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第58話「おいおい、ロジェ君、何を驚いている?」

ロジェはシーニュ王国王都へ約8日間かけて戻った。


若干短縮したのは、マルスリーヌ王女へ

「時速100㎞で1時間以上走る事が出来る!」とカミングアウトした為だ。


王女の口から「時速100㎞で走れる冒険者が居る!」

と口コミで広がる可能性がある。


当然、もっと速く走れるが、今の時点で公開する必要はないだろう。


さてさて!

シーニュ王国王都へ帰還したロジェはまず冒険者ギルドへ赴き、

クリスへ依頼完遂の報告を行い、マルスリーヌ王女からの礼状――国書を見せた。


冒険者ギルドでロジェが受諾した時点では関知していなかった依頼内容も、

後日マクシミリアン殿下から連絡があり、

クリスを始めギルドサイドは熟知していた。


笑顔のクリスは完遂報告を受け、すぐにマクシミリアン殿下から連絡を貰い、

翌日ロジェは、貴族街区の屋敷へ赴いている。


事が上手く運んだと聞いているらしく、

マクシミリアン殿下は満面の笑みを浮かべている。


「ご苦労だったね、ロジェ・アルノー君。予定より早い帰還で何よりだ。ギルドから報告を受けたが、侍女とやりとりをしているうちに、偶然マルスリーヌ王女がいらしたんだって?」


「はい、閣下、その通りです。献上品を直接王女様にご確認頂きました」


「うむ、直接、マルスリーヌ王女へか。よくやった。では国書を渡して貰おうか」


「はい、こちらです、閣下」


ロジェが国書を渡すと、受け取ったマクシミリアン殿下は封を切り、

礼状らしき紙片を抜き出した。


文面へ真っすぐ目を向け、真剣な表情で読んでいる。


そして、読み終わると「ふう」と軽く息を吐いた。


一体、どんな文面なのだろうか?

そして付け加えた内容とはいかに……


気になったロジェであったが、こちらから聞くわけにはいかない。


今後の仕事に関し、指示を待つだけだ。


無言で待つロジェへ、マクシミリアン殿下は言う。


「うむ、このたびのシーニュ王国の献上品がとても気に入ったと書いてある」


……これは社交辞令でも良くある言葉だ。


多分礼状のひな型の中には、必ず入っているだろう。


問題はマルスリーヌ王女が、後から書き加えた部分である。


読んでいたマクシミリアン殿下も、気付いているらしい。


「後から書いたような箇所があるぞ」


来た!

とロジェは思う。


「何々……少しでも早く献上品を贈りたいという殿下のお心、マルスリーヌは、大変うれしゅうございます。引き続き、同じ使者にて良きお品をお送り頂ければと書いてあるぞ」


……という事は、つまり……


「今回の献上品作戦は大成功だ! よし! これで完全に決まった!」


相変わらず笑顔のマクシミリアン殿下は、真っすぐにロジェを見つめ、

そう言い放ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


何となく予想はつくのだが、ロジェは尋ねてみる事にする。


「あのマクシミリアン閣下」


「うむ、何だね、ロジェ君」


「完全に決まったと申しますと?」


「ああ、次の仕事にもロジェ君を指名させて貰おうと思ってな」


「はい、ありがとうございます。難度は今回の仕事と同じくらいと閣下はおっしゃっていましたね」


「おお、確かに言った。その通りの仕事だ。また同じ場所へ届けるだけだからな」


同じ場所へ? ……届けるだけ?


いや違うだろ?


同じ内容で3倍以上の報奨金のわけがない!


しかし、そんな反論をするわけにはいかない。


「と申しますと、閣下。再びパピヨン王国王都へ、自分が使いをすれば宜しいのですね?」


「うむ、但し……」


但し?

何だ?


「次に届けて貰うのは……恋文だよ」


こ、恋文!?


ラブレター!!


ま、まさか!!


ロジェはパピヨン王国の町、そして王都にて、


「勇者ラウルに対し、一方的に婚約破棄し、フリーとなったマルスリーヌ王女は、各国の王家へ、イケメン王子限定の条件付きで『婿募集』の触れを出した」とか、


「わがままな性格はともかく、容姿だけは抜群なマルスリーヌ王女には、何も知らない他国王家から、見合いの希望が結構来ている」とか、


「最近マルスリーヌ王女が婚活にとんでもなく力を入れ、どこか、この国より大きい国の王子を婿に狙っているらしいぞ」


などの噂を聞いていた。


最も気になったのは、王都で聞いた最後の噂だ。


マルスリーヌ王女が婚活にとんでもなく力を入れ、

どこか、この国より大きい国の王子を婿に狙っている……


まさか!


懸念していた事が!?


ロジェは驚くとともに心配となる。


目の前のマクシミリアン殿下は独身。

だが30代半ばを超えている。


一方、マルスリーヌ王女は18歳。

年齢差は結構なものだ。


そして、もし結婚したらマクシミリアン殿下が不幸になる事は確定的だ。


自分の二の舞を踏ませたくはない。


「おいおい、ロジェ君、何を驚いている?」


「はあ……」


「もしや、誤解していないだろうな? マルスリーヌ王女の相手は私ではないぞ! 私は昔、流行り病で亡くなった婚約者を一生愛すると決めている」


「で、ですか?」


良かった!

と安堵するロジェ。


しかし!!


更なる衝撃がロジェを襲う!!


「恋文の差出人は私の甥、つまり皇太子だ!」


「え!? そ、そうなのですか!!」


「ああ、甥は皇太子になる以前、パピヨン王国を訪問した際、舞踏会でマルスリーヌ王女と踊り、その美貌にひとめぼれしたそうだ」


「え? そうだったのですか?」


「ああ、しかし勇者ラウル・シャリエが現れ、王女と婚約したと聞き、一旦諦めたのだ」


「な、成程」


「だが、勇者ラウルは魔王を倒した後、能力を喪失し、自ら引退と婚約破棄を申し出た。そして魔物に喰われ、死んだと聞いたぞ」


……それ随分、事実を捻じ曲げていると、ロジェは思った。


マルスリーヌ王女はラウルを洗脳し、無理やり婚約。

利用価値がなくなると、一方的に婚約を破棄し、ラウルを追放したのだ。


父と自分が悪者にならないよう、大嘘の話を巷へ流布したに違いない。


マクシミリアン殿下の話は、更に続く。


「その後、フリーとなったマルスリーヌ王女は新たなパートナーを求めたと聞いた。

パートナーの条件は自分に相応しい王子である事。そして結婚相手の国とパピヨン王国を併合したいとも言っている。その話を聞いたウチの皇太子はとても前向きになり、破れた恋を取り戻そうとしているのだ」


「じ、事情は理解しました」


「うむ、上手く事が運べば、マルスリーヌ王女を次期王妃として迎え、このシーニュ王国とパピヨン王国が、ひとつの国となる。その為の恋文をロジェ君、君に運んで欲しいのだ」


マルスリーヌ王女へ恋文を送るのが、マクシミリアン殿下ではない事に、

ホッとしたのも束の間……


パピヨン王国王宮へ献上品を運んだのは、この壮大というか、

とんでもない計画の序章であった。


下手をすれば、このシーニュ王国王都へ、性悪なマルスリーヌ王女がやって来る!


そしてこの国は……間違いなく不幸になる。


そんなフラグが心の中に立ち、ロジェはひどく暗い気持ちになるのであった。

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