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第51話「よし、ここからは、ゆっくりめのジョギングレベルで走って行くか」

王弟で王国宰相マクシミリアン殿下の屋敷へ訪問し、

……3日後の朝6時。


シーニュ王国王都を出発したロジェは、

街道を表向きのスピード時速50㎞で駆けていた。


天気は快晴。

気持ちの良い朝。


賊や魔の妨害も皆無。


マクシミリアン殿下からは、許可を得たので、アメリー達へは、


「ランクBのランカーとなり、王家の仕事を請け負い、10日ほどかけてパピヨン王国王都へ行く。1か月後には戻ってきます」


とシンプルに言ったら、「出世したねえ」「気を付けてね」と大喜びしてくれた。


そのアメリーは、例によってナタンのボディーガードで完全警護され、


「寂しいですが、我慢します。絶対、無事で帰って来てくださいね」と、

情感たっぷりに見送ってくれた。


全てが順調! ……のはずである。


しかし、街道を走るロジェの表情はさえない。


いつものように笑顔がない。


その理由は、はっきりしていた。


やはりというか、ギルドで感じた、あの悪い予感は当たったのだ。


そう、驚いた事にマクシミリアン殿下からの依頼は、

二度と戻りたくない故国パピヨン王国王都へのお使いであったからだ。


その後で告げられた衝撃の事実。


何と何と何と! ピンポイントで最悪なお使い先。

ロジェが赴くのは、パピヨン王とマルスリーヌ王女父娘が住まう、

因縁の場所『パピヨン王国王宮』へのお使いだったのである。


ロジェは心の中で、愚痴る愚痴る。


参ったなあ、よりによってパピヨン王国王都の王宮へ届け物かよ。

あんな最悪な場所……もう二度と行かないぞと思っていたのに。


ちなみに、ロジェが収納の魔道具へ仕舞い、運搬する荷物は大きな箱3つ。

気になる中身はシーニュ王国の名産品各種フルーツであり、

用途は『献上品』である。


そう、ロジェはシーニュ王国宰相の使者として、

パピヨン王国王都へと走っているのだ。


幸いと言うか、ランクBのランカーとはいえ、ロジェは市井のいち平民冒険者。

さすがに因縁の相手である王と王女に直接謁見し、品物を渡すわけではない。


段取りとして、侍従長付きの侍女へ託し、そのまま帰ってくれば良いと、

マクシミリアン殿下からは言われていたのだ。


とりあえず、王とマルスリーヌ王女に会わないのはラッキー。

変身魔法はパーフェクトだし、侍女さんにさくっと渡し、速攻で帰って来よう。

そして堂々と報奨金、金貨200枚を受け取るんだ。


ただ心配事がひとつ。


このトライアルをこなしたら、

次にマクシミリアン殿下が依頼するという『大きい仕事』の方が気になる。


多分またパピヨン王国王都宛に何かを運ぶのだろうが……

何かとは、一体、どんなものを運ぶというのだろうか?


ひと通り悩んだロジェだが、しれっとポジティブに切り替える。


まあ、良いや。

今からくよくよ悩んでも仕方がない。

状況が見えて来たら、しっかりと準備をし、対応しよう。

とりあえずは、目の前の仕事に注力する事。


そんなこんなで、つらつら考えていたら、ちょうど通行人が途絶えた。


よし! 良いタイミングだ。


転移魔法を使い、一気にスキップしよう。


ついでに最長転移距離を試しておくか。

これまで、試すたびに跳べる距離は延び、最長転移距離記録を更新していた。


ロジェは実感する。

勇者プラス魔王の叩きだす能力値は、底を見せる事がないと。


転移!


……その瞬間!


ロジェの姿は煙のように消え失せたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ひとけのない街道脇の雑木林に現れたロジェは満足そうに頷いていた。


最長転移距離がまた延びたのだ。


ロジェは転移魔法で、一気に2,000Km跳んだのである。


よし! もう一丁!


再び転移魔法を発動し、更に2,500㎞跳躍に挑み、見事に成功!


都合、総転移距離4,500㎞。


これで5,000㎞のうち、9割をクリアした。


索敵と視認で確かめたが、……周囲に人影はない。

既にパピヨン王国領内へ入っている。


一気にパピヨン王国王都へ『突入』可能なペースであったが、

ロジェは無理をしなかった。


ここで念の為にロジェは、変身魔法で全くの別人へ擬態。


15歳の若々しい少年から、40歳の地味などこにでも居そうなおじさんへ変化。

髪、瞳の色、体型も変えた。


何故変身したかというと、

ロジェを知る人に遭遇する確率は著しく低いが、万が一目撃され、

「どうしてこの日、この場所に居るのか?」「ありえないだろ」等々、

変に突っ込まれない為に風貌を変えたのである。


また、この姿であれば堂々と宿屋へ宿泊出来る。


更に足取りがつかめないようにするのなら、何度も変身を繰り返せば良い。


さてさて!

ロジェは立ち止まって地図を見た。


マクシミリアン殿下から依頼を受け、改めてパピヨン王国王都へ至るまでの、

詳しい地図を購入している。


地図によれば、ここから一番最寄りの町は10㎞ほど先である。


そのまた次の町は100㎞ほど進まないと到着出来ない。


パピヨン王国の王都へ入る前に、もう一度じっくり考えたり、

心構えをする時間が必要かも。


……それに次の町からは『何か』を感じる。


ここは自分の『勘』を信じよう。


どうせ、目的地――パピヨン王国王都に早く行きすぎたら、

いろいろと問題が発生するし。


決めた!


今日は10㎞先の町に泊まろう。


そして町の近くまで行ったら、適当な場所から中へ転移してしまおう。


冷静沈着、とても慎重なロジェだが、決断力に欠けているわけではない。


また一回決断すれば、行動も早い。


よし、ここからは、ゆっくりめのジョギングレベルで走って行くか。


1時間も走れば、到着するだろう。


スケジュールを決め、満足そうに頷いたロジェは、

再び、たったったっと、軽快に走り出したのである。

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