第24話「ははは、うるさいぞ、騒ぐな。迷惑だから、お前も黙っていろ」
屋根の上で呆然とするケット・シーの王ファザーガッドをそのままにし、
ロジェは手を振り、歩き去った。
しかし、少し歩くと、後方から気配を感じる。
おいおい……何だ、あいつ。
後をつけて来るじゃないか。
不可思議な魔力を放つという俺に興味を持ったのかよ。
好奇心旺盛というか、猫の王の癖に暇な奴だ。
俺をつけるよりも他にやる事がたくさんあるだろうに。
ロジェは、後方の気配を知り、苦笑した。
当然、振り向いたりはしない。
先ほど出会ったケット・シーの王ファザーガッドが、ロジェの後をつけて来るのだ。
まあ、良いか。
先ほど約束した通り、あいつが変にかかわって来なければ放っておく。
但し、俺はまだしも、万が一白鳥亭にちょっかいなど出したら許さん。
アメリーさん、オルタンスさんに何かあったら、容赦はしないぞ。
ここで広範囲に張り巡らされた魔力のアンテナ『索敵』に反応があった。
おいおい……何か、悪意を持つ奴らが白鳥亭の近くでたむろしてやがる。
宿へ入るなと、言っているようだ!!
こいつら! 営業妨害になるだろが!
ん? ……この気配は憶えがある。
また、あの3人組愚連隊か!
今回はもう少し人数が居そうだ。
もしかして、仲間を連れて来やがったのか?
ひときわ大きい気配がある。
こいつらのボスか、リーダーか。
確か、かぎ爪団と言ったっけ。
あいつら本当にしつっこいな!
苦笑したロジェは、そんな事を考えながら、白鳥亭への帰路を急ぐ。
後方の気配はといえば、黒猫に擬態したファザーガッドも相変わらず付いて来る。
まあ、猫のあいつが愚連隊に味方するとも思えんが……
動きだけはチェックしておこう。
そうこうしているうちに、白鳥亭に近づく。
……やはり愚連隊――かぎ爪団達が白鳥亭の周囲にたむろしている。
人数は10人ほど。
その中に例の3人組が居るのは勿論、ひときわガタイの良い、
金髪&2m100㎏ほどある大男が居て、そいつがボスであろうと思われた。
……聴覚の良いロジェの耳に、奴らの声が聞こえて来る。
「ここは、くそみたいな宿屋だ!」
「めしは、まずいし、部屋はボロだ!」
「ごら! こんな接客が最低の宿屋に泊まるな!」
「さっさと他の宿屋へ行けよ!」
……とんでもない営業妨害の数々。
こういう嫌がらせと引き換えに『みかじめ料』を払えという事か。
こいつら……許せんなあ!
すぐにやめさせないと!
ロジェは、たったったっと素早く歩いて、嫌がらせをしている男達に近づき、
「ほう、俺が居ない間に、随分面白い事をしているじゃないか?」
淡々とした抑揚のない声で、言葉を投げたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お! 来ましたぜ、ボス!」
「こいつです! くそ生意気なガキなんですわ!」
「魔法か、何かで、小細工して脅かしたんですよ!」
先日と違い、かぎ爪団の3人組は驚きはしなかった。
どうやらロジェが帰って来るのを待ちながら、
宿へ来る客へ嫌がらせをしていたようである。
3人からボスと呼ばれ、のっそりと出て来たのはやはり、
ひときわガタイの良い金髪&2m100㎏ほどある大男だ。
年齢は、20代半ばくらいであろう。
結構、若いとロジェは思った。
ロジェを見て、ボスは言う。
「ほう、コイツか? 俺には単なる普通のクソガキにしか見えないが」
ボスの腕は丸太のように太い。
太ももは女子の腰回りくらいある。
元々たくましい事に加え、相当鍛えているに違いない。
常人ならば、ぶるって、すかさず金品を差し出すであろう。
しかし!
怖ろしい人外の群れ、魔王と魔王軍と戦ったロジェにとって、
こんな奴は、配下の魔物一匹にも及ばない。
ロジェは全く動じず、臆さず落ち着きはらい、
「ほう、俺が普通のクソガキなら、お前は良い年こいていきがる、クソなボス猿にしか見えないが、な」
ボスの口上を真似する余裕まで見せた。
「はあ? ……何だと? クソガキ。てめえ、誰に向かってほざいてやがる。舐めくさるのも大概にせえよ」
「ははは、舐めてくさっているのはどっちかな? 先日そこの3人には礼儀を教えたつもりだが、学習能力が極めて低いらしい」
ロジェはそう言い、最初に会った愚連隊3人組を冷たい眼差しでびしっと見据えた。
「!!!???」
「!!!???」
「!!!???」
すると3人は、びしっと石像のように硬直、動けなくなってしまう。
目を見開き、無言で立ち尽くす3人。
「はあ? てめえら、どうしたよ?」
ボスが尋ねるが、
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
全員無言のまま、返事をしない……
ロジェの所持スキル『魔王の威圧』が軽度レベルで発動したのだ。
「ははは、お前らが騒いで近所迷惑だったから、静かになって良かったな」
にやりと笑ったロジェは更に、ボス以外の配下6人にも冷たい眼差しを向ける。
「!!!???」「!!!???」「!!!???」
「!!!???」「!!!???」「!!!???」
びしっ! びしっ! びしっ! びしっ! びしっ!
「……………………………………………………」「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
手下どもが、ロジェのひとにらみで全員硬直、
無言、無表情となったのを見たボスはさすがに驚き、騒ぐ。
「て、てめ! お、俺の、て、手下に、な、何をしたあ!?」
ロジェは試したかった禁断の秘法がある。
それは威圧の上位技、人の心身を恐怖で支配する『魔王の支配』だ。
そしてボスの叫びを、ロジェは華麗にスルー。
無言、無表情となった配下達へ言い放つ。
「おい、てめえら、ここは目立つ。場所を変えるぞ。コイツを拘束し、俺をかぎ爪団のアジトへ案内しろ」
「「「「「……………………………………………………」」」」」
硬直した愚連隊9人は、何と何と、ロジェの命令に従い、
全員がかりで、ボスをがっつりと押さえつけたのである。
さすがに屈強なボスでも、10人がかりでは敵わないようだ。
「う! うわお! て、てめえら!! な、何をする!! き、気でも狂ったか?」
驚いたボスが抵抗して暴れ、騒ぎ出したので、
「ははは、うるさいぞ、騒ぐな。迷惑だから、お前も黙っていろ」
ロジェがそう言い、ボスを一瞥すると、魔王の威圧が効果を発揮。
ボスは途端に脱力し、おとなしくなる。
「……………………………………………………」
無言、無抵抗となったボスを見て、
大きく頷いたロジェは、かぎ爪団の配下達へ、
「さあ、お前達、アジトへ案内しろ」
と命じた。
ロジェの言葉を聞き、自分達のボスを拘束したかぎ爪団の一行は、
とある方向へと歩き出したのである。
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