表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/69

第27話「必ず生きて戻って来てくださいませ!!」

かぎ爪団全員をカタギにするセッテイングが終了したのは午後5時近かった。


そろそろ白鳥亭へ戻らないと、アメリーさん、オルタンスさんが気にするだろう。


それにかぎ爪団の妨害を終了させたから、

白鳥亭は宿泊希望客で混みだしているはずだ。


よし、『続き』は今夜以降だ。


この後、どうするのかという段取りも、ちゃんと考えている。


初仕事がまさか愚連隊の鎮圧とは、思わなかったが、

これからこのシーニュ王国王都でお世話になる恩返しだと思えば構わないだろう。


最後にロジェはかぎ爪団のボス以下へ念を押す。


「お前達、早速明日の朝から実行するんだぞ」


「へいっ! 了解です! ボス!」


という返事でロジェは撤収。


さっさと、白鳥亭へ帰還した。


時刻は午後5時過ぎ。


予想通りというか、かぎ爪団の妨害がなくなった白鳥亭は、入口に札が下がり、

『満室』となっていた。


ロジェは、


「ただいま、戻りましたあ」


と何事もなかったかのように、声を張り上げた。


しかし、


「……………………………………………………」

「……………………………………………………」


満室のせいで、オルタンスとアメリーは接客と夕食の準備にてんてこ舞い。


忙しすぎて、無反応、ロジェを構う余裕がない。


スルーされるのは仕方がないと、ロジェは速攻で部屋へ戻り、

借りている合鍵で開錠。

部屋へ入り、革鎧を脱ぎ捨て、エプロンを着ると、

部屋を出て施錠し、手伝いに加わった。


昨日手伝いに参加しているので段取りは分かっていた。


アメリーを手伝い、接客をしながら、

厨房のオルタンスも手伝う。

まさに大車輪の働きぶりである。


ロジェの加入は、オルタンス、アメリーの多忙さを著しく緩和。


ようやく会話が出来る余裕が生まれて、全員が笑みも浮かぶ。


そうこうしているうちに、オルタンスの料理も出来上がり、

ロジェとアメリーは厨房と食堂を往復しながらトレイにセッティングし、

てきぱきと配膳を行った。


……午後9時を回ると客達の夕食は終了。


3人は、がらんとした食堂で、やっと遅い夕食を摂る。


「ロジェ様、今日もありがとうございました」

「本当に助かりましたわ、ロジェ様」


「いえいえ、お安い御用です」


という会話から、オルタンスがしみじみと言う。


「アメリー、今日は昨日と違い、夕方の出足が悪かったけど、急にお客が増えたよ」


「ええ、お母さん、結局、今日も満室になったよね」


という母娘の会話。


どうして、夕方は客の出足が悪かったのか?


それは、かぎ爪団の妨害があったからである。


しかし、オルタンスとアメリーはその事実を知らないようだ。


で、あれば余計な事を言うのは愚の骨頂。


多分だが、懲らしめたから、二度とかぎ爪団は悪事を働かない、

つまり今日のような妨害は二度とない。


アメリーが思い出したように言う。


「そういえば、ロジェ様は今日、冒険者ギルドへ行かれたのですよね? 結局、正式な冒険者には、おなりになったのですか?」


「そうそう、私も気になっていたのですよ」


とオルタンス。


……どう言おうか、ロジェは少し迷った。


だが、結局シンプルに所属登録証を見せる事にした。


「ええ、何とか。これが所属登録証です」


ロジェが出した所属登録証を見て、


「え!? ええええ!?」

「う、う、うそ!?」


アメリーとオルタンスは、大いに驚いたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「い、いきなり、ラ、ランクC!? そ、そんな!?」


絶句するアメリーに続き、オルタンスも、


「ええ、いきなりランクCなんて凄いですね、ロジェ様は」


と感嘆し、


「アメリーの話を聞き、お強いとは思っていましたが、『冒険者』という職業に関しては、全くの初心者ですよね?」


と尋ねて来た。


対してロジェは、


「はい、冒険者に関しては初心者です。故郷に居る時、そこそこ体は鍛えていましたが、飲食店の他、荒事には無縁の仕事ばかりでした」


そう、しれっと答えた。


……これは半分が本当で半分が噓。


創世神の啓示を受けるまで、ロジェ――ラウル・シャリエは、パピヨン王国の片田舎で、飲食店の従業員やもろもろの雑用をし、生計を立てていたから。


両親をはやり病で亡くし、天涯孤独のラウルは生きて行く為に、

必死だったのだ。


しかしある日創世神教会で啓示を受けてからは、日々魔王軍との戦いに明け暮れ、

最後は魔王以下を全て討伐……一騎当千と(うた)われる勇者となった。


ロジェの言葉を聞き、オルタンスは話を続ける。


「実は私の夫……アメリーの父も冒険者だったんです。依頼遂行中に不慮の事故で亡くなりました」


「そうだったんですか……」


……ロジェが冒険者になると聞いて、アメリーが落ち込み、

元気をなくしていた理由が分かった。


「夫は25年以上頑張りましたが、40代でやっとランクCでした。しかし必死に働きお金を稼いでくれ、この白鳥亭を残してくれました。私の自慢の夫、アメリーにとっても誇らしい父親だったと思います」


オルタンスの言葉を聞き、アメリーも同意し、頷く。


「ええ、私……亡くなったお父さんが大好きでした。優しくて強くて……自慢のお父さんだったんです……それがいきなり居なくなるなんて……凄くショックでした……」


「……………………………………………………」


ロジェは無言であった。

上手く慰める言葉が見つからない。


「ですから! ロジェ様! 絶対に命を大事になさってください! 依頼を遂行出来なくても構いません! 逃げてもいいんです! 必ず生きて戻って来てくださいませ!!」


絞り出すように声を震わせるアメリーの言葉を、

ロジェはじっと聞いていたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!

《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

既刊第1巻~5巻大好評発売中!

《紙版、電子版》

何卒宜しくお願い致します。

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、


⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中!》


⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》


⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ

る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》

⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》

も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ