第46話「トータル所要時間は、100㎞を約2時間で走破、休憩ありという事にしようか」
『さあ、更に、論より証拠だ!』
ロジェがそう言い、収納の魔道具から、どさっと出したのは……
先ほど倒したばかり、かつてオーク3,000体を率いていたボス、
オークキングの死骸だった。
ロジェに急所を拳で打ち抜かれ、目をむいて絶命したオークキングの死骸。
ユーグはそれを見て驚愕、ぺたんと腰を抜かしてしまう。
『な、な、な、なんにゃそにゃ~~!!!???』
何だ、そりゃ~っと言ったのだろう。
心の声に加え、猫ならではの絶叫が付近にこだまする。
ふぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ~~~っっっ!!!!!
絶叫するユーグへロジェは、きっぱりと言う。
『何じゃ、そりゃって、見ての通りオークキングの死骸だ』
『はあっ!?』
『お前が隠れて見たオークの大群のボスって、コイツだろ?』
『!!!…………ま、ま、待て!! よ、よ、良く見直してみるにゃ!!』
『おう、穴が開くくらいじっくりと見てみろよ』
ユーグはロジェの言葉通り、
目の前に横たわるオークキングの死骸を、まじまじと眺めた。
超凝視というレベルで。
そして数分が経った。
『…………………………………………ま、ま、間違いにゃい!!』
ようやく言葉を発したユーグは更に、
『け、毛並みと凶悪顔を憶えている!! お、俺が見たの群れのボスはコイツだ!!』
『そうか、良かった』
ロジェの言葉を聞き、ハッとしたユーグ。
『だ、だが!! よ、良く倒せたなっ!! ど、どうやったんだ!?』
『いや、普通に倒したし、手間はかからなかったよ』
『はああっ!? 普通に倒した!? 手間はかからなかっただと!? そ、そんな馬鹿にゃ!! 上位種のコイツだけでもすんげえ強敵なのに、周りにはコイツの手下が3,000体は居たはずにゃ!!』
『ああ、そいつらも一緒に倒したよ。ざっと15分ちょいってとこだったかな』
『じゅ!? 15分!!!??? オークキングと3,000体のオークをかあ!!??』
『ああ、遠くに奴らの残党が居るかもしれんが、当面の脅威は去っただろ? お前の心配もひとまず持ち越しという感じじゃないか』
『あ、ああ……』
絶句するユーグをよそに、
ロジェはオークキングの死骸をぱっと収納の魔道具へ戻した。
『……というわけで、町へ戻るぞ、ユーグ。また転移魔法を発動するからな』
その瞬間!!
ロジェの転移魔法が発動。
周囲の景色がまたも変わり、ユーグが見慣れた町の風景が目に入って来た。
元居た町へ戻ったのである。
事前に索敵でチェックしておいたので、人影は全くない。
『ははは、ユーグ、大丈夫か? さっきみたいに気持ち悪くないか?』
対して、ユーグは驚きの連続で目を真ん丸にして、
『だ、大丈夫にゃ! い、いや、大丈夫ですにゃ!』
と言うのがやっとだった。
転移魔法に、単身でオークキング以下3,000体の15分討伐と、
あまりにも物凄いロジェのスケールに圧倒されていたのである。
そんなユーグを見て、ロジェは柔らかく微笑み、
『おう、そうか。じゃあ、俺はそろそろ王都へ戻る。早くこの町の一般猫達を安心させてやれ』
ロジェの言葉は思いやりに満ちていた。
ユーグの眼差しに尊敬の念がこもる。
返事も気合が入る。
『は、はいっ!』
『そしてナタンへはお前が逃げず、身を挺して、一般猫を守ろうとしたって、しっかり伝えておくからな』
手を振り、踵を返し歩いて行くロジェ。
そのロジェの背に向かいユーグは、
『あ、ありがとうございました! これからナタン様ともども、このユーグ、忠実にロジェ様に仕えますにゃ!』
と声を張り上げていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最初の町、次の村、最後の町と3か所全ての業務を終わらせたロジェ。
ここからは、王都へ帰還するだけである。
帰り道100㎞において、表向きの所要時間は、時速50㎞で走行するとして約2時間。
転移魔法を使い、一瞬で帰還すれば、2時間弱はほぼ自由時間である。
常人ならば計100㎞の道のりを様々な交通手段を使い、それなりに時間をかけて行くのだろうが、ロジェの場合は当然ながら転移魔法一択だ。
また飛翔魔法は、人が目撃する可能性のある場所――街道上空等において、
真昼間では目立ちすぎるので使えないし、使わないと決めていた。
飛翔魔法の能力テストを行うのなら、行きに実施したように、
街道から外れた人けのない原野だと考えている。
ちなみに転移魔法に関しては最大跳躍距離は、一度に1,000㎞までを確認済みなので、一気にシーニュ王国王都付近まで跳ぶ事が可能である。
最後の町を出て、ウォーミングアップを兼ね、
ジョギングレベル――時速10㎞ほどでしばし走ると人影が途絶えた。
よし、今だ!
王都から、約15㎞の距離。
一番最初に能力テストをした原野まで転移するぞ!
……どこかで聞いた事のある魔法のルールではないが、
これまで行った事のある場所だと転移がしやすいという特性がある。
転移!
瞬間! ロジェの姿はかき消え、ほぼ間を置かず、
一番最初に能力テストをした原野に立っていた。
ロジェの目の前に広がるのは、植物はあまりなく、家くらいの巨大な岩が数多ごろごろしていたり、切り立った絶壁がいくつもある荒涼たる土地である。
間違いなく先日訪れた原野である。
転移先の制御も 、ほぼ正確になって来た。
後もう少し訓練すれば精度はもっともっと上がるだろう。
索敵には周囲5㎞に人間の気配はない。
結構遠くに魔物が若干居るだけだ。
油断はしないが、俺の魔力を感じたら、寄っては来ないだろう。
既にどんな能力テストを行うのか決めている。
オーク戦では至近距離から攻撃魔法を撃ったから、
今日は遠距離攻撃のテストをしよう。
目標は、点在する岩。
威力よりも、命中率を重視し、テストしよう。
よし! 行け!
無詠唱のオール4属性攻撃魔法が放たれ、次々と大岩へ炸裂。
ごおっ! どしゅっ! しゅばっ! どがん!
ごおっ! どしゅっ! しゅばっ! どがん!
ごおっ! どしゅっ! しゅばっ! どがん!
火炎弾、風圧弾、水圧弾、岩石弾を交互に撃ち、
大岩に当てるだけでなく、ど真ん中を狙い、撃って行く。
たっぷり1時間、遠距離攻撃魔法のテストをし、タイムリミット。
ロジェはそろそろ戻る事に。
最後の町を出てから、約1時間30分が経っていた。
ええっと、王都まで15㎞なら、ひと目につかない街道のそばから、
街道へ入り、時速30㎞くらいで30分駆けるとちょうど良いだろう。
トータル所要時間は、100㎞を約2時間で走破、休憩ありという事にしようか。
『帰還プラン』を決めたロジェは速攻で目的地点へ転移。
目的地点から街道へ入り、約時速30㎞で王都へ帰還したのである。
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