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第4話「徹底的に調べて、お前がもう勇者じゃないって、陛下と王女様へご報告してやるぜ! ひ~ひひひひ」

現場検証終了後、魔王城から、パピヨン王国王都への帰還は、スムーズに行われた。


魔王城に巣食う魔王軍が一掃された事により、森林、原野に跋扈する魔物どもも、

恐れをなし、街道を進み、帰還するラウル達へ近づかなかったのである。


正門から王都へ入り、

凱旋という趣きの王国軍一個連隊を見に、王都市民達が集まって来た。


集まって来た市民達を見て、司令が声を張り上げる。


「国民よ!! 良く聞けえ!! 魔王以下、魔王軍は、勇者ラウル殿により討ち果たされたあ!!」


司令の大音声を聞き、市民達は大歓声をあげる。


うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!


そして万歳三唱。


勇者ラウルばんざ~い!!! ばんざ~い!!! ばんざ~い!!! 


ここで普通なら、大きく手を振り、応えるところではあるが、

ラウルは微笑んだまま、軽く会釈しただけであった。


パピヨン王と、王女マルスリーヌから、例え勇者であっても、

魔王を倒したとしても、王族の自分達よりも控えめに、

あまり目立った行動をしないようにと、釘を刺されていたからである。


こちらもよくよく考えれば、ラウルに人望が集まっては欲しくない、

王と王女のせこい考えが分かりそうなものであった。

でも心を(とら)われていたラウルは、疑念を抱かず素直に従っていたのだ。


しかし、ラウルの心は、魔王の能力を継承する事で、

マルスリーヌ王女のおだてによる洗脳と、束縛の指輪の魔力から、遂に解放された。


だから今のラウルは、従っている『ふり』をしているだけ。


これも作戦の一環である。


作戦が成功するまでは、ひたすら我慢。


どんなに、無体な態度を、また無理難題を吹っ掛けられても、

正気に戻った事を決して悟られてはいけないのだ。


そんな事を考えながら、ラウルは、司令とふたりだけで王宮へ。


すぐ王の間へ通され、正面の玉座には、パピヨン王とマルスリーヌ王女が座り、

にやにや嫌らしく笑いながら、ラウルと司令へ、簡単なねぎらいの言葉をかけた。


魔王を倒したという報告は、既に王と王女へ行っているらしい。


「ラウル、もうお前の用は済んだ」と言うかの如く、

全く心がこもっていない、おざなりな感じである。


ははあと、膝をつき、かしこまるラウルと司令。


そしてまず司令が顔を上げ、ラウルは魔王と眷属を倒した事。

自分と王国軍が、無人の魔王城を確認し、討伐に間違いがない事。

そして戦利品を無事回収した事などを報告した。


これもおかしな話である。

ラウルを信用しているならば、全ての報告をラウルにさせるべきなのだ。


更に司令が言う。


「陛下、マルスリーヌ様。魔王討伐後、ラウル殿の体調がすぐれないそうです」


対して、パピヨン王はいかにも大袈裟に、


「おお」


と呻き、マルスリーヌ王女も、


「ああ、心配だわ、大丈夫? ラウル?」


などと、全く感情がこもっていない、

棒読みのセリフ&わざとらしく顔をしかめて見せた。


そんなふたりに、ラウルは哀れっぽく目を伏せ、告げる。


「はい、何とか……しかし、魔王との戦いのせいなのか、私は勇者としての力を失ってしまったようです」


勇者としての力を失った!?


「!!!???」

「!!!???」


ラウルの言葉を聞いたパピヨン王とマルスリーヌ王女は、一瞬驚いたような反応を見せたが、すぐに目が険しそうに細まる。


「……うむ、それは大変だな、マルスリーヌ」


「はい、お父様。おっしゃる通りですわ。急ぎ検査を致しましょう。王宮魔法使い、すぐにラウルを調べなさい!」


という事で、ラウルは魔王討伐に対する褒賞を受ける事無く、

王宮魔法使いに連れて行かれたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


王宮魔法使いに連れて行かれたラウルは、

魔法研究室とプレートのかかった部屋へ入った。


その部屋は王宮魔法使いが魔法の研究を行う為の部屋であり、魔法使いのスペックを調べる様々な装置が置かれていたのだ。


中年男の王宮魔法使いは、ラウルを見て、にやにやと笑っていた。

彼は、ラウルが嫌いなのである。


理由ははっきりしていた。


これまで魔法に関しては、王家から全ての案件が、王宮魔法使いへ依頼されて来た。


だが創世神の信託により、勇者として覚醒した平民出身のラウルが現れてからというものの、王と王女の興味は全てラウルへと移ってしまったからだ。


普段王達の前では、ラウルに最上級の敬語を使っているが、ふたりきりになると、

王宮魔法使いは、ぞんざいに話しかけて来る。


「おい、ラウル。お前、勇者としての力を失ったって、本当かよ?」


こんな奴は指先ひとつで、あの世行きだが、ここは我慢我慢である。


「えっと、あの分かりません、王宮魔法使い殿」


「何い? 分からないだとお? ふざけんなよ」


「いえ、ふざけてはいません。ただ、こうなった理由が分からないのです。魔王との戦いの直後から、倦怠感が酷く、身体に力が入らず、魔法も使えなくなってしまったのですよ」


「へえ、見た目が無傷なのに、ひでえもんだな。死に際の魔王に邪悪な呪いでもかけられたのかよ? 俺からしてみたら、ざまあって感じだな」


「はあ……」


「そういえば、いつも連れている狼の魔獣は行方不明になったらしいな」


「はい、生死不明です」


「まあ、良いや。調べてやるから、そこの椅子に座りやがれ」


「は、はい」


「ふん! ぐずぐずしないで、さっさと座れ!」


「分かりました」


「勇者じゃなくなったお前など、所詮ただのクソ平民の青二才だ。検査の結果を見て、陛下と王女が何とおっしゃるか、俺は楽しみでたまらないぜ」


この男……こういう嫌な奴だとは思っていたが、想像以上の外道ぶりだ。

相手が弱ったと見れば、すぐそこへ付け込んでくる。


どうせ、ろくな死に方はしないであろう。

そうラウルは思ったが、当然おくびにも出さない。


「はあ、もし勇者ではなくなったら、引退して静かに暮らして行きますよ」


「へっ、そうなって欲しいもんだ」


王宮魔法使いは、ラウルが椅子に座ったのを確かめると、

椅子につながる魔法水晶に魔力を込めた。


椅子が淡く光り、それと連動し、魔法水晶も光る。

だが、以前ラウルが同じ検査を受けた際、まばゆく黄金色に光ったのに、

今回は淡い青色になっただけだ。


「おやおや! こんな事ってあるんだな! ラウル! お前の体内魔力は全然魔法使いじゃない! 一般市民なみの低レベルだ!」


「そう……ですか」


「よし! 更にとどめをさしてやる! 徹底的に調べて、お前がもう勇者じゃないって、陛下と王女様へご報告してやるぜ! ひ~ひひひひ」


何故か勝ち誇った王宮魔法使いは、最後に嫌らしく笑ったのである。

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