表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/69

第67話「いつもの高慢な態度は微塵も見られない」

進むも地獄。退くも地獄……という言葉がある。


どのように対応しても、状況が良くならない状態を指すのだが、

今のパピヨン王とマルスリーヌ王女の状態がまさにそれである。


究極の一択と言っても過言ではない。


アモンが出した5つの条件は……

ロジェが熟考したふたりの処置の結論とそれに伴う方法である。


ひと~つ……王、王女という王族の身分を捨て、政務から引退せよ。

      後継者は血縁のない貴族から選ぶ事。


      ⇒これは悪政に苦しむ故国パピヨン王国を救う為の処置である。

       血縁以外の貴族を後継者にするのは、王国が出直す為の心機一転、

       しがらみを断つ為だ。


ひと~つ……財産を全て放棄し、国庫へ戻す事。


      ⇒悪政、収賄などで得た理不尽、不当な利益は、

       全て王国へ返還させる。


ひと~つ……自身の犯した全ての罪を告白し世界へ公開する事。

      特に勇者ラウル・シャリエを洗脳した上、理不尽に追放した顛末を

      書面にした反省文を提出せよ。


      ⇒国王、王族という立場を利用して犯した罪を懺悔させる措置である。

       全世界に犯した罪を公開する事で、心からの反省を促す。

       特に、大嘘で誤解されている、

       勇者ラウル・シャリエの名誉を回復させる為だ。  


ひと~つ……犯した罪、勇者ラウルへのおわびとして両名は僧籍となり、

      生涯独身を貫く事。

      そして、それぞれが違う辺境の修道院へ入所する事。


      ⇒犯した罪を償う為の出家であり、辺境の修道院へ入所するのは、

       中央とのかかわりを断つ為だ。

       独身を貫かせるのは、結婚を望むシーニュ王国皇太子のような第三者

       を巻き込ませないようにする処置であり、

       やはり血のしがらみを断つ為である。


ひと~つ……入所した修道院では規則正しい生活をし、質素に暮らし、

      恵まれぬ人々へのボランティア活動を必ず行う事。


      ⇒残りの人生を誠実に過ごして貰う為の処置だ。

       恵まれぬ人々へのボランティア活動は、

       悪意をぶつけた人々への贖罪を行わせる意味がある。


以上を呑めば、生き地獄といえるそんなナイトメアから解放される。

ロジェが擬態した大悪魔アモンが、その選択の答えを出せと求めているのだ。


まず、ひとつめの選択。

5つの条件受け入れを拒否した場合、


重い金貨の袋を転がしつつ互いに罵る、

煮えたぎる熱湯に漬けられ、悪鬼どもから責められる、

重い金張りの鉛外套に身を包み、ひたすら歩く、

生きながら爆炎に焼かれる、

悪鬼どもにより、身体を引き裂かれる、

首まで氷に漬かり、全てが凍る寒さに歯を鳴らし、身体を震わせる、

などなど、夢とは思えないリアルな地獄の責め苦にさいなまれる事となる。


心身の疲労回復やバランスを調整する為の睡眠が、一転し、地獄になる。

人生の3分の1から4分の1……約25年から30年は眠っていると言われるが、

夢とはいえ、その責め苦が一生続くのは辛すぎるといえよう。


そしてもうひとつの選択。

5つの条件受け入れをOKした場合、

王族という身分を捨て、政務から引退。

全財産を返納し、ラウル追放の顛末を含む、自身の罪を世界中に公開。

僧籍となり、生涯独身を貫き、修道院へ入所。

節度のある規則正しい生活をし、めぐまれない人々に尽くす。


以上を受け入れれば、安眠は確約される。


選択は、そのどちらかなのである。


……俺が勇者ラウル・シャリエだった頃、マルスリーヌ王女に洗脳され、

言いなりになって良いようにこき使われ、魔王を倒したらあっさりポイ捨てされた。

挙句の果てに、暗殺まで企てやがって……未遂となったからいいようなものの……


だが……完全に立場は逆転した。


この悪夢の世界、この場は俺が『支配』している。


ロジェ――大悪魔アモンは、ニッと笑い答えを促す。


「さあ、どうだ? パピヨン王、マルスリーヌ王女、どちらかを選べ!」


しばしの沈黙。


だがここで「はい!」といち早く手を挙げたのが、パピヨン王である。


「わしも年だ。残り少ない余生が毎晩こんな悪夢ではたまらない! どうせ退位後は修道院に入ろうと思っていたのだ。5つの条件を呑もう!」


あっさり白旗をあげたパピヨン王。

ただ、置かれた自分の立場を忘れたような、上から目線の物言いである。


「はあ? 何だ? その偉そうな言葉遣いは?」


怒りの色を見せたアモンがぎろりとにらめば、パピヨン王は殺気に怯え、


「も、申し訳ございません! い、言い直します! わ、私も年なのでございます! の、残り少ない余生が毎晩こんな悪夢ではたまりませぬ! 退位後は修道院に入ろうと考えておりました! つ、つつしんで! い、5つの条件を呑ませて頂きます!」


だらだらと滝汗をかきながら、丁寧に言い直すパピヨン王は、憔悴の色が濃かった。

まずは「ざまあ!」第一弾達成である。


一方、父親より傲慢で欲張りなマルスリーヌ王女は迷っていた。

往生際が悪いとも言えるが。


確かに毎晩メンタル完全崩壊に近い状態になるのは、とんでもなく辛すぎる。

かといって、老齢の父より遥かに若い自分が未婚のまま、

修道院でつつましく一生を暮らすのも耐えられない。


しかし、アモンはまたもニッと笑い、迷いに迷うマルスリーヌ王女へ、

とんでもない事を告げたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おい! マルスリーヌ王女よ、ひとつ良い事を教えてやろう」


「よ、よい事? ですか?」


アモンの言葉を聞き、マルスリーヌ王女は恐怖で身体をびくりと震わせた。

いつもの高慢な態度は微塵も見られない。  


「うむ、呪われた地獄のナイトメアを見る度に、寿命は1か月縮まるのだ。お前達父娘のナイトメアは今夜で3回目、それゆえ3か月寿命は縮んだぞ」


「ひ、ひえええっ!? さ、3か月寿命が!? そ、そんなの全然良い事ではありませ~ん!!」


「そうか? 毎晩、地獄のナイトメアを見ながら、悶え苦しみ、後悔し、更に寿命も尽きて行くというのも一興だと思うがな」


「うわわわ~ん!! いやいやいやああ~~!!」


大泣きし、絶叫するマルスリーヌ王女。


「ほう、そんなにいやか?」


「い、いやですう!!」


「ならば、我の出した5つの条件を呑め! 父親と同じくな!」


ぎろり!とにらむアモン。

当然、スキル魔王の威圧が使われている。


あまりの恐怖にマルスリーヌ王女は悲鳴をあげる。


「ひ、ひいいいい!!」


「どうだ? マルスリーヌ! イエスかノーか、どっちだ?」


「はっ、はいっ!! わ、分かりましたああ!! ち、父と同じように致しますうう!!」


こうして……ロジェの遂行した作戦は大成功し、パピヨン王とマルスリーヌ王女は、

完全に「ざまああああ!!!!!!!!!!」されたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!

《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

既刊第1巻~5巻大好評発売中!

《紙版、電子版》

何卒宜しくお願い致します。

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、


⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中!》


⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》


⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ

る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》

⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》

も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ