第31話「お手数ですが、この中からクリスさんのおすすめベスト5を選んで貰えますか?」
「いってらっしゃいませ! お気をつけて!」
冒険者ギルドへ出かけるロジェをアメリーは、母のオルタンスと並び、
笑顔で見送った。
アメリーの表情には、先ほどの憂いはない。
ロジェは安堵し、同じく笑顔で、
「行って来ます!」
と元気に言い、歩き出した。
先日同じようなシーンがあったような……
既視感ばりばりである。
そう、ロジェが初めて冒険者ギルドシーニュ王国王都支部へ赴く際も、
ほぼ同じ光景だったから。
……何だろうな、こういうのって。
歴史は繰り返すって奴?
でもいいや。
アメリーさんが機嫌を直し、元気になってくれたから。
嬉しくなったロジェは、冒険者ギルドへの道を急ぐ。
時たま、配下になった愚連隊のメンバーに出くわすが、
メンバーは無言で軽く一礼だけする。
それが普段、ロジェへ対する『あいさつ』である。
対してロジェも軽く一礼して返す。
今のところ、愚連隊への『支配』は上手く行っている。
強引な、みかじめ料徴収を始め、
犯罪行為を一切やめた愚連隊どもは人当たりが良くなり、はきはきとあいさつ。
直営店においては真っ当な商売をし、早朝夕方のボランティア清掃実施、
そして夜半のパトロール実施は、王都市民にも大好評。
当然、縄張りはお互いに不可侵であり、抗争の影も見せず、仲良くやっている。
8つの愚連隊が群雄割拠でカオス状態だった王都は、
勇者&魔王な?ロジェの処置により、ようやく平和が訪れたのだ。
とりあえず第二の人生を送ると決めたシーニュ王国王都において、
自分は役に立ったのだと思うと感慨深い。
ロジェは足取りも軽く、歩みを速め、あっという間に冒険者ギルドへ到着した。
時刻は午前10時30分過ぎ……
ラッシュも終了し、業務カウンターの人影もまばらだ。
業務課職員、クリスことクリストフ・ジュベルも受付待ちである。
よし!
すぐに対応して貰えそうだ。
ロジェが近づくと、クリスはすぐに気が付き、柔らかく微笑む。
「おはようございます! ロジェさん!」
「おはようございます! クリスさん! お願いしていた依頼の取りまとめの状況はいかがでしょうか?」
ロジェが尋ねると、クリスは笑顔のまま、
「はい、ばっちりです。既に作業は完了しています。ランクCという事で、結構良い依頼が集まりました。こうなれば選び放題という感じですね」
自信たっぷり、余裕たっぷりに言い切った。
言葉も行動も慎重そうなクリスにそこまで言われると、
頼んだロジェも大いに楽しみになる。
「おお、選び放題ですか。そう言われると、凄く期待してしまいますよ」
「ええ、ロジェさんの期待に応えられる内容と件数だと思います」
多分、ロジェが訪れた時、すぐ対応出来るよう準備していたに違いない。
クリスは早速とばかり、「どさっ!」とカウンターに書類を出したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
クリスの言う通り、依頼を記載した書類――依頼書は結構な数である。
「では、最初の案件から、一枚ずつ、読み上げ、説明していきますね」
手慣れた感じで、クリスは一件ずつ、
依頼の内容を告げ、更にスケジュール、完遂条件、報酬、
メリット、デメリット等を説明して行く。
ここで補足しよう。
冒険者への依頼は様々あるのだが、大きく分けると討伐系、捜索救助系、護衛系、
探索調査採取系、連絡運搬系、などがある。
討伐系は害を為す魔物や賊の討伐、捜索救助系は人質、行方不明者の捜索や救助、
護衛系はVIPなどの警護、探索調査採取系は当該地の調査や貴重品の回収や確保、
連絡運搬系は手紙などを託されるメッセンジャーと荷物輸送である。
また、他にそれらの範疇に属さないものも数多ある。
ランク判定試験において、剣聖と謳うたわれる冒険者ギルドの上級ランカー、
アルフォンス・カルヴェに勝利したとはいえ……
試験内容から、戦闘力は低く、
スピードと敏捷性に特化しているタイプだと判断されたのだろう。
依頼は、捜索救助系や探索調査採取系、そして連絡運搬系が多かった。
それに比べ、討伐系、護衛系はほんのわずかである。
しかしトータル案件数は、全部で30以上にものぼり、
クリスが自信満々に言うのも当然だった。
ランクCとはいえ、デビュー前の冒険者にしては異例の数と言えるだろう。
「ランク判定試験の結果が良かったロジェさんなら、依頼は最低でも10案件くらいは来るだろうと私も思いましたが、まさかこれほどとは思いませんでした」
「ですよね」
「ええ、聞いたところによれば、今回は試験官を担当されたアルフォンス・カルヴェ様が、自分はロジェ・アルノーを推薦すると、猛プッシュされたそうですよ」
「それはありがたいですね」
……やはり、冒険者といえど、礼儀をわきまえる事は大切。
アルフォンソ試験官に対し、謙虚な姿勢で接したから、
『温情』で返してくれたのだ。
空気を読まず、場をわきまえない態度は致命的。
前の受験者が傍若無人な態度を取り、反面教師になってくれたから、
逆に、俺は上手くやる事が出来たと、ロジェはしみじみ思う。
「それで、ロジェさんはこれらの案件から、何を受諾しますか?」
ここでロジェの独断で決めても良いのだが、
折角なので、クリスのアドバイスを大いに聞く事にしよう。
そう、ロジェは決め、
「お手数ですが、この中からクリスさんのおすすめベスト5を選んで貰えますか?」
と言えば、クリスは頼りにされた事が嬉しかったのだろう。
「はい、分かりました。……実はそう言われると思い、5ではなく10、優先順位をつけているのですよ」
満面の笑みを浮かべながら、
クリスは改めて自分が選んだ依頼の説明を始めたのである。
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