第41話「金貨200枚が入っている。受け取りなさい」
ロジェを襲った賊どもは、3倍以上の村の衛兵達にぐるりと囲まれ、
あっさりと捕縛されてしまった。
賊どもは全員が表情を絶望感に包まれ、
「うおお! こんなのありかよお!」
「くっそ! 最悪の展開だあ!」
「わ~ん! もう、おしまいだあ!」
「ちっくしょ~! しくじったぜえ!」
「あんなクソガキの挑発に乗って、深追いするんじゃなかったあ!」
大いに泣きわめき、そして嘆きながら、衛兵達に引っ立てられて行った。
周囲に野次馬はたくさん居たが、村の衛兵隊で残ったのは、
がちむちで目つきが異様に鋭い衛兵長のみ。
年齢は30代半ばくらいであろうか。
しかし、迫力のあるこわもて人相とは正反対、
衛兵長から発する心の波動は熱い正義感で満ちあふれている。
どうやら、勇敢で誠実な性格のようだ。
「おお、少年! 凄くお手柄だったぞ!」
「はい、衛兵長様。悪党どもが捕まって良かったです」
「うむ、奴らはな、数多の旅人を襲った凶悪な賞金首なんだ。しかし逃げ足が速く、たびたび取り逃がしていたのだよ」
「そうだったんですか?」
「うむ、まさか、君を追っかけて、村の正門付近まで、のこのこ来るとは思わなかったがな……どうしてだろう?」
衛兵長は訝し気な表情であった。
ロジェは、ここぞとばかりに自分のアピールポイントを強調する。
「ええ、自分は脚力だけには自信があったので……奴らを思い切り挑発したら、油断して追いかけて来たのです」
「ほう、脚力だけには自信があった、奴らを思い切り挑発したら、油断して追いかけて来たのか、成る程」
「はい、俺は所詮、釣りの撒き餌みたいなものでした」
「ははは、そうか、撒き餌か。この村へ平和をもたらした逮捕協力者として、君には懸賞金を渡さねばな」
「自分が懸賞金をいただける? そうなんですか」
「ああ、そうだ。君が捕まえて村まで連行したというわけではないから、規定の懸賞金よりは少ないが、結構な金額が出ると思う」
結構な懸賞金が出る……それって臨時収入って事か。
助かるなあ、それ。
無駄遣いせず将来の為に、しっかりと貯金はしておきたい。
ロジェがつらつら考えていると、衛兵隊長が尋ねて来る。
「ふむ、ところで今更だが、君の名前は? まだ年若いのに冒険者みたいだが、一体何者なんだね? どうしてこの村へ?」
誉め言葉の次は矢継ぎ早の職務質問である。
「はい、自分はロジェ・アルノーと申しまして、15歳です。職業は冒険者なのですが、実は業務中に、あいつらが待ち伏せし襲って来まして」
と、ロジェは答えた。
そして、ここは論より証拠。
こういう時の為に作成した一式がある。
ロジェはまず冒険者ギルドの所属登録証を提示。
次に馬車荷便の代わりに、
王都から3つの町村を巡るという契約書、発注書も見せた。
「失礼」
と言い、衛兵長は大きく無骨な手で受け取った各書類に目を通し、
にっこりと笑った。
「成る程な、ロジェ・アルノー君か。若干15歳で既に冒険者ランクCとはたいしたものだ」
「いえ、いえ、まあぼちぼちです」
「ははは、ぼちぼちか。自慢もせず、おくゆかしいな。ロジェ君がこの村へ来た事情と今回の事件の経緯は良く分かった。ではこれから仕事だね」
「はい、そうです」
「そうか。では仕事を終えたら、衛兵詰め所へ来なさい。懸賞金を支払う準備をしておくから」
「ありがとうございます。衛兵長様」
「いやいや、こちらこそだ。今回、君の功績は非常に大きい。詳しい話は後ほど、衛兵詰め所でしよう。まずは課せられた仕事を終わらせて来なさい」
「はい、では失礼して先に仕事を終わらせて来ます」
「ああ、待っているよ。ちなみに衛兵詰め所の場所はここだ。この地図をあげるから、私宛で訪ねて来るが良い」
そう言って、衛兵長は村の地図を一枚ロジェへくれた。
渡された地図を見れば、村全体の地図であり、いろいろな場所が記載され、
衛兵詰め所もあった。
そして、この村での訪問先もある。
ロジェが王都で購入した地図よりも見やすく、分かりやすい。
これはラッキーである。
「ありがとうございます。では仕事をして来ます」
「うむ、お疲れさん。頑張れよ、ロジェ君」
という事で笑顔の衛兵長に見送られ、先に赴いた町同様、
ロジェは郵便省の支局、そしてB商会の支社を訪れ、
荷物の引き渡しと集荷を行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……ロジェが賊退治に協力した事は、村中に知れ渡っており、
郵便省の支局員も、B商会の支社社員も大変好意的に接してくれ、
仕事はとてもやりやすかった。
これで気持ちよく、衛兵詰め所へ行き、懸賞金を受け取れる。
魔導懐中時計を見れば、午後2時となっていた。
なんやかんやで、ランチの時間を過ぎてしまった。
報奨金を貰ったら、遅いランチにするか。
まあ、良い。
とりあえず、衛兵詰め所へ行こう。
ロジェが地図を見て、衛兵詰め所へ赴くと、
詰め所の横には留置場があり、先ほど捕縛した賊どもの気配がする。
まさに因果応報。
奴らにもう未来はないだろう。
「すみませ~ん、失礼しま~す」
衛兵詰め所の扉を、とんとんとんとノックすると、
「誰だ?」と問いかけがあったので、ロジェは声を張り上げる。
「ロジェ・アルノーと申しま~す! 衛兵長様に呼ばれて参りましたあ!」
対して、
「おう! 仕事が終わったか! 遠慮せず中へ入ってくれ!」
と返事が戻って来た。
これは衛兵長の声である。
「はい! 失礼しま~す!」
ロジェが扉を開けると、中には衛兵長以下、村の衛兵達がくつろいでいた。
長年わずらわされたらしい賊どもを逮捕してひと安心というところだろうか。
「おう! ロジェ君か、良く来たな。準備しておいたから、早速懸賞金を払うよ」
衛兵長が言い、ずっしりと重い小袋を渡して来た。
「金貨200枚が入っている。受け取りなさい」
え?
金貨200枚!?
これは予想以上に大金だ!
魔王を倒して、たった金貨100枚のパピヨン王国とは大違いだ。
「こんなにいただけるのですか?」
「ははは、到底無理な話だが、もしも君が賊どもを全員捕らえていたら、正規の報奨金として、金貨1,000枚が支払われるところさ」
へえ、成る程。
賊を全員、自分で捕らえたら金貨1,000枚か!
結構な賞金首だったんだ、あいつら。
「ありがとうございます。では遠慮なくちょうだいします」
ロジェは言い、金貨の小袋を受け取り、収納の魔道具に仕舞った。
「ああ、遠慮せず、堂々と受け取れば良い」
そんな衛兵長の言葉を聞いたロジェ。
とその時、ぐ~と腹が鳴った。
「お? 腹が減っているのか、ロジェ君は」
「はい、仕事をしていたら、ついランチを食べそびれまして」
「おお、そうか! じゃあ我々の弁当の予備で良ければ食べるかい?」
「え?」
「金は不要だ。実は俺達もこれから昼飯なんだよ」
「で、でも……」
さすがにそれはずうずうしいかなと、ロジェは遠慮したが……
「いやいや、聞きたい話もあるし、メシでも食いながら、じっくりいろいろ話そうじゃないか」
と衛兵長が言い、他の衛兵達も「そうだ、そうだ」と賛同。
結局、ロジェは村の衛兵隊と一緒にランチを摂ったのである。
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