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第54話「さもないと……潰すぞ!」

久々に歩くパピヨン王国王都の街並は全く変わっていなかった。


だが、雰囲気は一変している。


やはりというか、活気というものが全くないのだ。


道行く人々は、殆どがうつむき加減で表情は暗く、口数が極端に少ない。


現在ロジェが住まう、にぎやかなシーニュ王国王都とは大違いで、

どよ~んとした重い空気がのしかかっていた。


500㎞離れた町でさえ、結構厭世的な雰囲気だったから、

王都のこういう状況はある程度想像はしていたが、遥かにそれ以上であった。


……マジで本当にヤバいのかな、我が故国は?


ロジェはとても気になったが、

王都内で他国の冒険者がいきなり聞いて回るのも怪しすぎるし、

まずは自分の仕事をやり終えてしまおう……それが良いと考え直す。


その後の情報収集のやり方は、じっくりと考えようと。


ロジェはそう決めて、王宮へ。


王宮へは、何度も何度も通った、勝手知ったる道である。


しかし生まれて初めてこの街へ来る冒険者が、

まるで自分の庭のように慣れている趣きでふるまうのもいかがなものか?


それゆえ、ロジェはパピヨン王国王都の地図を取り出し、

「すみません」と何人かに道を尋ねながら、王宮を目指した。


当然、いく通りか知っている『王宮への近道』などは使わない。


そんなこんなで、王都入場後、約30分で王宮へ到着したロジェ。


正門を警護する、身長2mはあるのかと思われる、

大柄でいかめしい表情の騎士へ話しかける。


「あの~……すみません……」


「ふん……何だ? ガキ」


まるでゴミでも見るように、騎士はロジェを見下ろすように一瞥した。


対してロジェは丁寧な物言いで、


「はい、お忙しいところ恐縮ですが、自分は、ランクB冒険者のロジェ・アルノーと申しまして、シーニュ王国王家宰相、マクシミリアン閣下の使者なのですが、こちらの王宮へ、お届け物を持って伺いました」


と言い、預かった差出人がマクシミリアンと署名された『親書』を差し出した。


……通常は、相手が他国の王弟で宰相の使者であれば、ここで騎士の態度が一変。


「おおっ! これはこれは大変失礼致しました! ご苦労様です! ささ! どうぞ! ご案内致します!」


と丁寧な対応になるところだが……


「ああ、そうかい。じゃあ、ここで、このまま待ってろや」


と、しかめっ面で面倒くさそうに、吐き捨てるがごとく言う始末。


そして騎士は大声で奥へ向かい、


「お~い! シーニュ王国王家の使者だっていうガキの冒険者が来たとよ! 誰か、侍従長へ伝えに行け!」


と叫んだ。


……そしてそのまま何と! 1時間放置。


他国の王家からの使者に対し、信じられない対応であった。


どうしたものかと、ロジェが思っていれば、


何と何と! ロジェの訪問を受けた騎士が何と逆切れ。


「おい、こらあ! いつまでこのきったね~ガキ冒険者を放っておく気だ! さっさと対応しろと、クソな侍従長へすぐ言え~!」


と、奥へ向かい、更に口汚くわめく。


……やはり王と王女が最低レベルの暗愚だと、配下もこうして腐って行くのか。


何もなかったように、笑顔で対応待ちするロジェは、心の中で苦笑したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


王宮を訪れたロジェが1時間待って、更に30分あまりが経ち、

ようやく侍従長配下の侍女らしき者が駆けて来た。


ひいはあふうと、息も絶え絶えになりながら、ロジェの前に来ると、


「も、も、申し訳ございません! お、お、お待たせ致しましたあ!」


盛大に噛みながら、声を張り上げ、ぺこぺこぺこと頭を下げた。


来た侍女を見て、若いと思った。


15歳に擬態した自分と同じくらいの年齢の侍女だろうか。


若いから下っ端というわけではないだろうが、上席の侍女とは思えなかった。


しかし、今こだわるべき論点はそこではない。


「いえいえ、大丈夫ですよ」


微笑んだロジェではあるが、


「ちっ! 能なしめ! 俺が呼んだら、すぐ来いっての! 本当に使えない侍従長に、ガキアマだ!」


とまたも騎士が暴言を吐いた。


横着し、自分の仕事をしない騎士。


少しだけ、おしおきをしてやろうとロジェは思い、


ぎん!とごくごく軽い、『魔王の威圧』を騎士へ放った。


「ひ! ひえっ!」


ロジェにしてみれば、ほんのあいさつ代わりの威圧だが、

騎士にとっては、底知れぬ威圧に感じてしまう。


それゆえ騎士は情けなくも腰を抜かし、ぺたんとその場に座り込んでしまった。


「騎士様には、もう少し、ちゃんとした対応をして頂きたいと思います。これ、自分個人の意見です」


何事もないように、しれっと言うロジェ。


更に、にっこりと笑い、じっと騎士を見る。


「今後は、責任をもってきちんとお仕事をしましょうね、騎士様」


「……………………………………………………」


「ええっと、ご返事は?」


「わ、わ、分かった!」


「くれぐれも侍女さんに八つ当たりはいけませんよ……分かっていますね?」


さもないと……潰すぞ!


という鋭い殺気を放つロジェ。


対して、騎士はピン!と背筋が伸びる。


「わわわ、分かりましたあ!」


「じゃあ、さっさと立ってくださいな。たまたま気分が悪くなって座っただけなのに、周囲から変に思われますよ」


ロジェはそう言いつつ、今度は軽度の回復魔法を放った。


回復魔法は効果てきめん。


騎士の心身に力がよみがえる。


「あ、ああ……」


と頼りない声を出し、何とか立ち上がった。


その光景を、傍らで呆然と見ている若い侍女へ、


「では、行きましょうか」


とロジェは、相変わらず微笑みながら声をかけたのである。

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