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第50話「驚いたロジェは思いっきり噛んでしまった」

番犬達をパーフェクトテイムで無力化し、微笑んだロジェはおもむろに、

正門に備え付けられた魔導ベルを押して鳴らし、訪問を(しら)せた。


りんご~ん!!りんご~ん!!りんご~ん!!


邸内に魔導ベルの呼び出しがけたたましく鳴り響いても、

番犬達は驚かず、また微動だにせず、柵越しにじっとロジェの前で待機している。


そうこうしているうちに、ロジェの索敵に反応があり、邸内では人の動きがあった。


……ある部屋から、正門前に居るロジェを見張っていたらしい、

マクシミリアン殿下と護衛の騎士達がやって来るのだと分かった。


……やがて護衛の騎士達に守られた、

長身痩躯の30代半ばくらい、スマートなひげをたくわえたイケオジが現れた。


やはり、そうだ。

ロジェはイケオジを見て、すぐに分かった。


現れたのはこの屋敷の主、王弟で宰相、マクシミリアン殿下である。


しかし何故、ロジェがマクシミリアン殿下の風貌を知っているのか?


……実はロジェが勇者ラウルであった頃、

シーニュ王国へ遠征した魔王軍掃討の際、

「ごくろうさま」とお声がけをされた事があったのだ。


なのでお互いに面識はあるのだが、

あくまで他国パピヨン王国所属の勇者という事で、深い付き合いではない。


更に言えば、ロジェの変身魔法は完璧だ。


年齢、容姿が全く違うロジェを、

マクシミリアン殿下が「勇者ラウルだ!」と見破る事は不可能なのである。


さてさて!

騎士長らしきやや年かさの騎士は、ひどくおとなしくなった番犬達を見て、

「おいおい! 信じられんぞ!」というように驚いて目を真ん丸、

怪訝な表情をし、ロジェへ呼びかける。


「……お、お前がロジェ・アルノーなのか?」


対して、ロジェは淡々と答える。


「はい、自分がロジェ・アルノーです。ご依頼された件で伺いました」


普通の冒険者ならば、取次なしで、挙句の果てに、

番犬達にガンガン吠えられ、脅かされた事を不満に思うかもしれない。


しかしパピヨン王とマルスリーヌ王女から、

メンタルを散々鍛えられたロジェは平気の平左、全く動じず、微笑んでいた。


と、ここで、唐突に「はははははは!」と大きな笑い声が起こった。


いきなり大笑いしたのは、マクシミリアン殿下である。


マクシミリアン殿下は、ロジェを見て、うんうんと満足そうに頷く。


「はははは、凄いなロジェ君は。郵便省局長から聞いた通りだ。足が速いだけではなく、肝が据わっているとな」


そう言うとマクシミリアン殿下は更に言う。


「柵越しとはいえ、どう猛なウチの番犬から一斉に吠えかけられても、全く動じず、穏やかで堂々としている。良い度胸だよ」


やはり犬をけしかけられた?のはテストだった。


「…………………………………………」


マクシミリアン殿下の言葉を聞いたロジェは黙って一礼した。


こういう時に、余計な事を言うのは野暮だから。


マクシミリアン殿下は笑顔で、言い放つ。


「よし! 一次テストは文句なしの合格だ。さあ、中へ入ってくれ。改めて依頼について説明しよう……騎士長、正門を開けてやってくれないか」


「は! 閣下! 了解致しました! ……おい、お前達、正門を開けろ!」


騎士長に命じられ、数人の騎士達が施錠を解除。

がらがらがらと、正門を開けたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


マクシミリアン殿下の屋敷内にある謁見の間に通されたロジェ。


少し高い壇上からロジェを見下ろすマクシミリアン殿下の周囲は、

騎士長他の護衛の騎士達が固めていた。


対してロジェは、10mほど離れた場所に平民の冒険者らしく(ひざまず)く。


そんなロジェへ対し、マクシミリアン殿下は声を張り上げる。


「ロジェ・アルノー君! 冒険者ギルドから聞いているだろうが、大きな事をお願いする前に、トライアルとして君へ使いを頼みたいんだ」


「大きな事をお願いする前に、トライアルでお使いですか?」


「ああ、その通りだ。誤解しないで欲しいが、今回も、後でお願いする大きな事も、難度自体は高くない。君がいつもこなしている仕事の通り、やってくれればOKだ」


「難度自体は高くない? 自分がいつもの通り行えば……そうなのですか」


「ああ、大きな事も今回もやる事は、君の普段の仕事とほぼ同じ、安全に確実に届けるだけだ」


「成る程ですね」


「うむ、但しだ。行って貰う先は、いつも君がやってくれている場所より、遥かに遠いがな」


「遠いと、申しますと?」


「ああ、ロジェ君へお使いに行って貰うのはパピヨン王国王都だ」


「え!? パ、パ、パピヨン王国うう!?」


よ、よりによって!!

故国パピヨン王国うう!!


驚いたロジェは思いっきり噛んでしまった。


ロジェの反応を、マクシミリアン殿下が見て、首を傾げる。


「おいおい、どうした、そんなに驚いて……というかきょどっていないか?」


「い、いえ……きょどっていません……」


「ふうむ……君は、パピヨン王国とは何の関係もない、パピヨン王国の隣国キャナール王国の出身だろう?」


マクシミリアン殿下はズバリ言った。


さすがにロジェの偽プロフを把握していた。


「そ、そうです……」


「おいおい、それにしてはロジェ君の反応が凄かったぞ」


「い、いえ! 閣下のお気のせいだと思います」


「……分かった。まあ良いだろう。改めて言おう。トライアルというのはな、この王都から約5,000㎞離れたパピヨン王国王都へ使いをして欲しいのだ」


……行先を聞いてびっくししたが、まあ、こういう事もある。


「か、かしこまりましたあ!」


思い直してようやく落ち着いたロジェは、マクシミリアン殿下の依頼に対し、

承諾の返事を戻したのである。

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