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第57話「そもそも報酬は、仕事内容の難度に比例すると、ロジェは考えている」

パピヨン王国王都の王宮を出たロジェは、「ふうっ」と軽く息を吐いた。


ロジェには絶対に正体を見抜かれない自信があった。

変身魔法で完璧な擬態を施していたはずなのだ。


だから年齢は全く違うし、顔も全く似ていないと、

マルスリーヌ王女から言われたと思う。


それなのに……王女はロジェを見て、はっきりと

死んだ勇者ラウル・シャリエに『雰囲気』が似ていると言い切ったのだ。


はあ?

雰囲気が似ているって?


どうして、分かったのか?

当てずっぽうかもしれない。

ロジェの正体が実はラウルだと、マルスリーヌ王女が知りはしないだろう。


『女子の勘は鋭い』と、(ちまた)ではいう。


ただ、直感的にロジェとラウルに共通点を感じ、言い放ったのだと思う。


よほどの事ではないと動じないロジェも、さすがに……「どきっ」とはしたのだ。


決して驚きを見せぬよう「そうですか?」とだけ返し、

改めて「失礼致します」と告げ、

王宮を出て来たが、昔からあることわざは、さすがだなと思った次第だった。


まあ、最後に変な『突っ込み』はあったのだが、

マルスリーヌ王女が献上品を確認した事でとりあえず、今回の仕事は完遂した。


さてさて!

王宮を出たロジェだが、例によってお約束の周囲警戒、

『索敵』『視認』によれば、パピヨン王国の尾行、監視はついていない。


さすがのマルスリーヌ王女も、そこまで念入りではなかったようだ。


であれば、少しこの王都内で情報収集をしてから戻ろうかという気になった。


先日の町のように、巷の噂を聞きたいと言う感じで、さりげなく尋ねる事にした。


昼の食事にと入った飲食店、またアメリー達へのおみゃげを兼ね、

これまたいろいろな店で様々な商品を買いながら、老若男女問わず、

いろいろと聞いて回る。


商人達は、商品が売れると機嫌が良くなり、口も良く回った。


重大な機密等ならまだしも、単なる噂話だから尚更だ。


しかし、得られた情報はこれまでと全く変わらなかった。


誰もが口裏を合わせたように同じコメントを発するのだ。


「いや~、景気は悪い、どんどん悪くなっているねえ。好景気のシーニュ王国がうらやましい」とか


「王と王女が出す施策、出す施策がことごとく失敗。完全に裏目になってるなあ」とか、


「魔王を倒した勇者ラウルが、油断して魔物に喰われ死んでから、この国はダメになったよ」とか、


「パピヨン王が年のせいか、ますます嫌味で頑固になっている」とか、


「勇者ラウルに対し、一方的に婚約破棄し、フリーとなったマルスリーヌ王女は、各国の王家へ、イケメン王子限定の条件付きで『婿募集』の触れを出した」とか、


「わがままな性格はともかく、容姿だけは抜群なマルスリーヌ王女には、何も知らない他国王家から、見合いの希望が結構来ている」とか、


唯一新しい情報としては、


「最近マルスリーヌ王女が婚活にとんでもなく力を入れ、どこか、この国より大きい国の王子を婿に狙っているらしいぞ」


との事だった。


どこか、この国より大きい国の王子!?

もしや!

と思ったが、これ以上、国民の口から裏は取れないだろう。


とりあえずこの『推測』はペンディングにしておこう。


昼食、買い物も済んだロジェは、パピヨン王国王都を後にしたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


正門で手続を済ませ、シーニュ王国王都へつながる街道へ出たロジェ。


後はシーニュ王国王都へ戻り、依頼完遂の手続きをし、

報奨金の残りを受け取るだけ。


その報奨金支払いまでの手続きはこうだ。


まずロジェが、冒険者ギルド職員のクリスへ『仮』の完遂報告を行う。

するとギルドから完遂報告連絡がマクシミリアン殿下のもとへ行く。


ギルドからの指示で改めてロジェから直接、マクシミリアン殿下へ完遂報告を行い、

マルスリーヌ王女からの国書を渡す。


最後に再びギルドへ赴き、『本』報告を行い、

残額の金貨150枚を受け取るという流れである。


とんでもなく煩雑で面倒だが、王家からの指名依頼なので、3者が情報を共有。

行き違いがないよう、念には念を入れよとの事で、

ギルドマスターからの指示らしい。


……街道を時速50㎞で走りながら、ロジェは考える。


ひとつだけ気になる事があるのだ。


それはマルスリーヌ王女から預かった礼状――『国書』である。


……ロジェを一旦呼び止め、ラウルに雰囲気が似ていると告げたあの時。


マルスリーヌ王女は渡した国書を、一旦自分へ戻すようロジェへ告げ、

侍女のチネッテにペンと新しい封筒を取りに行かせ、届けさせると、

それから封筒の封を切った。


そして礼状らしき中の紙片を取り出し、さらさらさらと何か書き加えたのだ。


書き終えると、マルスリーヌ王女は紙片を新しい封筒へ戻し、

再び封をしたのである。


果たして……王女が新たに書き加えた一文は一体何なのか?


気にはなるが、さすがに封を解き、取り出して見るわけにはいかない。


ギルドへ報告する際も、マルスリーヌ王女から国書を預かったと言い、

クリスに見せるだけとなろう。


当然ながら、ギルドといえども勝手に国書の開封は出来ない。


ロジェが国書を持ち帰った事のみを確認し、

更にロジェ経由でマクシミリアン殿下へ渡すだけだ。


まあ、良い。

国書を読んだマクシミリアン殿下から、何か言われるかもしれないし。


それより、次の報酬が金貨1,000枚だという、

仕事の発注はあるのだろうか?と思う。


そもそも報酬は、仕事内容の難度に比例すると、ロジェは考えている。


今回の仕事の3倍以上。

王都で小さな家が買えるくらいの金額が報酬とは、

どれほど難しい仕事なのだろうか?


そんな事をつらつら考えながら、ロジェはシーニュ王国王都へつながる街道を、

ひたすら走っていたのである。

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