなかった世界中の人々から非難が殺到した。


そんなマルスリーヌ王女の外見だけにひとめぼれし、

結婚を夢見ていたシーニュ王国皇太子であったが……

「このまま縁談を進めるわけには行かない」と、

魔法鳩便の報せを見た父のシーニュ王、叔父の宰相マクシミリアン殿下が、

強権を発動し、ストップをかけた。


さすがに父、叔父には逆らえず、

皇太子はマルスリーヌ王女との結婚を諦めるだろう。


これでロジェが危惧していた、

マルスリーヌ王女のシーニュ王国嫁入りの可能性も完全に消滅した。


他国の王子達も同じく、一斉にマルスリーヌ王女を王妃候補リストから外したのだ。


……その後、少しでも非難を和らげようとしたのか、

パピヨン王とマルスリーヌ王女は僧籍になる事へ辺境の修道院入りを宣言。

入所した修道院では規則正しい生活をし、質素に暮らし、

恵まれぬ人々へのボランティア活動を行う事も合わせて誓ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


契約書にこそしなかったが……

大悪魔アモン――ロジェが提示し、

パピヨン王とマルスリーヌ王女が受け入れた5つの条件は、

ふたりの心にしっかりと刻まれ、忘却する事など不可能である。


もしも約束を破ったら、地獄のナイトメアが復活。

1度悪夢を見る度に、1か月寿命が縮んでしまう。


だからこそ、各条項はしっかりと守られ、粛々と実行された。


王政をつかさどる後継者も、

パピヨン王家とは全く関係のない誠実な上級貴族に決まった。


後は……準備を整え、辺境の修道院へ入所するのみ。

それもパピヨン王とマルスリーヌ王女は、別々の修道院へ入る事となる。


明日は修道院へ旅立つ、王宮での最後の夜……


今生の別れになるやもしれぬ父と娘は語り合う。


それはもう二度と戻らない日々への後悔。


「お父様……」


「何だね? マルスリーヌよ」


「私……地獄で責められ、苦痛と恐怖の中で、何度も死んで生き返り、ようやく分かりました」


「ようやく……分かったのか?」


「はい、パピヨン王家の為、ひたすら尽くし、単身、魔王軍に立ち向かったラウルが、最後に私達に用無しと捨てられた時の気持ちをです。もう遅すぎますが、心の底から反省しております」


「う、うむ……わしもだ。深く反省している。亡くなったラウルに詫びれるものなら詫びたい」


「お父様、私達……最初から最後まで間違えてしまいましたね。ラウルを平民と蔑み、単なる道具扱いして粗末にし過ぎました」


「ああ、そうだな。お前の言う通り、あいつは真面目にパピヨン王家、そしてお前に尽くし、最後は魔王を倒し、世界をも救った。政務を任せても上手くやったかもしれぬ」


「はい、そんなラウルを、勇者でなくなったからとはいえ、私達は非情にも王都から追い出し、最後は無残な死を遂げさせてしまった」


「うむ、今の我々の状況は……因果応報という事だろうな」


「はい、自業自得とも言えますわ。私が卑怯で姑息な洗脳など用いず、身分立場にこだわらず、素直にラウルを愛し、大事にしていたら……今とは違う未来があったはずですから」


「いや、そう自分を責めるな、マルスリーヌ。お前を甘やかし、自己本位過ぎる王女に育ててしまったわしにも大きな責任がある」


「お父様、私……せめてもの罪滅ぼしに、亡くなったラウルの冥福を祈りつつ、めぐまれない人々の為に働きますわ」


「うむ、わしもだ。ラウルの冥福を祈りながら、出来る事で誰かを助け、つつましく修道院で余生を暮らして行こうと思う」


「そして、違う修道院へ行く私達は、明日は別々の出発という事みたいですから……今のうちにごあいさつをさせて頂きます」


「そう……だな」


「はい、お父様、今までお世話になりました。本当にありがとうございました」


「こちらこそだ、マルスリーヌ。至らぬ父であったが、お前は良くやってくれた。心から感謝する。どうか、達者でな」


「はい! お父様もお元気でお暮しくださいませ」


……最後に別れのあいさつを行い、パピヨン王とマルスリーヌ王女は、

固く抱き合ったのである。

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