第37話「問題ありません。もろもろ了解しました」
召喚魔法で現れたケルベロスは、訝し気な眼差しで、
ファザーガッドのナタンを見つめる。
『ふん、異界から見ていたが、猫どもの統領か。我が主に仕えたいと言うのか?』
ケルベロスは淡々と問いかけた。
無論、3つ首大蛇尾の本体ではない。
シルバーグレイの灰色狼に擬態した姿だ。
しかし、ナタンは緊張し、身体が硬直してしまった。
『どうした? 我に臆したか?』
『…………………………………………』
威勢の良さが消え、無言となったナタンを一瞥し、ケルベロスはロジェへ向き直る。
『主……あまり役に立つとも思えんが、コイツを使うつもりなのか?』
『ああ、確約はしていないが、チャンスをやると約束した』
『そうか……』
『ああ、それにシルバーグレイのお前を連れていると勇者ラウルか?と突っ込みを受けそうだ。申し訳ないが、お前の毛並みを変えて欲しいのと、猫が居ればそういう突っ込みもないと思ってな』
『成る程……では、こうしよう』
ケルベロスはぶるぶるぶるっと身体を震わせると、
毛並みがシルバーグレイから漆黒に変わった。
これでだいぶ印象が変わりそうだ。
『ふむ……これで良いか? 主よ』
『ああ、良いだろう。それと改めて紹介しよう。コイツはファザーガッドのナタン。ケット・シーの王で100体のケット・シーと2千匹の一般猫を率いている。シーニュ王国王都とその国内だけでなく他国の町村にもネットワークがあるそうだ』
『そうか……上手く使えば各所からいろいろ情報が入るやもしれん。主と我へ礼を尽くすのなら、我は構わん』
ケルベロスは条件付きでナタンが勤仕する事を許可したのだ。
『……だとさ。これでケルベロスはOK。俺の条件は変わらん。……後はお前次第さ、ナタン』
『…………………………………………』
『仕えるのか、仕えないのか、俺はどちらでも構わない。但しアメリーさん達を悲しませるような事だけはNGな』
『…………………………………………』
『もし仕えてくれるのなら、お前はきっと俺の期待に応えてくれる。……そんな気がするよ』
最後にかけられたロジェの言葉が心に響いたのかもしれない。
覚悟を決めたかのようにナタンは告げる。
『主ロジェ・アルノー様。私ファザーガッドのナタンは、配下ともども忠実に仕える事、そして取り交わした約束を守る事をここに誓います』
『よし! じゃあ、ナタン、これからお前達は俺の配下だ』
……という事で、ナタン以下の一大猫軍団は、
ロジェの配下になる事が決まったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
数日後の翌朝……
アメリーと市場へ買い出しに赴き、
朝食を摂ってからロジェは冒険者ギルドへ出かけた。
職員のクリスから例の件、調整と交渉が終了したと連絡が来たのである。
ようやく仕事が開始出来る!とロジェは張り切っていた。
嬉しくて足取りも軽く、あっという間に冒険者ギルドに到着する。
本日クリスは、気兼ねなく打合せが出来るよう応接室をキープしてくれていた。
打合せの約束は午前9時30分。
時間も指定である。
業務カウンターにクリスの姿はなかった。
応接室で準備をしているから、受付経由で呼んで欲しいとの事。
受付経由ですぐクリスはやって来て、ロジェを案内してくれる。
……早速、打合せが始まった。
今回馬車荷便クライアントは、シーニュ王国郵便省、王都の大手商会3社の計4つ。
実施日の連絡が事前にあり、出発日の前日にロジェは各所で集荷し、
翌日の朝6時に王都を出発。
配達先は計3か所の町村で、それぞれ配達と集荷を行う。
報奨金は、何と金貨70枚。
そして更に危険手当が金貨25枚、宿泊食事代が金貨5枚の総計100枚である。
クリスが頑張ってくれたらしく、全て大幅な割り増しとなっていた。
ちなみに支払いは、半金の金貨50枚が前金にて、
残り半分の金貨50枚が王都へ帰還後に支払われるという好条件だ。
頑張ってくれたクリスに、ロジェは感謝の気持ちしかない。
心から礼を伝えたいと思う。
「クリスさん、本当にありがとうございます。とてもお手数をおかけしました。これで収入源を確保しましたが、クリスさんには相当頑張っていただきましたね」
「いえ、ロジェさん、こちらこそです」
とクリスは笑顔で答え、
「馬車荷便の復旧はまだだいぶかかりそうですし、手紙便は応募者が全く居なかったので、逆にクライアント達からは助かると凄く感謝されました。そして重ね重ね言いますが、道中の魔物や賊には本当に注意してくださいね」
「はい、分かりました。俺のスピードなら基本は逃げるが勝ち……ですね」
「ですね。ちなみにロジェさんは視力の方はいかがですか?」
「はい、視力は結構良い方だと思います」
「であれば相手をよく見て、弓矢などの飛び道具や、攻撃魔法を使う魔法使いが居る場合は特に速やかに退避してくださいね」
何から何まで細かいケア。
やはりクリスは最高の担当者だと言えよう。
「わっかりました」
「では、ロジェさん、こちらが契約書です。サインをお願いします」
「はい」
と言い、ロジェはすらすらっとサイン。
「これで契約は締結しました。発注はギルドから随時連絡します。ロジェさんの連絡先は、宿屋白鳥亭でよろしいんですよね?」
「はい、それでお願いします」
「それとこちらが集荷先の住所、各担当者の氏名と連絡先です。」
「ありがとうございます」
「直近の出発日ですが、ロジェさんに問題がなければ3日後の朝6時出発でお願いしたいそうです。その前日に集荷するという事になりますね」
「問題ありません。もろもろ了解しました」
「では、最初の正式発注という事で前金で金貨50枚をお支払いし、クライアント各所へは最初の受注連絡をしておきます。説明は以上です。では何卒宜しくお願いします」
これで打合せは終わった。
契約書、発注書と金貨50枚を受け取り冒険者ギルドから戻ったロジェは、
アメリー達へ受諾した依頼内容を話し、3日後に出発する事を伝えた。
そして白鳥亭の手伝いをしながら、出発日の前日にクライアント4か所に赴き、
無事に集荷を終えたのである。
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