第62話「うむ! 頼んだぞ! シーニュ王国の未来はロジェ君にかかっている!」
全行程300㎞、10町村をめぐる馬車荷便代行の仕事を、
クリスへ告げた通り、ロジェはきっちり2日間でクリアし、王都へ戻って来た。
たった2日間ではあったが、相思相愛となったアメリーが無事の帰還を、
再び大喜びしたのは言うまでもない。
そして300㎞を移動する間、熟考したロジェは、
パピヨン王とマルスリーヌ王女への対応、処置も決めた。
その準備の為、情報収集は必要不可欠。
ロジェは道すがらいろいろと各所で調査。
調査だけではなく、変身魔法で擬態し、様々な人々と会い、手配、根回しも行った。
お願いする内容も悟られないような言い方をしたのは当然である。
情報はいくらあっても困らない。
馬車荷便代行の仕事を終え、王都へ戻ってからも、
ロジェは、ファザーガッドのナタンへ、
猫ネットワークをフル活用した追加調査を依頼した。
ちなみに、各所への調査依頼はロジェの転移魔法でナタンを送り、
当該地のリーダーへ依頼を行い、
1週間後に再びナタンを連れて各所を回り、調査結果を回収したという次第。
また自身が持つ禁断の秘法のトレーニングを行い、
完璧な『作戦発動』に備えたのである。
そんなこんなで、時間が経ち、マクシミリアン殿下の決めた期日である2週間後。
万全の状態で待つロジェへギルド経由で連絡が来た。
半金の金貨500枚を受け取った上で、
マクシミリアン殿下の屋敷へ赴くロジェ。
笑顔のマクシミリアン殿下は、ことのほか上機嫌であった。
祐筆に作らせた恋文の文面は、会心の出来でばっちりらしい。
「ははははは! 良く来たな! ロジェ君! 今回も宜しく頼む! いや、前回以上の結果を期待しているぞ!」
……いや、申し訳ないのですが、この結婚話、思いっきり、ぶち壊させて頂きます。
心の中でつぶやいたロジェであったが 、そんな気配はおくびにも出さない。
殿下と同じく、柔らかい笑みで、やる気をアピールする。
「はい、閣下。お任せください! 一生懸命に頑張ります!」
「うむ! それと恋文だけでなく、当然ながら献上品も運んでくれるか」
「はい! もろもろ了解です!」
今度の献上品も大箱3つ。
しかし前回のトライアルとは違い、『本番』だけあって、
中身はフルーツではなく、
『黄金の塊』『色とりどりの宝石』『豪華絹織物』であった。
むう、献上品がこのようにベタな財宝とは、
マクシミリアン殿下もマルスリーヌ王女の『性癖』を調べたに違いない。
ならば、とんでもない、物欲旺盛なわがまま王女だと知っているはずなのに……
何故、縁談を進めようとするんだ?
そう思ったロジェだが……マクシミリアン殿から発する心の波動を探ってみれば、
『ねえ! 叔父さんお願い! 僕、絶世の美女であるマルスリーヌ王女と絶対に結婚したいんだ! と言われたら、いかに性格が悪くて贅沢三昧を好む王女とはいえど断れん。やれる事は何でもやるしかない! 兄を補佐する王国宰相という立場もある。我が息子に等しい甥、次期国王の皇太子には必ず幸せになって欲しいのだ』
……という内なる声が聞こえて来た。
成る程!
マクシミリアン殿下も、そんな辛いお気持ちを隠していたのか!
であれば尚更だ。
終わり良ければ総て良し!
この結婚話、必ず成立しないよう、全力を尽くしてやる!
ロジェはそんな決意を心に秘めながら、笑顔で大きく頷いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
マクシミリアン殿下から、『恋文』と『ベタな財宝』を受け取ったロジェ。
支度は全て完了していたので、そのまますぐ出発する事になった。
時速100㎞で街道を疾走。
パピヨン王国王都の王宮を目指す!と表向きにはなっている。
「では、閣下。行って参ります!」
「うむ! 頼んだぞ! シーニュ王国の未来はロジェ君にかかっている!」
おおげさだなあと思いながら、悪い気はしない。
マジな話、本当にこのお使いには、
シーニュ王国の未来がかかっていると思うからだ。
という事で、マクシミリアン殿下に見送られたロジェは、
王都の正門を出て、街道へ。
しばし走ってすぐ転移魔法を発動。
人目のない場所で、今回の作戦に使う秘法、スキルを再度練習。
じっくりと頭の中でもシミュレーションを繰り返し、
最初の町の最初の宿屋に宿泊。
夕食を摂り、時間が来るのを待った。
そう、今回の作戦は何回かに分け、発動するが、それは主に『夜』なのである。
今夜は作戦が発動されるが、まずは小手調べという感じだ。
そして、真夜中……作戦は無事発動。
極めて難度の高い内容だったが、第一段階は成功した。
更に次の夜も作戦は発動。
トラブルはゼロ、何事もなく、無事に進行した。
しかしまだ、作戦は序章段階に過ぎない。
これから、とんでもない仕掛けがふたりを襲うのだ。
ただロジェは、パピヨン王とマルスリーヌ王女に対し、
とどめを刺そう、この世から消してしまえとか、
そこまでは考えてはいない。
それらに近い苦しみを味わって貰う事にはなるが……
後は……パピヨン王とマルスリーヌ王女がどれくらい耐えられるか?
そして自身の罪を悔い改め、行いを変え、
自分同様に人生をやり直す事が出来るのかが問題だ。
発動の本番は、恋文と献上品を渡した日の夜……
その時、一体どうなるのか?
ロジェは期待と不安を持ち、パピヨン王国王都の王宮を目指していたのである。
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