第43話「物理も魔法も、やっぱり魔王の能力が加わると凄いや」
翌朝、起床したロジェは、支度をすると衛兵長とともに、衛兵詰め所へ。
あいさつをし、準備運動がてら朝の訓練に参加。
衛兵達とともに仲良く汗を流した。
腰にはスクラマサクスと入れ替えで、衛兵長から譲って貰った雷撃剣が下っていた。
昨夜のうちに、魔力を充填してある。
さすがに本気は出せないが、ほどほど動くと、
それでも傑出したロジェの運動能力には全員が舌をまいた。
……訓練後は詰め所のシャワーを借り、
昨夜と同じく朝食の弁当をごちそうにもなった。
ここまで一緒に時間を共有すると、
衛兵長以外にも、皆フレンドリーに話しかけて来る。
ソロプレイヤー冒険者で天涯孤独の15歳、ロジェが生きて行く為……
馬車荷便の代わりというリスクがありすぎる仕事をし、
大いに奮闘しているのを見て、全員が意気に感じたようだ。
ロジェにとっても、今後、何回も訪れる事になる村である。
初訪問で衛兵長以下衛兵達とここまで懇意になったのは大きい。
これからの仕事がやりやすくなるだろう。
そうこうしているうちに、午前8時となり、ロジェは出発する事に。
出発の際、衛兵長以下衛兵達が正門まで出張り、
名残惜しそうに見送ってくれた。
「お~い! ロジェ君! この先、気を付けて、行けよ~! またなあ!」
「ロジェ君! 健康第一で頑張れよ~!」
「絶対に無理はするなよ~! ロジェ君!」
という送別の大声に対し、ロジェは手を振り、
「は~い! 皆さ~ん! また、この村へ伺いま~す!」
と負けないくらい張り上げた声で応え、歩いて行く。
しばし歩き、村の正門が見えなくなると、ロジェは立ち止まって考える。
念の為の『索敵最大範囲』発動は、当然『お約束』だ。
……この村から最後に訪れる町までは、約20㎞の距離。
表向きの所要時間は約1時間といったところか……
……速く走れば、30分くらいの自由時間を捻出可能だな。
ここでロジェは、収納の魔道具から地図を取り出した。
所持している地図はいくつかあるのだが、
取り出したのは仕事上のルート&周辺MAPだ。
この先、街道脇から入って少し行った場所に、
またも昨日のような岩だらけの『原野』がある。
であれば、再び能力テストを行うにはもってこいだと思いつく。
よ~し、昨日は身体能力テストオンリーだったから、
今度は攻撃魔法か、物理攻撃か、どちらかを試そうかと考える。
どちらにするのかは現場を確認してからだ。
つらつら考えていたら、ちょうど通行者が途絶えた。
そしてMAX状態の索敵によれば、この先5㎞は人間が居ない。
今だ!! ダ~ッシュ!!
ここぞとばかりにロジェは大地をダン!と蹴り、一気に加速。
びゅん!と猛スピードで街道を駆けて行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目的地まで5㎞を残し、約15㎞ほど駆けたロジェは、すっと街道をそれ、原野へ……
お~! 昨日とほぼ同じ地形だ!
ロジェの目の前に広がるのは、植物はあまりなく、
家くらいの巨大な岩が数多ごろごろしていたり、
切り立った絶壁がいくつもある荒涼たる土地であった。
やはりというか、索敵には遠くで、魔物の気配も感じられる。
よっし! 魔物が来ないから、能力値を下げてみるか。
これはパピヨン王国外道父娘を罠にかけた能力一時封印の応用技である。
これで魔物が俺を『弱い餌』だと思ってやって来るかもしれない。
ロジェはそう考え、自身の能力値を1/1,000にした。
すると! なんということでしょう!
魔物の群れが、ここぞとばかりに、こちらにやって来るではあ~りませんか!
よし! 準備は万端。
いや、細工は流々仕上げを御覧じろってか。
ロジェは腕組みをして、『餌』らしく、じ~っと待った。
やがて……魔物の群れが現れた。
現れたのは……上位種のオークキングをボスとする、オークの大群である。
数は、1,000体どころではない。
その3倍の3,000体以上は居るだろう。
結構な大群である。
しかし、総勢数百万にもなる魔王軍と戦い抜いたロジェは、当然臆したりはしない。
……そういえばクリスさんが言っていたっけ。
ここらへんで、馬車荷便や商隊がオークの大群に襲われ、
皆、あっという間に全滅したって。
もしかしたら、こいつらかもしれないな……で、あれば遠慮は無用。
久々のバトルだ。
気合が入るぜ!
ふっと笑ったロジェは、腕組みを解き、ダッシュ!
と、同時に能力一時低下も速攻で解除し、元通りに!
そのままオーク3,000体超の大群に肉薄した。
ぶも~!ぶも~!ぶも~!ぶも~! ぶも~!ぶも~!ぶも~!ぶも~!
単身向かって来るロジェを見て、驚いたオークどもであったが、
ぶひひ!ぶひひ!ぶひひ!ぶひひ! ぶひひ!ぶひひ!ぶひひ!ぶひひ!
すぐ「コイツは真性の馬鹿か!」という嘲笑に変わった。
しかし!
どしゅ! どが! がん! どごお! どしゅ! どが! がん! どごお!
どしゅ! どが! がん! どごお! どしゅ! どが! がん! どごお!
というロジェの神速の拳と蹴りで、
オークどもは笑った表情のまま破砕され、次々と即死。
唯一、ボスのオークキングだけは、討伐した証拠として粉々にせず、
死骸が分かるようにしておいた。
おっし!これでよし!
まずは、物理攻撃はOK。
勇者時代と比べたら、10倍以上の威力だぞ。
じゃあ、次だ!
また至近距離で無詠唱のオール4属性攻撃魔法が放たれ、次々とオークへ炸裂。
ごおっ! どしゅっ! しゅばっ! どがん!
ごおっ! どしゅっ! しゅばっ! どがん!
ごおっ! どしゅっ! しゅばっ! どがん!
火炎弾、風圧弾、水圧弾、岩石弾の乱射で
ボスを倒されて逃げ腰のオークどもはあっとのいう間に全滅。
3,000体全てが『肉片の山』と化してしまった。
それを見たロジェは、ふ~と軽く息を吐く。
攻撃魔法の威力も数段増している。
……トータルの討伐所要時間は、約15分強といったところか。
テスト終了にはちょうどいい頃合いだ。
物理も魔法も、やっぱり魔王の能力が加わると凄いや。
ロジェは、破砕しなかったオークキングの死骸だけを収納の魔道具へと仕舞う。
そしてこのままにしてはいけないから、最後は……
勇者として覚えた聖なる力『葬送魔法』で仕上げだ。
鎮魂……………………………………………………………………………………
ロジェが心で静かに、厳かに念じ、破邪の魔力を浴びせると、
肉片の山は瞬時に『塵』をなってしまったのである。
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