第48話「……すんげえ、嫌な予感がする」
馬車荷便の代役を無事にこなしたロジェ。
その後も3回ほど無事にこなし、評判が著しく上がって行った。
それもそのはず、初回こそもろもろあって1泊2日かけて戻って来たが、
その後の3回は全て日帰り。
それも表向きのスピード時速50㎞走行により、作業時間と休憩を入れ、
往復たった12時間で王都へ戻って来るのだ。
これまでの馬車荷便だと約4倍の4日間かかっていた。
しかしロジェは無事故に加え、とんでもなく早く行って戻って来るから、
クライアントの評判が爆上がりするのも無理はなかった。
こうなるとクライアント全てからルートの延長及び、
赴く町の追加という要望が出たのも当たり前である。
結果、走行距離は100㎞から300㎞、
3つの町村から10の町村を巡る依頼が、冒険者ギルド経由で来た。
対してロジェも、快く受諾。
賃金が、金貨100枚から金貨500枚へ大幅アップするだけではなく、
転移魔法を活用し、上手くやれば、
更に自身の時間が更に多く作れるので願ったり、かなったりであった。
こうなると王都に不在という状況が増え、アメリーはひどく寂しがったが、
これからの人生設計において先立つものは金である。
まず金を稼ぎ、がっつり貯金をしながら、自身の能力テストを存分に行うのには、
この仕事がベストなのだとロジェは実感していた。
また街道とその周辺に跋扈していた人間の賊や魔物の掃討も行い、
治安も良くなったので言う事はなかった。
評判に比例して頻度も増え、今や月に7回は出発。
王都から延びる街道を駆け巡る生活だ。
こうして……あっという間に金がたまり、得た能力のスペックも把握。
ロジェの第二の人生は順風満帆といったところ。
稀有な速足を称賛され、いつのまにか『疾風のロジェ』という、
ふたつ名で呼ばれるようにもなった。
そんなこんなで3か月が過ぎ……
とある日、冒険者ギルド職員のクリスから、呼び出しの連絡があった。
何だろう?
昨日、業務を遂行し、王都へ戻って来たばかりである。
本当は全く平気なのだが、表向きを考え……
一応、体力面との兼ね合いという形で、
業務を遂行すると、中4日から中5日は開けて貰っている。
なのに連絡して来たのは、
間を置かず、出発という事だろうか?
最近は白鳥亭へ手紙で発注をして貰っていたので、
いつもと違うとは感じていた。
ギルドへ赴くと、受付経由、クリスの先導でロジェは応接室へ通される。
クリスから、ソファへかけるように言われ、一礼し、座ると早速打合せが始まった。
「 お疲れ様です、クリスさん」
「はい、お疲れ様です、疾風のロジェさん。今日お呼びだてして、わざわざ来ていただいたのは、まずはランクアップのお知らせなんです」
「え? 俺がランクアップ? もう……ですか?」
ランクCの冒険者になってからまだ4か月くらいしか経っていない。
いくら何でも早すぎるだろ?と、ロジェは首を傾げたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しかしクリスはニコニコし、ミスリル製の新たな所属登録証を差し出して来た。
表面には『ランクB』と大きく記載されている。
「ランクCの所属登録証はこちらでお預かりし、引き換えにこちらをお渡しします」
「はい、じゃあ、お返しします」
ロジェは言われた通り、ランクCの所属登録証をクリスへ渡し、
代わりにランクBの所属登録証を受け取った。
「これでロジェさんもランクB……ランカーです」
……クリスの言葉が心にしみる。
普通に嬉しかった。
これで、自分もランカー、一流冒険者の仲間入りであると。
「ところでロジェさん、以前私がした説明を憶えていますか?」
クリスがしてくれた説明……
ロジェはすぐピンと来た。
このランクアップには事情がある。
勇者の時もそうであったが、魔王の能力が加わり、
記憶力と勘が異常に鋭くなっていた。
……ラッシュで思い出しましたが、残念ながら準ランカー以下の冒険者は、特例以外に指名依頼は認められていません。これはトラブル防止の為です。
そう、ランクB以上のランカーのみ、指名依頼が認められるのだ。
「はい、もしかして俺へ、指名依頼が来たのでしょうか?」
「ははは、さすがですね、ロジェさん。私の説明を憶えていましたか」
ビンゴ! 大当たりであった。
しかし、指名依頼って……どこから?
もしかして、とんでもないところだろうか?
そして今、受諾している仕事との兼ね合いはどうするのだろうか?
折り合いはつくのだろうか?
そんな事をロジェが考えていると、
「ロジェさん、今回の指名依頼は全ての依頼に対し、最優先されます。どこも文句は言えないのです」
「え?」
今回の指名依頼は全ての依頼に対し、最優先され、どこも文句は言えないだと?
……すんげえ、嫌な予感がする。
「あの、もしかして……」
「はい! ロジェさん! 今回はシーニュ王国王家からの依頼が入ったのですよ!」
うわ!
またまたビンゴ!
大当たりしてしまった!
「では! シーニュ王国王家からの依頼について、詳しいご説明を致しますね」
一方的に、きっぱり言い切るクリス。
どうやら簡単には断れないようだ。
仕方がない。
ここは覚悟を決めて依頼の概要を聞くしかない。
「分かりました、クリスさん。宜しくお願い致します」
再び丁寧に一礼したロジェは心して説明を聞く態勢に入ったのである。
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