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第55話「言い方を間違えれば、国際問題になりかねない」

傲岸不遜な騎士を、軽度レベルの『威圧』スキルで、さくっとでねじふせた。


その光景を、傍らで目を真ん丸にして、呆然と見ている若い侍女へ、


「では、行きましょうか」


とロジェは、相変わらず微笑みながら声をかけた。


まるで何もなかったかのように……


侍女は戸惑いながらも歩き出す。


「はっ、はい」


「自分は、シーニュ王国王家のマクシミリアン閣下から託された荷物をお持ちしたのです。大箱3つで中身はフルーツなのですが、置いてOKの場所に案内して貰えますか?」


「わ、分かりました。ええっと、こちらです」


「ありがとうございます」


という事で、侍女に連れられ、ロジェは王宮のとある場所へ。


マルスリーヌ王女の命令により、王宮の隅から隅まで散々掃除したロジェである。


目をつぶっても、王宮の構造が浮かび、勝手が分かる。

案内されずとも、この荷物を保管する最適な場所も当然熟知していた。


思わず、ベストな保管場所は、大型魔導冷蔵庫が設置された倉庫ですね?

場所はあちらですよね?……と言いたくなる。


しかし、そんな事を言うのは愚の骨頂。

完全に墓穴を掘ってしまう。


なので、いかにも初見の場所ですよ。

というおぼつかない感じの足取りにするのを忘れなかった。


そしてロジェの予想通り、侍女が案内してくれたのは、

大型魔導冷蔵庫が設置された大型倉庫であった。


やはりとか、ビンゴ!という感じだ。


「こ、こちらへ、お、お願い致します!」


「はい、この魔導冷蔵庫へ入れれば、宜しいんですよね?」


「そ、そうですっ! い、今扉を開けます」


「お願いします」


侍女により、大型魔導冷蔵庫の巨大な扉が開けられた。


すかさずロジェは、収納の魔道具から、大箱3つを『搬出』


ひとつずつ抱え、大型魔導冷蔵庫へ『搬入』する。


これでよし!

ロジェは頷き、背後に立つ侍女へ振り返る。


「申し訳ありませんが、箱の蓋を外しますから、念の為、中を見て貰えます?」


「わ、私が?」


「ええ、中身はシーニュ王国産のフルーツで間違いないとは思いますが、一応確認をしてください」


「ええっと……どうしよう?」


いや……どうしよう?じゃないと思うけど。

この子は、無理やり行かされた感が半端ないけど、

確認の権限さえ持たされていないのか……


さっきの傍若無人な騎士といい、壊れて来てるな、王宮……

俺が居た頃は、まだ統制と規律がマシだったのに。

本当に、ダメダメになって来ているんだな、この国は……


少しだけ寂しげな眼差しとなったロジェ。


と、そこへ!


とんでもない気配がひとつ! この倉庫へ近づいて来たのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


この倉庫へ近づいて来たとんでもない気配……

それは何と何と何と! マルスリーヌ王女であった。


もうひとつ気配がある。


先ほどの傍若無人騎士のようだ。


どうやら、マクシミリアン殿下の使者が献上品を持って来たと、

報告を入れたのであろう。


そして献上品がどうか、使者はどんな奴かと興味津々に見に来たとか、

多分、そんなものである。


ロジェは正直、マルスリーヌ王女には会いたくない。

否、顔も二度と見たくはない。


だが、この状況でいきなり王宮を出るわけにはいかない。


腹を据えて、王女と相対するしかないのだ。


やがて……そのマルスリーヌ王女の声が響いて来る。


「チネッテ! チネッテ! 一体どこに居るのお! さっさと返事をしなさ~~いっ!」


名前を連呼しながらこちらへ近づくマルスリーヌ王女。


久々に元婚約者の声を聞くが、ロジェに懐かしさは皆無だ。


そして王女が叫ぶ……チネッテとは、この若い侍女の名前であろう。


案の定、侍女は滝汗で焦りまくり、


「王女様ああ!! マルスリーヌ王女様ああ!! 第3倉庫ですうう!! チネッテは第3倉庫に居りますうう!! ご使者も一緒ですうう!!」


と、あらん限りの声で叫んだ。


マルスリーヌ王女は容姿端麗、身体健康、五感抜群、90%は完璧女子なのに、

性格だけは最悪という残念王女。


チネッテの声を聞きつけ、王女はすぐ反応。


「分かったああ!! 第3倉庫ねええ!! そこに居なさ~~い!! ぜ~ったい、動くんじゃないわよおお!!」


と、やはり絶叫に近い声で返して来た。


やれやれ、相変わらずだと嘆息するロジェ。


……それから間もなく、マルスリーヌ王女はロジェと侍女の居る第3倉庫に現れた。


久々の再会である。

しかしやはりというか、ロジェは何も感じない。


王女の背後には、やはりあの傲慢騎士が居て、ちらとロジェを見て、

ロジェが見返すと、慌てて視線を外した。


さあ、この状況でどうするか?


しかしロジェは即座に言う。


「あの……重ね重ね申し訳ありませんが、蓋を外しますから、念の為、中を見て貰えますでしょうか? 中身はシーニュ王国産のフルーツで間違いないとは思いますが、一応確認をしてくださいませ」


……先ほど侍女―チネッテへ告げた言葉を繰り返した。


そのロジェの言葉を聞き、マルスリーヌ王女はニヤッと笑い、

ずかずかずかと歩き、近寄って来る。


そして、ロジェの真ん前に立ち、ふんと鼻息荒く言う。


「へえ、貴方が使者なの? 随分若いわね。それも身分の低い冒険者を寄こすなんて、マクシミリアン殿は、私と我がパピヨン王国を馬鹿にしているのかしら?」


いきなり上から目線で言いたい放題。


まあ、王女だから当たり前かもしれないが、ここでどう切り返すかは、

ロジェの才覚である。


言葉には注意しなければならない。


言い方を間違えれば、国際問題になりかねない。


しかし、ロジェは臆することなく、きっぱりと言葉を発したのである。

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