表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/69

第44話「最後にひとつだけ、ロジェは質問する事にした」

オーク3,000体を軽く屠ったロジェは予定通り、

村を出てから約1時間後に赴くべき最後の町に到着した。


最初の町、次の村で経験を積み、仕事の手順にも慣れた。


郵便省の支局、C商会の支店と巡り、スムーズに業務をこなしたのである。


これで無事に帰還すれば、残金の金貨50枚を受け取り、今回の仕事は終了となる。


ロジェは、いつものようにこの町の特産品をアメリー達へのみやげとして購入する。


後はもうひとつ、ギルドの仕事ではないが、最後にやるべき事があった。


それは、この町の一般猫を束ねるファザーガッド、ナタンの部下、

小隊長の位にある妖精猫ケット・シーへの顔見せである。


ケット・シーの王ファザーガッドのナタンによれば、

そもそもケット・シーは、商隊や馬車荷便など人間の移動に便乗し、

他の場所へ行く事が多いという。


そしてナタンに命じられた部下たる小隊長ケットシーは、

赴いた地元の一般猫を支配下に置き、

その繰り返しでどんどんネットワークを広げて行くそうだ。


だが魔物や賊の襲撃により、シーニュ王国王都の馬車荷便がしばらく中止となったので、郊外にあるこの町へ赴いた部下は、行きっぱなしで、

王都へ戻る手立てがなかったのである。


それゆえナタンからは、ロジェがナタンの新たな(あるじ)となった事、

部下が王都へ戻る意思の有り無しを尋ねて欲しいと頼まれたのだ。


ナタンが心の底から申し訳なさそうに頼んで来た事もあって、ロジェは快諾した。


どうせ、ギルドの仕事のついでである。


そしてナタンの作り上げる猫ネットワークは、

そのままロジェのネットワークにもなるし、利害は一致する


小隊長たる部下へロジェが直接顔見せをし、よしみを通じる事が今後に向け、

プラスになると判断したのである。


長きにわたり部下は王都に居るナタンとやりとりをしていない。

なので、現在何をしているのかは勿論、所在さえも不明だと言われた。


だが、ロジェには強力な探索のスキルがある。

部下が生きてこの町の中にさえいれば、所在を確かめるのはとても容易い。


そして索敵の効果により、この町の5㎞手前から分かっていた。

部下は生きており、元気にはしていると。


という事で、ロジェは仕事中から、部下の所在をつかみ、その動きを追っていた。


それゆえ速攻で、部下の居る場所へ最短ルートで移動した。

最短ルートはいっても転移、飛翔はさすがに使わないが。


そしてナタンの部下はといえば、路地奥で数多の一般猫達に囲まれていた。

何か相談話をしているように。


闖入者である人間ロジェの姿を見て、一般猫達は大いに驚き、

本能的というか蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。


しかし唯一残った少し大き目な黒猫――ナタンの部下ケット・シーだけは逃げない。


ふん!と鼻息荒く「人間なんか、鼻にもかけない」と傲岸不遜な態度で、

ロジェを完全に無視していた。


そんな部下へ、ロジェはいきなり念話で話しかける。


『おい、お前がファザーガッド、ナタンの部下ユーグか? 〇§ΦΨΘΔγ……』


ロジェはその呼びかけを二種類の言葉で告げた。


ひとつは勿論人間語だ。

そしてもうひとつは……魔族語だったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


いきなり念話で、それも人間語、魔族語で話しかけられ、

びっくり仰天したのは部下――ケット・シーのユーグである。


それまでの落ち着き払った態度が一変!


にゃあ、にゃあ、にゃあ、にゃあ、にゃあ、にゃあ、にゃあ、にゃあと鳴きわめく。


『ね、念話!? そ、そして魔族語うう!? お、お、お前!? な、な、何者にゃあ!?』


驚き噛みながら念話で質問をして来るユーグ。


ユーグは人間語をしゃべっているので、ロジェも人間語オンリーで話すと決め、

淡々と言葉を戻す。


『ユーグ、俺はナタンの新たな(あるじ)、ロジェ・アルノーだ。ナタンと奴の配下ケット・シー100体、一般猫2,000匹には既に話がついている』


『な!? ナ、ナタン様が!?』


『ああ、ユーグ。お前がこの町に赴き、ケット・シーネットワークの構築をし、その後、馬車荷便の運航が中止となった為、王都と連絡がつかない。だから俺が仕事のついでにやって来たんだ』


『はあ!? お、お前が!? あ、主!? し、仕事のついでだと! そ、そんなの信じられにゃい!!』


ロジェの訪問趣旨を聞き、ユーグはまたも大いに驚き、

噛みっぱなしで話しつつ、訝し気にロジェを見つめる。


まあ、初対面の人間がいきなりお前達ケット・シーの主になったと言っても、

信用しない方が普通だ。


そういう場合もロジェは方法を考えてある。


『まずはユーグ、お前と会い、お前が無事にこの町で暮らし、ネットワークを構築している事をナタンに伝えよう。今回はそれで充分だ』


そう、とりあえずユーグとコンタクトを取り、

安否を確認した事だけ告げればOKと、ロジェは返したのだ。


『うぐぐぐ……』


そこまで言っても、ユーグはまだ信用出来ないのか、唸っていた。


しかし、もう用事は済んだ。


後は、王都へ帰還するだけ。


最後にひとつだけ、ロジェは質問する事にした。


『ユーグ、猫の集会とは良く聞くが、集まって何を相談していたんだ? ひどく緊張し、怯えていたようだが……』


そう、ユーグと一般猫達は集まり、緊張と怖れの波動を心から発していたのだ。


『お、お前には! 関係にゃい! な、何も話さにゃいぞ!』


やはりロジェを信用出来ないユーグは頑なである。


『分かったよ、じゃあ俺は王都へ帰る。お前の無事だけをナタンには言っておこう』


踵を返し、ロジェが立ち去ろうとした時、背後から声がかかる。


『ま、待てえ!! ナタン様にSOSをう!! つ、伝えてくれないかああ!! だ、大至急助けがいるうう!! この町へ来て欲しいんにゃあああ!!』


絞り出すように、声を張り上げ、ユーグは自身と猫達の窮状を訴えたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!

《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

既刊第1巻~5巻大好評発売中!

《紙版、電子版》

何卒宜しくお願い致します。

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、


⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中!》


⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》


⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ

る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》

⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》

も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ