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第59話「この生活を……幸せな第二の人生を絶対に壊したくない!!」

「マルスリーヌ王女へ恋文を送る準備が必要だ。準備が出来次第、ロジェ君を呼ぶ。それまでスタンバイしておいてくれ」


と言うマクシミリアン殿下。


「はい……」


力なく答えるロジェ。


「お? どうした? ひどく元気がないようだが」


「何でもありませ~ん」


「うむ、王宮の祐筆に命じ、念には念を入れて文面作成をするから恋文の準備には2週間はかかるだろう」


「2週間ですか」


「ああ、内容が内容だから、正式な発注までは君の胸に仕舞っておいてくれ。冒険者ギルドへも他言無用だ。その間はギルド経由で呼び出すまで他の仕事をしても構わない。だが、けがだけは注意し、疲れをためないようにな」


「もろもろ、了解致しました。では失礼させて頂きます」


マクシミリアン殿下の屋敷を辞去したロジェは、

渋い表情で冒険者ギルドへ……

応接室に通され、クリスから残金の金貨150枚を受け取った。


浮かない顔付きのロジェを見て、クリスが訝し気な雰囲気で言う。


「気のせいかもしれませんが、ロジェさん、少し元気がないようですね……」


「いえ、大丈夫です」


「そうですか、次回の件に関しては、殿下から何かお聞きになっていますか?」


「はい、次回の件は、殿下の方でいろいろご検討されるそうです。それまで俺は、他の案件を受諾しても構わないとおっしゃっていました」


クリスから尋ねられたロジェは無難かつ曖昧に答えた。


何かを察したのか、勘の良いクリスは話題を変える。


「成る程。ではお疲れのところ申し訳ありませんが、レギュラー案件である馬車荷便代行の仕事を受けて頂いても宜しいですか?」


「馬車荷便代行を?」


「はい、何せ王家の指名依頼を優先し、20日近く滞っていましたから。もしも無理ならば、王家の依頼が優先ですから断って構いません」


王家の依頼が優先というのも、いかがなものかである。

マクシミリアン殿下は、次の依頼には準備が2週間かかると言った。


であれば、馬車荷便代行を引き受けられる。


「……大丈夫です。構わないですよ。実は今回の案件で試したところ、これまでの最高走行速度は、従来の倍速が出まして」


「おお、では一気に時速100㎞ですか! す、凄いですね」


「はい、決して無理はしませんが、これまでよりだいぶ所要時間を短縮出来そうなので、お受け出来ると思います」


「分かりました。当然、休憩をしながらの行程でしょうが、全行程300㎞はどれくらいで行って帰って来れそうでしょうか?」


「そうですね、少なくとも2日あれば充分でしょう」


「300㎞を2日間ですか? それは助かります! では各クライアント様は既にスタンバイ状態なので、ロジェさんが回復OKであれば、事前連絡の上、いつでも集荷に動いてください」


「そうですか。では明後日集荷に行き、明々後日に出発します。それで6日後には、王都へ戻る予定で、各クライアント様へスケジュールを伝えて貰えますか?」


「おお、さすが、ロジェさん! 即決即断ですね! 了解です! 各所にその予定で連絡を入れておきますね。では半金の金貨250枚もお支払いします」


……という事で、ロジェは気分転換も兼ね、

馬車荷便代行の案件を受ける事となったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


王都に帰還してから、

マクシミリアン殿下の屋敷と冒険者ギルドにて打合せと完遂報告。


ようやく白鳥亭へ戻って来たロジェである。


……時刻は午後3時前。


3人全員が居て、ロジェの帰還を大いに喜び、いたわってくれた。


中でも凄く喜んでくれたのは、当然アメリーである。


「ロジェ様ああ!! お帰りなさ~い!! ご無事で良かったですう!!」


それから、ロジェはたっぷりのおみやげを3人へプレゼント。


シーニュ王国は勿論だが、

パピヨン王国のおみやげを見て3人のモチベーションは爆上がり。


ロジェを質問攻めの嵐に。


あの町はどうだった?とか、

パピヨン王国はどんなだった?とか

質問は他愛のないものが多かったが、今回の依頼の核心に迫りそうなものに対して、ロジェはさりげなくスルーした。


「あの……ロジェ様、しばらくは休めるのですよね?」


アメリーが恐る恐る尋ねて来た。


ここで辛い話をしなければならない。


「いえ、申し訳ないのですが、明日1日だけ休んで、明後日から、いつもの馬車荷便代行の仕事をします。3日後に王都を出発し、数日で戻ります」


「え!? ほ、本当ですか!?」


「はい、本当です。今回の依頼の完遂報告をした際、ギルドから依頼がありまして、スケジュールの折り合いがつきそうなので受諾しました」


「そう……ですか……」


アメリーの眼差しが「切ない」「寂しい」「身体が心配」と告げている。


本当にロジェの事を心から慕ってくれる女子がここに居た。


……シーニュ王国皇太子がどんな人物なのか、ロジェには良く分からない。


人間には相性があるから、

皇太子とマルスリーヌ王女が、100%破局するとは言えない。


ただ言える事は、マルスリーヌ王女には、人間らしいまともな情愛はなく、

自分と父さえよければそれで良い、不要なものはバッサリ切り捨てる、

利害のみで動く『悪魔のような本性』という事実である。


更に言えば、マルスリーヌ王女が、新王となった皇太子をないがしろにし、

王妃として国政に口出しする可能性は極めて高い。


現在の不景気真っただ中であるパピヨン王国の状態を見れば、

マルスリーヌ王女は統治能力が最低レベルなのは、はっきりしていた。


パピヨン王国が併合され、大国となったシーニュ王国の前途は暗く、

下手をすれば一緒に滅亡への道を歩む事となるだろう。 


皇太子には、自分のように、利用されるだけ利用されて、

ポイ捨てされる辛い思いをしてほしくない。


そして自分も、この生活を……幸せな第二の人生を絶対に壊したくない!!


ロジェは強く、そう思う。


マクシミリアン殿下の依頼の趣旨とは、真逆の結果になってしまうが、

マルスリーヌ王女のシーニュ王国王家嫁入りは、

「絶対に阻止しなければならない!!」と、ロジェは決意を新たにしたのである。

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