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第53話「最悪な思い出しかない故郷なのに、俺には望郷の念が残っていたのかよ……」

パピヨン王国王都から約500㎞離れた町を出発したロジェ。


暗愚な王とマルスリーヌ王女が原因で、

『滅亡フラグ』が立ってしまった故国をどうするのか?と、

ひと晩考え抜いたが、……結局、結論は出なかった。


まあ、良い。


表向きの快速時速50㎞で約10日間かけ、パピヨン王国王都まで行くと、

冒険者ギルドは勿論、アメリー達へも伝えてある。


であれば、到着予定日までは、後9日間もある。


ゆっくり旅を楽しみながら、じっくりと考えれば良い。


但し、ここは故国であり、勇者ラウルの勇さましい姿、

そして容姿を(おぼ)えている者も多いに違いない。


でも40歳平凡地味オジ旅の商人と、勇者ラウルを結びつけるものは何もないから、

しばらくは目立たないこの姿で、行くとするか。


ぱっと見で、正体を見抜くのは到底困難だろう。


……という事で、ロジェはオジ姿で偽名を名乗り、旅を続けたのである。


そしてロジェの旅の方針、基本的には、予定を立てず、

泊まろうと思った町村の宿屋で夜を明かした。


念の為と思い、テント等、キャンプセットも用意してあったから、

たまには宿屋へ泊らずに、野宿したり、転移魔法、飛翔魔法を使いながら、

満天の星空を楽しみつつ、徹夜で夜旅を楽しんだりもする。


この世界で野宿や夜旅は、魔物や賊の襲撃など、大変な危険を伴う。


まあ、勇者プラス魔王の能力をを持つロジェならば、

よほど油断をしない限り、この地上で負ける相手は居ない。


一応、防犯対策は、ばっちりである。


お約束の索敵で外敵の気配を察知したり、猫型肉食獣のように夜目も効き、

3㎞先も見通せるから、視認もパーフェクト。


基本的に外敵は戦わず避けるのだが、

時にはゴブリン、オークなどの魔物を倒したり、

追いはぎ、強盗など人間の賊を無力化したりもした。


ロジェは勇者ラウルとして覚醒する前は、両親と早く死に別れ、

生きるのに精いっぱい。

日々、早朝から深夜まで仕事に追われていた。


勇者として覚醒してからも、王宮で訓練に明け暮れ、

完全覚醒した後は、魔王以下魔王軍数百万との戦いに明け暮れた。


勇者としてずっと、馬車馬のようにこき使われ、働きづめだったロジェ。


これまでの人生はロジェにとって、ただただ生き抜く為の戦いであった。


しかし……今は、全く違う。


ややこしい人間関係に悩むことなく、愛する女子アメリーが居て、

課せられた仕事をしっかりこなしながら、満足のいく収入を得る。

気が向いた時にはたっぷり休むという毎日。


生まれて初めてといえる、全く経験した事がない、

自由度の高い、こんなメリハリのある暮らし方が、とても楽しかった。


魔王討伐を果たし、この世界を救ったのに、理不尽に婚約破棄され、城を放逐。

『殺された勇者』と偽り、故国パピヨン王国を脱出。


抜け勇者として世を忍び、

15歳の少年から、40歳のオジまで、様々な擬態をこなすロジェでも、

本来はラウル・シャリエという20歳の青年である。


まだまだ若く、人生をやり直すのは、充分に間に合うのだ。


さてさて!

そんなこんなで……パピヨン王国王都まで後、30㎞の町へ到達したロジェ。


明日がシーニュ王国王都を出発して10日目。


いよいよ明日は、パピヨン王国王都へ入る。


行先は因縁の場所である王宮……まだ『結論』は出していない。


変身魔法による擬態は完璧、絶対に正体は「ばれない」と思いつつ、

ロジェは少しだけどきどきし、宿で眠りについたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌朝……宿をチェックアウトし、ロジェは出発した。


町を出て街道を歩き、人影がなくなったのを見計らい、

変身魔法を発動、ロジェの姿へ戻る。


シーニュ王国宰相マクシミリアン殿下の使者は、

ランクB冒険者ロジェ・アルノーなのだから、本来の姿にならないとまずいからだ。


よくよく考えてみれば、ロジェの姿も擬態なのだが、細かい事は置いておこう。


さあ、これでよし!


ロジェは頷き、走り出す。


時速50㎞とはいかずとも、時速30㎞から40㎞で街道を軽快に走る。


これだけ抑えた速度でも、1時間かからずに、パピヨン王国王都へ到着する計算だ。


そして……久々に見る散々馴染んだ王都正門が見えて来ると、

もう未練はないと、吹っ切って出て来たはずなのに……

不可思議な感情がこみ上げ、ロジェの目には涙が浮かんだ。


そんな自分に驚き、思わず立ち止まる。


散々利用され、ポイ捨てされ、挙句の果てに殺されかけた……

最悪な思い出しかない故郷なのに、俺には望郷の念が残っていたのかよ……


苦笑するロジェだが、このままではいかんと、ハンカチで涙を拭き、

ふうと大きく息を吐き、パンパンと軽く頬を叩き、

しっかりした足取りで再び歩き出す。


パピヨン王国王都正門でも、入国を待つ人々が列を作っている。


訪問の趣旨を伝えれば、配慮され、時間をかけずに入場可能だが、

時間はたっぷりあるし、目立つのでやらない。


やがてロジェの番が来て、門番にランクBの所属登録証を提示。


偶然にも、入場を受け付けた門番は、

ロジェが『追放』された時の門番と同じであった。


当然門番は目の前に居る15歳の少年が、

「追放されオーガキングに喰い殺された」勇者ラウルだと分かるはずもない。


笑顔で、「ようこそ」と言ってくれた。


「こういう事もあるんだなあ」と、素知らぬふりをしたロジェは、

門番へ対応の礼を言い、パピヨン王国王都へ足を踏み入れたのである。

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