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第56話「いきなりというか、一体どうしたというのだろう」

言葉には注意しなければならない。


言い方を間違えれば、国際問題になりかねない。


しかし、ロジェは臆することなく、きっぱりと言葉を発した。


「失礼致しました。自分はランクB冒険者ロジェ・アルノーと申します。シーニュ王国宰相マクシミリアン・シーニュ閣下の使いの者です。貴女様はマルスリーヌ王女様でしょうか?」


対してマルスリーヌ王女は、鼻がつんと天を向くような物言い。


「ふん! 普通なら卑しい冒険者ふぜいに口はきかないわ。でも王家の使者という事で仕方なく特別に答えてあげる。貴方、ロジェと言ったわね。さえないし、かっこ悪い名前!」


結構な罵詈雑言ではあるが、ロジェは華麗にスルー。


「はあ、それはどうも」


マルスリーヌ王女はエッヘンとふんぞり返り、声を張り上げる。


「この私が! パピヨン王国の高貴なる王女マルスリーヌ・パピヨンよ」


とりあえず『つかみ』はOKか。


ロジェは更に話を続ける。


「はい、おめにかかれて光栄です。ではマルスリーヌ王女様、貴女様のご質問にお答え致します。マクシミリアン閣下が自分を使者にお選びになったのは明確な理由があります」


「へえ~? 自分を使者に選んだ明確な理由ねえ? やけに自信たっぷりに言うじゃない」


「はい、自信はあります。自分はシーニュ王国ではナンバーワンに、足が速い冒険者ですから」


「あはは、シーニュ王国ナンバーワン、なの? 言うじゃない。でも軽々しい大言壮語は身を滅ぼすわよ」


「いいえ、大言壮語ではありません。更に申しますと私はこの世界で一番足の速い冒険者です。それゆえマクシミリアン閣下は、少しでも早く献上品をこちらへお届けしようと私を使者にお選びになったのです」


「ふ~ん、この世界で貴方が一番足の速い冒険者なの? 本当にとんでもない自信ね。馬よりも速く走れるって言うの?」


「はい、楽勝です。馬の種類にもよりますが、馬は最高速度時速70㎞で約5分間走れます。ゆっくり走ればもっと長い距離を走れますが、ね。しかし今回の旅で試してみましたが、自分は時速100㎞で1時間以上走れますので馬は絶対に追いついて来れません」


「わお! 凄いんだねえ! 機会があったら見せて頂戴!」


ロジェの言葉を聞き、喜んだマルスリーヌ王女は屈託なく笑った。


どうやらだいぶ機嫌が良くなったようだ。


それにしても、父とともにロジェを追放。

挙句の果てに殺そうとした、とんでもない悪女とは思えない可愛らしい笑顔である。


何も知らない男子なら、この可憐さに惚れ込んでしまうに違いない。


こうやって、騙されるんだよなと経験者であるロジェは心の中で苦笑。


更に更に、話を続ける事にした。


「……という事で、マルスリーヌ王女様。箱の中身をご確認頂いて、問題なければ自分の仕事は終了です。シーニュ王国へ戻らせて頂きます」


「うふふ、成程。私が箱の中身を確認するのね? じゃあチネッテ、蓋を取りなさいな。マクシミリアン殿下の親書には、シーニュ王国産のフルーツを贈ったと書いてあったわ」


「はっ、はい! マルスリーヌ王女様!」


マルスリーヌ王女に命じられ、

侍女のチネッテはロジェが運んだ箱の蓋を全て外した。


蓋を外した箱の中は全て、

みずみずしいシーニュ王国産のフルーツが詰められていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


みずみずしいフルーツを見て、マルスリーヌ王女はにやっと笑う。


「とりあえずマクシミリアン殿下が、フルーツを贈って私の機嫌を取りたいというのは分かったわ。ここにお礼を書いた私からの国書があるから、持ち帰ってくれる?」


白魚のような綺麗な手が一通の書面を持っていた。


このタイミングで、既に礼状があるのは早すぎる。

多分、数か所差し替え可能な共通のひな型文があるのであろう。


しかし、余計な事を言うのは野暮で愚の骨頂。


「かしこまりました」


と、ロジェは素直に書面を押し頂いた。


献上品の受け渡しは無事終了。


後片づけ命じられたチネッテは外された箱の蓋を元通りにし、

おまけのようについて来た傍若無人騎士が、

ロジェを気にして、びくびくしながら、魔導冷蔵庫の扉を閉めた。


とりあえずOK。

課せられた仕事は完遂した。


「では、これで失礼させて頂きます」


「ええ、殿下に宜しく言っておいて。次の献上品が楽しみだって」


「……分かりました」


相変わらず『強欲さ』は変わっていないマルスリーヌ王女。


心の中で苦笑するロジェ。


しかし……マクシミリアン殿下は、

マルスリーヌ王女と『お見合い』をするつもりなのだろうか?


確かにマクシミリアン殿下は独身。


しかし年齢差が15歳くらいあるけど、良いんだろうか?


そんな事を考えたロジェ。


一方マルスリーヌ王女は、声を張り上げ、


「チネッテ! この冒険者を出口まで案内して!」


と、ロジェを王宮外へ連れて行く事を命じた。


「は、はいっ! かしこまりました! マルスリーヌ王様!」


チネッテが返事をすると同時にロジェは深く一礼。


踵を返し、去ろうとした時である。


「冒険者! ちょっと待ちなさい!」


と、マルスリーヌ王女が呼び止めた。


「はい?」


と言い、ロジェが振り返ると、マルスリーヌ王女がぐぐっと顔を寄せて来る。


訝し気な表情をしていた。


「貴方……ロジェと言ったわね? 顔を良く見せてちょうだい」


いきなりというか、一体どうしたというのだろう。


戸惑うロジェであるが、マルスリーヌ王女は、満足げに「うんうん」と頷く。


「やっぱりね!」


きっぱりと言い切るマルスリーヌ王女。


「え? 何がでしょう?」


思わず尋ねるロジェ。


「可笑しい! 顔は全く似ていないけどさ、貴方、雰囲気が似てるのよ。魔物に喰われ、無様な最期を遂げた勇者にね」


マルスリーヌ王女はそう言うと、


けたけたけたと、面白そうに笑ったのである。

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